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【当代編】3.弔問客

「葬儀には男手がいる。家令殿は、荘園の人夫をいくらか呼んできたまえ」
「そうしよう。ではコハク、さっそくだが働いてもらう。冠婚葬祭の仕切りは執事の役目だ。君が、はじめからイヴォークの跡を継ぐつもりであったなら、このあたりの段取りは多少なりと掴めておったろうな」
 ローズオンブレイ医師はともかく、辛辣なアルビオン人の例に漏れないアダムシェンナに、しょっぱなから当てこすられて、コハクは憮然となる。寄宿学校では上級生の身の回りを世話する当番生を務め、寮の小間使いの手伝いも長年こなしてきた身としては、いくら年季でまさる家令相手とはいえ、働き慣れないと決め付けられて侮られるのも気に触る。
 リィンセル姫様がいじらしいあまり、うっかり情をかけたおのれの軽率を早くも後悔したコハクだが、それでも復讐を考えてぐっとこらえ、年かさのアダムシェンナに諾々と従う。
 家令というのは、いわゆる『階下の者』たちの総監督者で、執事の上役だ。中世ならともかく、上流階級における家令の仕事を執事に集約して使用人を減らすことがほとんどの昨今、家令を置くこと自体、スノードロップ家が帝国での双頭、両公爵家の片翼であることの証のようなものだった。
 そうでなくても、白雪公の執事ボイドは、黒馬公との切った張ったで近辺がきな臭いのが常だ。家令なくして、スノードロップ家の執事は務まらない。
「旦那様とイヴォークは、このまま夜まであづまやに寝かせておきましょう」
 言って、エヴァグリン夫人はリィンセルを母屋にうながす。
 ふたりの遺骸は、頭のてっぺんからつま先まで雨に濡れそぼっていて、今すぐ室内に運び込むのはいろいろと不都合があった。
 生前のかれらへの愛着や、死者への敬意を考えると、あづまやで置き去りにするのは忍びないが、今は人手も足りなかった。
 ローズオンブレイ医師が死亡診断書を書くために、母屋とは棟違いになった使用人用の別棟にある私室へこもると、エヴァグリン夫人も、弔問客にふるまう軽食の手配に慌ただしくなる。
 リィンセルは、ヴァイオラを侍女にして、喪服に着替えなければならなかった。
「―― 姫様? いらっしゃいますか?」
 子ども部屋の扉が几帳面にノックされたあと、コハクの声がした。
 リィンセルはこころよく新品執事の入室を許したものの、女主人をかしずいたヴァイオラは気を悪くしたようだ。
「いくらお小さいとはいわはっても、レディのお部屋やないですか。ちょっとは考えておくれやす」
 サフィルとはまたイントネーションの違う、きつい訛りのヴァイオラが、仕事を邪魔された苛立ちをスミレ色の瞳にこめて不愛想に言った。
「すぐに終わらせる。姫様、お着替えをすませられましたら、女王陛下にご信書をお願いいたします」
 まだ会ったばかりの女中にもなじられ、コハクは神経質そうな手つきで銀縁眼鏡を押し上げた。年季の差はあろうが、階下の者同士だ。たがいに口をきくのに、どちらかがことさらへりくだったりはしない。
 死因はともかく、白雪公スノードロップ少尉の訃報は、王宮に届けられるべき事項だ。
 今日から一年間あまり、雪花亭は喪に服する。
 リィンセルが新たな女白雪公に叙爵されるにしても、服喪があけてからのことだった。
 待雪草《エルヴェジー》と白の牝牛をあしらった家紋を持つ白雪公であれど、特に忌中は衣装も家内も黒づくめだ。このときばかりは、白の公爵家が黒に染まる。
 執事の役に慣れないコハクを尻目に、ヴァイオラは手際よく、箪笥の中身を端から検めた。
