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【相談】起承転結の作り方~「承・結」はおのずと決まる~【プロット講座】

突然の質問で申し訳ないのですが、わたくし小説の起承転結の「承」部分がとても苦手で毎回書くのに苦労するのですわ〜!!
4万字くらいまでのなら何とかなるのだけれど、それ以上の文字数になってくると何を書けばいいのか分からなくなるのですわ!
自分では大団円に向けて伏線などを散りばめているつもりなのですが、冷静に読み返すと大層つまんない小話になっているような気がするの……
推敲をしていても明らかに起承転結の「承」のクオリティが低い気がして、「う〜ん」と頭を悩ませています……
承部分は物語の中でもとても大事だと思っているので、いい感じに書きたいのですわ〜!
承を書く時のコツとかって何かありますでしょうか!?もしよろしければご教示願いたくってよ……!

オジョ箱からの相談

あら、「毎回」とのことで、そんな高度な課題が見えてくるくらい恒常的に打ち込んでいるアナタにインターネット・ハグをどうぞ!

ご自分の、100回読んだ文だから新鮮さがなくなってしまうのであって、読者から見ると十分魅力的だと思うけど……考えてみますネ!

また、最近オジョフォーラムでも「オチとは」という議論が盛り上がっていて、わたくしなりに考えてたので「結」についても書きますネ。

さまざまな説があるので、あくまで個人の主観、わたくし向けに最適化された手法の話です。過去記事とも重なる内容ですワ。

コレや、短編講座長編講座の内容も入ってます。

■物語は「起」と「転」で決まる

実は物語にとって必要なのは「起」と「転」で、これがカチッと決まれば他はおのずとついてきます。

わたくしなりのざっくり解釈ですが、
「起」はスタート地点や世界観などの設定。これがない物語って多分ないですネ。なにかを書くなら絶対に始まりや舞台はある。

「転」は一番盛り上がるところ。こんな特徴があります。
・一番の大問題やピンチ
・キャラの感情が大きく動くとき
・乗り越えると好転する

「起」でスタート地点を設定。「転」は「起」から考えられる大事件を設定します。これはどっちを先に決めてもOKです。まず「転」があり、それが映える「起」をつくるでもOK。

たとえば、わたくしが好きな方向性の長編プロットを練習問題として出してみます。以下は、即興で作った「起」「転」です。

例:バディ事件捜査もの
「起」……正反対の、うまくいってない刑事AとBがバディを組まされる。二人は喧嘩ばかりで、どうにかバディを解消して、それぞれ尊敬する先輩や片想い相手と組みたいと思う。抗議にうんざりした上司は「とびきりでかいホシを挙げたら解消させてやる」と約束する。
「転」……二人は息の合う優秀なバディになった。しかし、Bが連続殺人事件の容疑者となってしまう。被害者はAの先輩だった。失踪したBが犯人ではないと、Aだけは確信している。AはBを探し、ついにシリアルキラーに拉致されたBの居場所を突き止め乗り込む。真犯人は、Bの片想い相手だった。

さて、練習問題です。あいだに挟まる「承」と最後の「結」を考えてみてください。簡単でOKですヨ!

……………………

……どうでしょう、頭にお話が浮かびましたか?
わたくしの一例はこちらです。

例:バディ事件捜査もの
「承」……仲の悪い二人だったが、いくつかの捜査を経て、お互いの信念に気づき、認め合うようになる。喧嘩しながらも息ぴったりで仕事をする二人はいつしか部内トップの成績になり、連続殺人事件の手がかりも得て、捜査を任される。
「結」……ボロボロのABが、どうにか真犯人を捕まえる。後始末がひと段落付いた後、上司は「おめでとう!バディ解消だ!」と肩を叩く。二人は青ざめ、当初はAを毛嫌いしていたBが抗議のための口を開く。が、上司は「なんちゃってな。まだ追うべきヤマはたくさんあるぞ。喧嘩は一日三度まで」と言い残して去る。AとBは顔を見合わせ、小突きあいながら笑顔で歩き出した。

正解はなく十人十色!
どう書いても自由ですが、このおサンプルを書くときに何を考えていたか、解説しますネ。

■「承」の書き方

実は「承」のプロットは、一番省エネで考えました。
「起」が山のふもとなら、「転」は頂上。そこに至るまでの道を整備すると自然と「承」になります。

・二人の関係は「起」で嫌い同士。「転」では信頼し合っている。
→だったら、「承」で書く必要があるのは「信頼するまでの納得できる過程」。
・仕事パートの「起」は、二人は成績の悪い(OR協調性のない)不良刑事である。「転」では連続殺人に立ち向かうほど優秀な成績になっている。
→だったら、「承」で書く必要があるのは「二人の力が噛み合い犯人をバンバン捕まえる様子」。

おわかりいただけただろうか……。
「承」とは、ほかの要素から求めることができる、方程式なのです!


