見出し画像

新刊速報【2023年12月版】|柏書房営業部通信

 柏書房営業部です。12月も既に折り返しの頃、今年がどんな年であったかの振り返りや、新年がもうすぐそこまできていることに、色々な感情が去来する時期です。少し気が早いですが、この一年間も小社の出版物にご注目くださりありがとうございました。
 さて、今月の柏書房の新刊は2点。12の地域での調査と20年間の学びがつまった暴力を止めて平和を始めるための実践的ガイド『平和をつくる方法』、さまざまな系図や史料を検証しつつ、神秘のベールに包まれた謎だらけの武家の出自に迫る『戦国大名は経歴詐称する』です。

『平和をつくる方法』

セヴリーヌ・オトセール 著
山田文 訳

【営業担当・里村から一言】
 人類の長きにわたる歴史をふり返ると、平和な時代など存在しなかったのではないかと途方に暮れる。もちろんある国や地域にとって平和な一時代というのは確かにあったのだろうが、世界を見渡せばいつもどこかで誰かが血を流している。古代の紛争の数々から今なお続くウクライナ戦争やイスラエル-パレスティナ戦争まで、絶え間なく勃発する紛争とその膨大な犠牲者を前に、人類はいかにして平和を実現すればよいのかを考え続けてきた。その意味で紛争の歴史は、同時に平和を模索してきた歴史であると言っても過言ではないだろう。
 かくして「平和学」や「安全保障論」なる学問領域が誕生したわけだが、残念ながらどうも有効な手立てとはなっていない。今日もニュース番組では紛争の惨禍が映し出されている。各国首脳や政府高官による対話・握手や莫大な資金・物資の援助、さらには政治制度の改革など、「平和学」や「安全保障論」に依拠した取り組みがなされているにもかかわらず、功を奏していないのが現状だ。なぜだろう?
 12月新刊『平和をつくる方法』は、これまで十分な成果をあげられなかった現実を踏まえ、異なる回答を出す1冊だ。キーとなるのは、「現場の力」である。平和を実現せんとする取り組みを想像してみよう。そんなとき政府のお偉いさんや外国のNPO・NGOのような組織が思い浮かぶのではないだろうか? だが著者・オトセールは、長期的に見てより安定的な平和を実現するには、エリートよりむしろ地べた/草の根の、外国よりは現地の人々のエンパワメントを重視する。著者は中南米や中東、アフリカなど数々の紛争地に足を運び、コロンビア大学で教鞭を執っている。理論と実践を横断してきた著者が、実際のケースを基にしながら「現場の力」による平和構築の実践を描き出す。本書をはじめて読んだとき、ふと声が聞こえた……そんな気がした。
 「紛争は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きているんだ!」

 ※まえがきの前半部分が以下よりお読みいただけます※

『戦国大名は経歴詐称する』

渡邊大門 著

【営業担当・荒木より一言】
 自分がもしも名門の出であったら……そんな考えがよぎったことはありませんか?
 私はごく普通の一般家庭の生まれですが、
 「両親が有名人だったら私も有名人になれたかしら」
 「家が大富豪だったらほしいものは何でも買ってもらえるのに」
 「もっと優秀な大学を出ていれば就活も楽だったろうな」
 などと叶わぬ幻想を抱いてはそれとほど遠い自分にがっかりしたものです……。
 名門の出でありたいと思うのはいつの世の人も変わらないようで、これまでの研究によって、多くの戦国大名が自らの家の「権威づけ」や「辻褄合わせ」のために系譜を操作したり創作したりしていることが分かってきました。
 織田信長や豊臣秀吉、徳川家康といった天下人、また浅井長政や明智光秀、黒田長政のような戦国を彩った名将たちまでもが、経歴を ”盛って” いたのです! いくらエラく見られたいからってそこまでする⁉ とつっこみたくなりますが、紙でしか情報を残せない時代だからこそ成せた業なのでしょう。調べれば何でもあっという間に分かってしまう現代が恨めしい……。
 本書では系図や武家における名前とは何かという基本のおさらいから、系譜を「盛り過ぎ」た例、名家の姓を「乗っ取っ」た例、源氏や平家で「権威付け」した例、「出自不明」な例の四つのグループに分け、謎だらけの武家の出自に迫ります。現代人もつい共感できてしまう戦国大名の人間らしい一面を覗くことで、彼らの存在を身近に感じてみてはいかがでしょう?

 『平和をつくる方法』12月8日(金)配本で発売中『戦国大名は経歴詐称する』12月22日(金)の配本予定です。

『謝罪論』代官山 蔦屋書店・選書フェアの内容公開!

 9月28日から11月30日までの期間に開催していたフェアの内容をまるごと公開してます。気になっていたけれど足を運べなかった、気づいたときには終わっていた等々で見逃していた人はもちろん、最近『謝罪論』を読んだという人もそうでない人も、つまり誰でも気になる一冊が見つかるはずの充実のリストです。ぜひチェックしてみてください!(中の人は『道徳的な運』を入手することにしました)

2024年、最初の新刊は……?

 いつもはここで「来月の新刊はX点を予定しております。それではまた次回もよろしくお願い致します。」となるところですが、すでに公開となっておりますのでタイトルを先にご紹介します。その名は『密航のち洗濯――ときどき作家』です。

 ニッポン複雑紀行さんの下記の記事にてこの本の成り立ちなどについて詳しく書かれております。こちらもぜひご一読ください!

 『密航のち洗濯』2024年1月10日(水)の配本予定です。それではまた来年もよろしくお願い致します(と言い条、来週は新しい連載が公開予定です。お楽しみに)。


この記事が参加している募集

推薦図書