 普段着もよそゆきも、亜麻の衣装を好んで着けるリィンセルの部屋の箪笥で、喪服になりそうな黒い服は一着だけだった。
「姫様は衣装持ちであらしゃるけんど、黒いのはこれしかあらしまへんなあ」
「お父様があつらえてくださったの。いつか必要になるものだからって、わざわざ大きめにお仕立てになったくらいよ」
 なんだか困ったようなリィンセルの口ぶりが、コハクの気にかかった。
「お召し替えの前に、私《わて》がブラシをかけてきますよって、少々お待ちになっておくんなまし」
 長いこと箪笥にしまわれていた、ホコリっぽい喪服を腕にかけたヴァイオラが、豊かな茶褐色の髪《ブルネット》をひとつにまとめるブリムのリボンをゆらして、子ども部屋を出ていった。
「お父様ったら、しょっちゅうわたしにおっしゃっていたのよ。『おまえの父は早くに死ぬだろうけど、怖がらなくていいんだよ』ですって」
 白雪公と黒馬公、スノードロップ家とセングレン家のこみいった因縁を、幼いリィンセルがどこまで理解しているのかコハクには分かりかねるが、少なくとも当代公爵スノードロップ少尉は死期を悟っていたと見え、かねてより娘に言い含めていたのは間違いないだろう。
「お父様は、どうしてあんなふうにお聞かせになったのかしら。わたしはお母様を知らないのに。わたしにはお父様しかいないのに。死ぬと聞くたびに、わたしとてもこわかったわ。どんなにこわくても、お父様とずっといっしょにいられないのはわかっていたから、よけいに恐ろしかった」
 あずまやで、つぶらな黒い瞳が溶けそうなほど泣いていたリィンセルの、一旦は止まった涙がまたこぼれ落ちそうだ。泣きかかると、リィンセルの顔は常より上気して頬のあたりがいっそう赤みを帯びる。
 白と黒の両公爵家の復讐の連鎖は、『白雪公の執事』が『黒馬公』を屠り、次代の『黒馬公』が報復に『白雪公とその執事』を殺すという、奇妙なルールによって続いている。まるで連鎖を途切れさせないためのように、復讐のうちで死を賜るのは継嗣子がいる白雪公とその執事と黒馬公だけだ。唯一の例外を除いては。
 過去の執事ボイドには、養子を取ったやもめもいたくらいだった。
 長年、執事の役を忌諱してきたコハクが、両公爵家の因縁について知っていることといえば、世間に流布する伝承とさして変わらない。それでも、ボイド家の内情ならば、多少なりとおぼえがあった。
「姫様、お尋ねいたします。もしや、」
 言いかけたところで、肌を這うようなざわざわした気配におそわれ、コハクは総毛立った。
 とっさにリィンセルをかばったコハクと同時に、怯えたリィンセルのほうからも駆け寄ってきてコハクの体の影に隠れる。
 十字短剣<ミセリコルデ>の扱いに長けたコハクならともかく、虫も殺さぬようなリィンセルが不穏な気配に敏感なのは、歳より大人びていることといい、少々出来すぎに思えた。
「……白雪姫様におかれましては、ご健勝そうでなにより……」
 どこから聞こえるのかはっきりしない、不気味な声が響く。
 声の出どころは分からないものの、子ども部屋のバルコニーでうごめく夜陰より暗い人影をみとめ、コハクはリィンセルを背に隠し、警戒する。
「……少尉とそちらの執事の弔問に参じた次第……」
 バルコニーに続く掃き出し窓が無音で開き、控えめな隙間から、何者かがぬうっとあらわれる。
「……セングレン家のダネルであります、リィンセル姫」
「貴様……!」
「きゃあああ?!」
 子ども部屋は、邸の二階だ。リィンセルが悲鳴をあげたのも無理なかった。
