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「子どもの貧困」への問題意識


文責:ゆきだるマン


こんにちは。オンライン学習広場「かしの木」です。
かしの木では、8月から、2週間に一度、金曜日にnoteの記事を配信させていただきます。①教育に関する書籍・映像作品等のコンテンツレビュー、②かしの木OB・OGの方のインタビュー、③かしの木を卒業されたお子さんのインタビュー記事、の順に配信してまいります。

①のコンテンツレビュー2回目に当たる今回は、懲りることなく同じニックネームを使用し続ける、かしの木運営メンバー「ゆきだるマン」による教育に関するコンテンツレビュー記事を配信致します。また、コンテンツレビュー1回目の記事も以下に添付します。是非ご覧ください!
コンテンツレビュー1回目「大学生が体験したい『常識』を『疑い』『考える』ということ」
https://note.com/kashinokionline/n/nba3faa72b264


Q.なぜ、この本を取り上げたのか?

「子どもの貧困」という問題に対して、自分なりの問題意識や見る視点を持てるようになると思われるため、私は本書を取り上げました。

「子どもの貧困」という単語は、以前に比べ社会でも一定程度知られるようになった単語だと思われます。しかし、その単語が意味する問題の実情は客観的に認識されているでしょうか。そうした実情に対する自分なりの視点を獲得できます。

レビュー2回目の今回は、阿部彩(2008)『子どもの貧困―日本の不公平を考える』岩波書店を取り上げます。本書もコンテンツレビュー1回目の書籍(苅谷剛彦(2005)『学校って何だろう―教育の社会学入門』筑摩書房)と同様、近年の書籍とは言えませんが、総論として、統計などの客観性の高いデータが充実しており、その内容とそこから導かれる筆者の主張には強い説得力を感じます。本書は、専門的な用語や統計を多く含みつつも、各章や各節のタイトルは私のような初学者でも比較的イメージしやすいものとなっており、その点は新書らしく、本書を読み進める上でのハードルが下がっていると思われます。専門性と新書らしい読みやすさを備えた本書を、本レビューの中でも是非取り上げたいと考えました。

Q.本書のおおまかな構成は?

章立てとしては、「第1章 貧困家庭に育つということ」、「第2章 子どもの貧困を測る」、「第3章 だれのための政策か―政府の対策を検証する」、「第4章 追いつめられる母子世帯の子ども」、「第5章 学歴社会と子どもの貧困」、「第6章 子どもにとっての『必需品』を考える」、「第7章 『子ども対策』に向けて」という構成になっています。前半は主として「貧困」という概念を慎重に定義し、子どもの貧困の現状を記述した上で、後半は「子どもの貧困」という問題への解決策を多角的に提示しています。
このように、「子どもの貧困」という大きいと思われる問題を慎重に定義し、問題へのアプローチを明確に描く本書の姿勢は、本書の内容への読み手の理解を深めています。

Q.具体的に本書を一層魅力的にしていると感じた点はありますか?

本書を一層魅力的にしていると感じたことは、実在の人々の声を随所に掲載している点です。専門用語や統計といった客観性の高い資料を掲載していることが本書の特徴であると紹介しましたが、実のところ、筆者が研究調査の対象とした人々の回答内容を掲載している点が本書を一層意義深くしています。社会調査を含む研究において統計のような量的資料を多用する場合、調査対象者の実像は見落とされがちであるように思われます。それに反し、本書は調査対象者の人々の実際の回答内容を取り上げることで、筆者の主張を補強しています。この点は、本書を一層魅力的、説得的にしています。

Q.本書を読む上での留意点等はありますか?

前述の通り、本書は客観性が高いとされるデータを多用しています。しかし、当然ながらそうしたデータの解釈はデータの読み手の主観に依存しますし、時には安直な誤解を抱いてしまうことがあります。本書はそうした解釈の主観性や誤解にも注意を払っていますが、読み手としてもその点は注意し、可能であれば参考文献のデータや見解にも目を配りつつ、本書の内容を相対化して読み進めたいものです。

Q.本書で衝撃を受けたことは?

「基礎学力を買う時代」(本書164頁)という表現には衝撃を受けました。特に貧困世帯の子どもたちにとって義務教育修了レベルの基礎学力を身につけることが困難であることが多いということが、自治体のケースワーカーの方のご発言や、経済協力開発機構(OECD)の学力到達度調査(PISA)の結果から示唆されています。そのことを、当該自治体のケースワーカーの方が「基礎学力を買う時代」と表現しています。授業料無償の義務教育を受けるだけでは義務教育修了レベルの基礎学力を獲得することが困難であり得ることに衝撃を受けました。もちろん、そのことにより教育現場や教育政策に携わる方々の努力が直ちに批判されるべきではありません。むしろ、そうした問題が生じる根本的要因に光を当てる必要があると私たち読者は気づかされます。


最後に一言!

本書によって芽生えた自分の中の問題意識を大切にしてください!

冒頭でも記述しました通り、本書のデータは現在より10年以上前のものであり、現状は本書のとは異なっていることは言うまでもありません。しかし、「子どもの貧困」に対する本書の根本的な問題意識や具体的分析手法、問題解決のための提言は、現在にも通ずると思われます。特に、問題意識という点に関して、本書を読むとご自身の中で「これが子どもの貧困で問題である!」という気づきが生じることが少なくないと思われます。実際、私も、特に貧困世帯の子どもたちにとって義務教育修了レベルの基礎学力を身につけることが困難であることが多いという事実に強い問題意識を持ちました。
学術的な問題意識を大切にすることも、私自身、学習支援団体において実際の支援に携わる身として求められると考えつつ、今回は筆を置きたいと思います。(2047字)

文献
阿部彩(2008)『子どもの貧困―日本の不公平を考える』岩波書店


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