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あさにっき79(夢小説)


前にも見たことがある、神戸の上の方の山にのぼって、歩いて下山してくる夢。
風の強い日だった。
高所なのに、桜がたくさん咲いていた?少しスキップのように歩くだけで、その強い風に飛ばされそうになる。
いつも同じところで足を滑らせて、うわ死ぬ…と思う。ロープに捕まって神戸の港町までを眺めながら、上へ…


目の前には渓流が見えた。
見るからに「清」といった感じで、山の上なのに、その場所だけは風も吹いてなく、穏やかだった。
死の直前に見る、桃源郷のようなものなのかもしれない。
心が惹かれたはずなのに、私は近づくことができなかった。



だいぶ街まで歩いた頃、朝5時くらい住宅街の本屋にたくさん人が集まっていた。疲れはない。店は暗いが、大きめの絵本、おそらく古本が外に剥き出しになっている。こんな時間にこんな天気の日に営業するわけがない。
遠藤憲一のような風貌でエプロンをかけて歩いてきた。
わぁ!とみんなが盛り上がる。
私の頭の中は、電車の構内のことでいっぱいだった。あの場所へ、戻らなければならないからだ。


「今日はお休みかしらね。」
その店を少し過ぎた下り坂のところで、塚地武雅のような奥さんがつぶやいた。
「どうしたんですか?」私は尋ねた。
「お店、今日は開かないのよね…きっと。」
「さっき、店主のような方が入っていきましたよ。」
「え!何ですって!」
「何のお店なんですか?」
「パン屋よ」
「パン屋?!」
私はそれを聞いて驚いた。
あまりにもパン屋の要素のない店構えだったので、驚きを隠せない。匂いに敏感な私なのに、匂いすらしなかったのだ。



しかし、私はこのお店を何かで見たことがあるらしかった。本だろうか、テレビだろうか、それとも私の中の“将来本の読めるパン屋を開きたい"という夢に現れた理想の映像なのだろうか。
ずっと前に見た時に、買いたい本があったことも思いだした。
とにかく私は、はっきりとその店を見ることができ、パン好きなわたしはその奥さんを連れて、スキップしてそのパン屋に戻った。
わたしはパンだけには、目がないのである。さっきまでの風は、嘘のように息を止めていた。



「私昨日県外から来て、あの山を…」
私は一人でに勝手に話を始めていた。
たまたま山を降りて、心が少しナーバスにもなっていたところに、思いがけない偶然すぎる出会い。
あまりにも偶然すぎると、必然に思えてくるものだ。
まだ店は暗く、息を潜めていた。
嬉しくなって、ワクワクしている胸の高鳴りを、私は抑えることができなかった。


そうして、目が覚めた。


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