 初老の黒太守ダネルは、歳のわりにがっしりとした体躯で、喪服そのものの黒衣をまとっている。まさに『黒太守』の呼び名にふさわしい偉丈夫だ。風もないのに外套の裾をひるがえす、ダネルの顔色はくすんで、白いものの混じったグレーの髪と灰青の双眸だけがほんのりと明るさを留めていた。体格に比してやや小づくりな男の顔の陰影は濃く、くっきりとした皺をあちこちに刻んでいる。
「これはこれは……。『執事ボイド』はついに絶えたかと思いきや、早くも後任がたてられたか。さすがは白雪姫様、スノードロップのご尊名は世にあまねく知れ渡っていらっしゃる」
 その執事ボイドの息の根を、みずからの手で止めたことを楽しむようなダネルの揶揄の口ぶりに、コハクのご大層な理性がぶつんとあっけなく切れる。
「父の仇! お覚悟!!」
 コハクは滑るような手つきで、上着の懐中から血塗れた十字短剣を取り出した。
「父親の心臓から、息子の君が引き抜いたのか。白の経帷子が血に染まっただろうに、勇敢だな」
 ほう、と感嘆の息をもらすダネルは、手練れの年長者が若輩の蛮勇を賞賛する時の、男らしい率直な態度そのものに見えた。それが、コハクにほんのわずかな逡巡を与える。ただでさえ、実戦で十字短剣を他人に向けるのは初めてだった。
 父の胸郭から十字短剣を抜き取るときのためらいを、コハクは「二心ありき」とおのれを叱咤した。肉親の遺骸をわが手で損なうことへの畏れと、憎んだ父に死後も安逸を与えぬことの悦びと、その二心こそがコハクを執事たらしめると信じた。
「仇と言った以上、迷いは禁物だ。執事ボイド」
 柄と鍔に五指をかけて利き手に深く握りこんだ十字短剣は、ダネルが外套の裾を鋭く払いのけたことで、コハクの腕ごと後ろに弾かれる。
 見た目にたがわぬダネルの敏捷さに驚きもし、表情に乏しいコハクの顔色から胸の内を読む眼力にも慄いた。
 もっとも、ダネルのほうが、コハクよりよほど場慣れしている。白雪公と黒馬公の間にはいつでも闘争があり、ダネルは貴族の義務から過去に従軍していたし、約二十年前には、当時陸軍士官学校を卒業したばかりのスノードロップ少尉と同様、ダネルにも『悪夢』の南阿戦争への派兵経験があった。まして、口数の少ないぶん、黙って手の出るイヴォークから十字短剣を奪い取っただけのことはあった。
 短剣を奪われまいとして逆手に近い形で握っていたのがあだになり、弾かれた利き腕を後ろに大きく振るかっこうになったコハクは、たたらを踏む下肢から高い上体に重心が乗ってしまい、体幹がぶれる。そこを突かれて、一気に間合いを詰めたダネルを懐にまで踏み込ませると、あとは背中にリィンセルをかばうコハクは数歩下がって仕切り直すことができずに、今度こそぶざまに倒れこんでしまう。
「ああっ?! コハク!」
 倒れつつ、腰をよじったコハクは、かろうじてリィンセルの小さな体を避けた。
「やはり新品ではこの程度か。まだまだ執事ボイドの役には足らぬな」
 言って、ダネルの磨かれた革靴が、十字短剣を踏む。当然、短剣をきつく握るコハクの利き手も押さえつけられて、動きを封じられた。
 高いところから睥睨するダネルと、這うような姿から睨みあげるコハクの、二者が数瞬、目線を交わして対峙する。
「ダネル公! コハクを傷つけないで!」
 リィンセルが、横倒しのコハクの胸にほとんど飛び込むようにして割って入ったことで、二人の男の間の緊張が破られた。
「前に、わたしのお父様がおっしゃってましたわ。スノードロップとセングレンの古い因縁は、いつか、だれかが、断ち切らねばならない、と」
 ですから、と言いかけたリィンセルは、ダネルが押しとどめるような手ぶりを見せたことで、続きをいったん飲み込んだ。
「なんにせよ、わたしはやもめで、後を襲う子がおりませぬ。それはあなたの執事も同じこと」
