かすみを食べて生きる69:家が見えた。家が見える。
脳梗塞 発症2か月と6日目:リハビリ病院2か月目⑯
・食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事はミキサー食と鼻からの経管栄養。首を左に向けると飲める。食事以外の時間はスプーン飲みであれば水分を飲んでもよい。
・状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。きょろきょろすると少しめまいがする。
昨日昼から、これまで経鼻でいただいていた栄養を口から飲むことを試している。
飲むことはできた。
ただ、疲れる。
これまでの記録はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症2か月と5日目:リハビリ病院2か月目⑮
発症2か月と7日目:リハビリ病院2か月目⑰>
朝ごはん#12
食べ物に「疲」と書く日が来るとは思わなかった。
ごはんは楽しく食べたいのに、気づいたら書いていた。
席につくと後ろから話し声が聞こえた。
昨日私に「うるさい!」と怒鳴ったご婦人がお隣の方としゃべっている。
「私、もう人に言うのやめるねん」
声を聞いて振り返ると、その方も一瞬こちらを見たような気がした。
どうも誰かに昨日のことを少しとがめられたらしい。
私の見えないところで誰かが、私の食事環境を守るために動いてくれたことが察せられた。
看護師さんか、セラピストさんか、どなたか存じませんがありがとう。
わざとじゃないということだけでも伝わるとありがたい。
献立はこちら。
さつま芋の胡麻煮
マンゴーペースト
ソフール
おかゆ
アイソカル100 1本
さつま芋…そうか、甘い食材は南瓜だけでなく君もいたね。
お昼か夕方に会いたかった。
全体的に甘いごはん。
ミキサー食でなければ、汁物がついてマンゴーペーストの代わりに果物がつく。
果物、食べてみたい。
上げ膳据え膳というだけでありがたさしかないので、文句は言えない。
でも献立を考える方、ミキサー食は毎日こんな甘々の世界にどっぷり使っていることに、どうか気づいてほしい。
せめて、おかず枠に南瓜やさつま芋を入れるのは勘弁してほしい。切実に。
ごはんのお供フル活用で乗り切る。
アイソカルも含めて所要時間1時間10分。
大丈夫。食べれてる。
ガリガリな贈り物
今日家族からの荷物に、ガリガリ君をそれぞれ食べてあたりを狙うガリガリチャレンジャーズ仲間の土屋さん(仮)からの贈り物が入っていた。
何かしら。袋を開けてみると…。
あっ!!これはっ!!ガリガリ君専用のカキ氷機!!
箱を開けて組み立てると…。
なるほど。中にガリガリ君を入れて上のキャップを回すのね。
了解。今日は久しぶりにガリガリチャレンジだ!
ガリガリチャレンジ#17
水分を飲みこめなかった頃から、ガリガリ君を口に入れて味わいそっと出すという頂き方をして当たりを狙い続けている。
今は一口量を守れば飲みこむことを許されているガリガリ君。
本日は特別編。カキ氷にしていただく。
カキ氷機にこんな感じに差し込んで…。
さすが専用機。
ジャストフィットですっぽり収まる。
この上にヘッドキャップをセットして…。
回して削る!!
あっっっ!!
わりと削り始めに、はずれが見えてしまった。
1本分きれいに削れた。
これならスプーンでも食べやすい。
カキ氷になったガリガリ君はちょっとフワッとしつつも、ガリガリ君らしい氷の粒も残っていて楽しい触感。
とてもいい気分転換になった。
ありがとう土屋さん(仮)。
こうして私は病室でカキ氷を作る患者となった。
お昼ごはん#25
ス○ーピーを描こうとして、似て非なるものになった。
構成要素はだいたい一緒なのに、何が違うのか。
献立はこちら
カレイの生姜煮
豆腐と野菜の卵とじ
小松菜の煮びたし
おかゆ
アイソカル100 1本
おなじみカレイ、しょうがの風味。
香りのものはミキサー食にもアクセントになっていい感じ。
食べやすい献立で、アイソカル1本含め所要時間55分!
アイソカル込みでも1時間をきった!
家が見えた。家が見える。
理学療法士田中さん(仮)のリハビリ。
本日は第4回屋外歩行訓練。
今日は自宅の近くまで歩いてみようの回。
リハビリ病院から家まで、普通に歩けば15分弱位。
途中には子どもの幼稚園バスの停留所があって、いつも子供と歩く道。
今日は田中さん(仮)の付き添いのもと歩く。
バス通りを歩いて交差点を曲がると、家が見えた。
家が見える。67日ぶりに見る家はなつかしい。
今日子どもは夕方まで幼稚園。夫も仕事なので、誰もいない家。
訓練中で今は入ることができない家。
やっとここまで自分で歩いてこれた。
私、自分で家に帰れる。
夕ごはん#5
朝から売店に行って買ってきたガリガリ君をカキ氷にしたり、ウクレレを弾いたり、屋外歩行訓練で家を見て、戻ってきてお風呂も入って、作業療法、言語聴覚のリハビリも受けて、自主練もして、もうくたくた。
でも、食べなきゃ。とにかく、食う。
もはやアートではなく、ただの宣言。
献立はこちら。
おでん(じゃが芋、大根、豆腐、はんてら)
白菜の煮びたし
おかゆ
アイソカル100 1本
手前右のお皿がお馴染み白菜の煮びたし。
奥のおさら、おでん。量がいつものおかず枠よりどっしりしている。
はんてら、聞いたことはあるけど使ったことはない。
卵が入ってふわっとしたかまぼこ。
上の白いのが多分豆腐とはんてらで下の茶色がじゃが芋と大根とみた。
味は煮物の味でいいのだけど、食べても食べても減らない。
大根だけなら食べやすいけど、じゃが芋が入ると炭水化物枠の拡大。
食事だけで1時間5分かかった。
そして疲れ切って飲むアイソカル1本は15分もかかってしまった。
ーー振り返って
記録を見るとこれだけ忙しい一日だったのに、夜の9時から消灯の10時までがっつり自主練をしていて、今見るとストイックすぎて少し怖いです。
でもこの日、経鼻で入れていた栄養をすべて口から飲んで、屋外歩行訓練で家も見て、退院が射程に入ったのを感じました。
食事と栄養を飲むのにのどを酷使して疲れているけど、気持ちは前のめり。
早く家に帰らなきゃ。
家で一人で子どもを見ていて、ちょうど仕事も忙しい時期の夫が死ぬ。
比喩でなく、そろそろ限界が近いと思われます。
なおガリガリ君専用カキ氷機は今でも子どもと二人で、おやつにガリガリ君を半分こする時に使っています。
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