「転」に至るまでの流れなので、実は何をしてもOK。非常に役割としての働きが強いパートだとわたくしは思います。
しかしながらテレビシリーズや長期連載だとここの部分が一番長いので、手を抜けるというわけではありませんネ。

「骨」であるプロットはすぐに浮かぶけど、一つ一つのエピソードである「肉付け」は一番大変カモ。まあここはトロの部分なので、「そのジャンルらしさ」や「仲良くなる過程」のお約束をおいしくお出しして、ちょいちょい後に向けての伏線を仕込んでいけばOKです!

あざとくてもいいので、「これを読む人はこういう話が好きだろう」を重ねていくのが書きやすいオススメですネ。
無理に奇をてらわず、王道で大丈夫!

「転」のために必要最低限のイベントを起こしつつ、個々のシーンを魅力的に、キャラのキャラらしさや絡みを書いていくと、読んでいて楽しい作品になりますヨ!

また「承」は、ハリウッド式脚本の三幕構成でいうと第二幕前半で、序破急に当てはめると「破の前半」(※諸説あり)。尺の短い作品なら削られがちなパートでもあります。
主観ですが、三幕構成や起承転結は長編にも使え、序破急は短いエピソード向きですネ。大雑把な区分けが違うだけなので、あまりに気にしなくてもOKですが。

起承転結に戻りましょう。
長編の起承転結それぞれの中には、さらに起承転結があり、さらにその中にも小さなシーンごとに起承転結が……という話も有名ですよネ。

先ほどのバディ捜査ものの例だと、「AとBがバディを組まされる」のが大きな「起」だけど、執筆段階では、その中に小さな起承転結を作って詳細なエピソードを書きます。なんとなく、ドラマ1話目を想定しています。

大きな「起」の中の小さな起承転結の例
「起」……警察幹部や政治家が関わる事件(伏線)を追求しようとしたが、バディに裏切られて左遷されたA(※あとで設定開示)。もう誰も信じないと思っていた。そんなとき、オフで銀行強盗に巻き込まれる。
「承」……Aは色々行動しようとするが、解決には至らない。拘束が長時間になり、みんな疲れてピリピリしてくる。Aは子供をなごませようと変顔をするが、強盗に目をつけられ殴られる。一方Bは強盗と話し、話術で色々と情報を引き出していた。A「変な若者がいるな。あっ、殴られた。あの言い方はオレだって怒るわ。人の心がないのかあいつ」
「転」……Aはトイレ休憩をねだって、離れた廊下で強盗を気絶させ、そいつの変装をしようとする。しかし同じ発想の奴がいた。Bだ。「オレがやる」「邪魔するな」と揉み合っていたら、犯人に見つかった上に前後から挟まれた! 銃声が響くが、AとBはそれぞれ一人ずつやっつけていた。そのまま口喧嘩をしながら、他の強盗もすべて倒す。最後、実は人質の中にも犯人の仲間が一人紛れていた。苦し紛れに子供を人質にして逃げようとするが、Bは彼の正体に気づいていた。Bの指示でAがライダーキックをかまし、解決。(※Aはケンカが強く、Bは頭がいい。キャラの魅力を見せること)
「結」……やれやれ、あんな奴とは二度と会いたくない。そう思いながら警察署にいけば、なんとBとバッタリ会う。驚いていると、上司が「お前たちにはバディを組んでもらう!」と言い出した。嘘だろ、〇〇先輩と組めると思ってたのに!抗議の結果、「大きな手柄をあげたら解散」ということになった。一応「よろしく」と手を出すが、はたかれる。やっぱり嫌いだ!あんなやつと、絶対に仲良くできるものか!

トイレ襲撃は発想として凡庸なのでもうちょっとひねりたいですが、サンプルなのでお許しくださいまし

これは、「結」ありきで「起」→「転」→「承」の順で作りました。
「承」は作るのに苦労しましたワ!でも、これを抜いたら展開がせっかちすぎますよネ。

「転」がアクションシーンなので、それにつながる状況を考えました。といっても、強盗という難しい状況なので、以下の意図を込めるので精一杯でしたが。
・まずはそのシーンの状況や、そこから考えられる自然な行動を見せる
・トイレ襲撃以外の方法を試させ、失敗させる
・「転」のカタルシスに向けての助走(脅しや殴られるという負荷)
・最初なのでキャラ紹介をする
・読者にキャラを好きになってもらう

ここらへんはエンタメ長編講座に詳しく書きました。

ちなみに「転」でのコダワリは、強盗をあっさり倒して終わりではなく、「実は仲間が紛れていた」という主人公たちを上回っていたクレバーさを一瞬出し、読者にアワワ!と思わせたところで、「それにもBは気づいていた!」とやることで、より魅力をアピールしているところです。
「勝因が敵の無能さオンリー」「一方的な展開しかない」とドキドキハラハラしないので、「敵が有効打を打つ!」「しかしそれでも主人公勢のほうが強い!」という、見せかけのパワーバランスや勝敗予測がパタパタひっくり返るようにすると、よりエンタメ的になります。
(それがものすごいのがBLEACHなどの少年漫画)(俺TUEEEE系やワンパンマンは別の作劇法ですネ)