 言挙げされてやっと気付いた、といったふうに表情を変えたリィンセル同様、コハクのほうも、さっきまであれほど煮えたぎっていた激情から、冷水を浴びたような心地へと落とされる。
「後継をなした黒馬公は、執事ボイドの手にかかって死に至る。これが白と黒の両公爵家を縛る因縁、復讐の原則《ドクトリン》であります。この原則が破られたのは十六年前、わたしの妻のお腹にいた赤ん坊を、妻ごと十字短剣で引き裂き、わが妻子を葬った、イヴォーク・ボイドただひとり」
 だからこそ、コハクという息子のいるイヴォークを返り討ちにしたのだ、とでも言いたげなダネルを、コハクはどこか信じがたく凝視する。
 もちろん、コハクとて、父イヴォークが復讐の原則を踏み越えた十六年前のことは伝聞している。白雪公の御為に父がどこまで卑劣なれるかは、コハクの理解が及ぶところだ。ダネルの妻子を害した父イヴォークの心持ちが、自分と母をないがしろにしてきたありようと通じるのだとしたら。ダネルの言い分は正しい。
 数百年続いた復讐の連鎖における、生死をかけた主たる役を負うてきたのは白雪公とその執事と黒馬公の三名だ。この三名を差し置き、両公爵家の家族に災禍がおよんだのは、イヴォークが手にかけたダネルの妻子、すなわち今は亡きレイントン公爵夫人と胎児をおいてほかは皆無だった。しかし、黒太守ダネルの口から聞かされると、途端に真実の在り処がぼやけたように感じてしまう。やはり、復讐をなす両家のうち、一方の言い分に偏るせいだろう。
 なにがどうあれ、当時のコハクはただのガキに過ぎず、現場には居合わせなかった。リィンセルにいたっては誕生すらしていない。
 十六年前の白雪公スノードロップ少尉はまだ独身で、すでに妻帯しコハクという息子を得ていたイヴォークをかたわらに、若き少尉は両公爵家を縛る復讐の連鎖へと身を投じた。白雪公と執事ボイドと黒馬公の三者いずれも、継嗣子がいない、それも夫人を娶らぬまま復讐に組み込まれた先例はいくつかあるものの、やはり血統断絶のリスクが伴う。
 若き日のスノードロップ少尉が血気盛んだったとして、ダネル公の妻子を葬る非道をおかしてまで復讐を『急いだ』ともとれる原則破りの行動には、当時から謎が多かったのは確かだ。スノードロップ少尉と執事イヴォークとダネル公、当事者のうち二人はすでに喪《うしな》われ、つまびらかに語るのがダネル公に限られる今、真実があったとしても藪の中だ。
「そうでした。ダネル公には、わたしのお父様に復讐するだけの理由がございましたわね……」
 沈んだリィンセルの声音は打ちひしがれて、大人びている以上にほとんど老成していた。こうしていると、たとえ七歳のお子であれ、黒太守にひけをとらない立派な女公そのものだ。
「まわりのかたがたは、わたしを気づかって、お父様とダネル公、そしてイヴォークのあいだに昔あったことを、はっきりとはもうしません。けれど、こういったことは、自然と耳に入ってくるものです。わたしはまだ子どもですから、復讐の因縁についてこみいったことは分かりませんが、家族をうしなう辛さを思うことはできます」
 コハクが執事の役を引き受けたのは、『父の仇を討つ息子』であるためだ。ダネルはコハクよりさらに、『殺された妻子の無念を晴らした、不幸にして一途な夫』だと、世間では評されるだろう。コハクの復讐心が性善と憎悪の二心を塗り固めたものとして、対するダネルの、復讐の原則を固持したことまでふくめたひたむきさときたらどうだ。