あ、今気づいたけど、詳しい例を出すなら「承」の起承転結にした方がよかったわネ!?
え~とそれは、短編か中編か長編か、長期連載かにもよりますネ……。
映画や8~16万字くらいの長編小説だと、(わたくしなら)大きな「承」の中で2,3個小さな事件を描きます。それより短いと1,2個で、長期連載だといくつも。

ABの関係性に着目すると、大きな「承」の中には最低限「AとBがそれぞれを見直す話」と「強い信頼に説得力をもたせる話」が必要そうですネ。事件の内容は何でもいいです。仕事上の事件捜査でもいいし、プライベートのトラブルとかでもOK。


あまり気にしなくてもいいけど、”「承」が苦手”という気持ちを深堀りして、どのレベルでの「承」が苦手なのだろう?と考えてもいいかもしれません。大きな「承」なのか、個々の小さな「承」なのか。

繰り返しになりますが、大事なのは「起」と「転」で、尺がなければ「承」は省略されることもあるくらいなので、あまり気にせず、「必要最低限をこなすぞ~!」くらいの意識でいいと思いますワ!
必要性から逆算してロジカルに骨格を組んだ後、萌え萌えポイントは執筆しながら練り込んでいく……わたくしの書き方はこんな感じです。参考までに!

■「結」の書き方

長編における大きな「結」は、大きな「起」の対比と「転」の危機を乗り越えたご褒美パートです。
(個々のシーンや各エピソードの中の小さな起承転結をつくるときは、それほど気にしなくてOKです)

【起との対比】
「起」では「こんなヤツとバディは嫌だ!別れたいのに別れられない」だったのに、「結」では「別れなきゃいけないのに別れたくない!」に反転しています。

【ご褒美】
ピンチを乗り越えないとBが殺されてしまう。読者(とA)はBを救いたいと思うし、二人に無事にバディを続けてほしいと願う。
その需要(欲望)に適切な供給を与えると、嬉しい楽しいハッピーエンドになる。

大事件を乗り越えるには、回避したいマイナスと、獲得したいプラス(と意図せず得られるプラス)があります。

エンタメ小説なら、「結」はその後を書く読者サービス。

警察バディの例にのっとると、回避したいマイナスはBの死や、真犯人を取り逃がすこと。Aにとっての獲得したいプラスは、真犯人の逮捕とBとまたバディを続けたいということ。意図せず得られるプラスは、Bからの強い信頼や感謝、それからAB二人の成長でしょうか。

よって、ABが元気にバディを組んで、前より仲良くなった姿を見せると、激HAPPYENDになりますネ!

短編講座でも語りましたが、オチとは落差。作中の危機が大きければ、「解決して幸せに暮らしました」でオチた感じになります。

よって、もし「オチが弱い」と感じることがあれば、それはお話の起伏が少ないのかもしれません。「転」があまりピンチでない、小規模なまったり話とかですね。

ハリウッドでの映画化を目指すのでなければ、それはそれで全然よくってよ!
最後にちょっと気の利いた一言とか、キャラがにっこり笑うとかキスするとか、「ああほっこりにっこりしたなあ」で終わって全然いいです!大事なのはターゲットと自分のおゴールと書く目的。

特にご趣味なら、オチは必ずしも必須ではありません。

たとえば恋愛もののモブ視点で、両片想いのABを見てひたすらニヤニヤしたり、「もうつきあっちゃえよ!」と悶えるとか。AとBのファンが集まって、それぞれ情報交換をしてファミレスで延々としゃべり、AとBのSNSを見てにおわせ投稿にキャーキャーいうとか。ファンたちが勝手にABの会話を予想するけど、実際のABは真逆の会話をしていたとか。
これはもう「転」とかオチとかないカモ。……ただ、滅茶苦茶読みたくなりませんか?絶対楽しく読めると思いませんか?

ひねったオチに憧れる気持ちもすごく分かりますが、「読んでいる最中幸せな気分になった」とか、「キャラをもっと好きになった」とか、「笑った」とかで、物語が果たした成果としては十分でしてよ……!

読書体験の印象の大部分を決めるのは、オチの一文よりきっと、作中どれだけ感情を揺さぶられたかORいい気分になったか。
エンタメ作品なら、楽しく読めればOKだと思いますワ!

いち個人のやり方として、何か参考になれば嬉しいです。楽しい創作活動を、応援してますわネ~!

……あっ!ちなみに追記ですが、プロットは必ずしも必須ではありません。
「プロットがあると抜群に書きやすいタイプの話」もあれば「プロットがなくてもバンバン書けるタイプの話」もあるし、あるいは人によっては「ないと書けない」「ない方が捗る」など様々ですネ❣
大事なのは制作過程ではなく、出来上がった作品についてグッドフィーリングになれるかだと思いますワ❣

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