 今のところ、リィンセルは『幼くしてお父様を亡くし、公爵家を託されたお気の毒な白雪姫様』だが、ダネルの悲劇的な境遇を引き合いにすると、巷にささやかれる同情は、白と黒の両公爵家どちらに重く傾くかは分からない。そしてコハク自身、生前の父と和解できずじまいだったこと、あえて言うなら執事ボイドの家名と血を継ぐ父子が少しも心が通い合わないままだったというのは、一種の恥であって、『二心ありき』のコハクの恥がいずれボイドの恥となり、ひいては白雪公の瑕疵にまでなりはしないかとおそれていた。
 復讐の因縁はこうして次第に複雑さを増して絡み合い、やがては容易なことでは断ち切れなくなっていくのだと、たかが二世代程度しか覚えのないコハクも実感する。白雪公と黒馬公の復讐の連鎖は、両家が興されたのと同時期に端を発し、今日まで続いてしまった根深さを軽く見ることはできない。
「―― なんですの! あんたさんは?!」
 子ども部屋のドアノブが回る音とほとんど同時に、戸口で鋭い非難の声があがる。喪服にブラシをかけ終えたヴァイオラだった。彼女が間を置かず戻ってくると承知していたはずなのに、不意打ちの登場はコハクをぎょっとさせた。
 女中の小娘ひとりでも、今以上にスノードロップ家の人間に加勢されるとさすがに分が悪いのか、ダネルは早々に身を引きかかる。
「君もイヴォーク・ボイドの息子であるならば。原則を踏破した父親を、さらに超えるぐらいのことはしてみせるがいい」
 十字短剣を踏むダネルの、革靴の横っ腹で利き腕をむこうに蹴りやられたコハクは、その衝撃と痛みで得物を手放してしまい、十字短剣が子ども部屋のすみにまで回転しながら滑っていった。
 反撃の機といとまを潰したダネルは、得体のしれない不気味さをふたたび四囲に張りめぐらせた。影法師が自在に動くように、窓の細すぎる隙間をヌラリ、とすり抜け、あらわれたときと同じバルコニーから退散する。
 深追いすることもできたが、心配げなリィンセル含め女子供を残していくのも気が咎めてコハクがただダネルを見逃すと、ヴァイオラのほうから「執事様が情けないやないですか」との辛辣な文句がとんできた。
「コハクはよくやってくれたわ。そんなふうに言わないで」
 こんな小さな姫様にまで気を使われる自分に口惜しさはあるものの、ヴァイオラの一方的な言い草に苛立ったのもあって、コハクはおとなしく庇われておくことにする。
「……何事でごせぇますか?!」
 騒ぎを聞きつけた双子の弟サフィルと、エヴァグリン夫人も遅れて子ども部屋に姿を見せ、この段でようやく執事ぶったコハクが、侵入者についてかいつまんで説明する。
「黒太守ダネル公が、弔問にいらっしゃったと言うのだ。そこのバルコニーから足音も気配もなしに入ってきた。ありえんことだ」
「聞きしに勝る、得体の知れない御仁でありますなァ」
 暢気なのか胆が太いのか分からない間延びした口調で、吐息まじりにサフィルがもらした。
「旦那様のご意向で、この雪花亭はあまり使用人を増やさないようにしてきたけど、せめて番犬は必要かしらね……」
 眉をさげた夫人がそう愚痴をこぼすと、リィンセルの表情が一瞬、ぱっと明るくなったことで、コハクは直感する。
「姫様、もしかして……動物はお好きですか」
「ええ。パークの人夫小屋で面倒みてる野良の犬や猫が何匹かいるの。ときどき、うちの食事の残りものを持っていくのよ。オクタビオはやめてほしいみたいだけど、わたしになついてきてかわいいんですもの」
 親わしげに家令のファースト・ネームを口にしたリィンセルの頬が、上気してほの赤く染まっている。
 コハクがようやく目にした、白雪姫様の生来からのお姿だった。

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