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スタートアップファイナンス

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スタートアップのファイナンスやIPOに関するnoteをまとめています。
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2023年6月の記事一覧

クラダシ創業から丸9年。東京証券取引所グロース市場への上場に込める想い

株式会社クラダシ 代表取締役社長の関藤(せきとう)竜也です。 クラダシは、2023年6月30日に東京証券取引所グロース市場に上場しました! 2014年7月に創業し上場まで丸9年。2015年2月にサービスローンチして以来、今までピボットせず走り抜けることができたのも、クラダシに関わってくれた大勢の方に支えられたことに尽きます。本日、上場を迎えることができましたのも、皆さまのお陰であります。この場を借りて心より御礼申し上げます。 この度、当社ホームページに「成長可能性に関する説

上場SaaSのマルチプル相関分析 ---二分された市場評価と考えるべきIPO戦略について

1. はじめに2021年秋頃から下落傾向にあった上場SaaS企業の平均マルチプル(EV/revenue(NTM))ですが、以下のグラフの通り、昨年春頃に5x程度で落ち着き、以降概ね同水準で推移しております。これは日本でも米国でも同じ状況です。 しかしこの数字をもって、「SaaS銘柄のマルチプルは5x」と一様に判断するのはミスリーディングであり、その裏にあるマルチプルに影響を与えている指標を理解することが重要です。本記事では、各指標とマルチプル(EV/revenue(NTM)

ストックオプション「業績条件」について、2023年 IPO企業とGENDAの発行条件を解説

「目論見書分析note」とは 目論見書分析noteは、起業家、スタートアップで働く方、スタートアップ企業の成長背景に興味がある方を主な読者として、noteを書いています。 今回は、スタートアップ企業がストックオプション(SO)を設計するときに検討する「業績条件」(業績ハードルなどと言うこともあります)について解説します。 上記のとおり、業績条件とは、SOを行使するために必要な売上や利益の目標であり、当該目標を達成できなければ、SOを行使することができません。 今回、20

IPOを通じて実感したスタートアップCFOの存在意義は「Equityの追求」

こんにちは、CFOのnickです。 フーディソンは2022年12月に東京証券取引所グロース市場に上場しました。 私は2016年にフーディソン入社し、その間にファイナンス面ではシリーズBの資金調達、銀行借り入れ、IPO準備を進めました。年間に上場する企業は90社程度あるので、それぞれストーリーが違うと思いますが、個人的に考えてきたことをまとめさせていただきました。 スタートアップCFOの管掌範囲 スタートアップとは便宜的に、VCファイナンスを調達した未上場企業とします。 C

本日アイデミーは東証グロース市場に上場しました【感謝と抱負】

2023年6月22日、本日、株式会社アイデミーは証券コード5577を正式に拝命し、東京証券取引所グロース市場に上場しました。東京大学3年生の頃に会社を立ち上げた2014年6月10日から9年余り経ち、10期目という節目を迎えました。また、個人的にも30歳になったタイミングで上場という新たなステージで挑戦することができました。こうした挑戦の機会をいただき、本当に感謝しています。 スタートアップ界隈では、上場を「EXIT」と呼びますが、アイデミーにとっては「入口」です。僕が19歳

サイバーエージェント辞めて起業したら、どんどんお金が減っていく地獄の3年間が待っていた

いま僕は「ファンズ」というフィンテックの会社をやっていまして、これからもっともっと伸ばしていきたいと思っています。 そこで採用に力を入れているのですが、面接の場面などでよく「なんでこの会社作ったんですか?」とか「どうやってこのサービスができたんですか?」と聞かれます。 まだ僕らは志半ばだし、成功もしていません。過去を振り返るようなフェーズではないのですが、採用担当から「これまでのストーリーをきちんとまとめてください」と詰められまして(笑)、ちょっと気が引けるのですがnot

スペースマーケットもIVS参加で資金調達に成功!「スタートアップ、やらなくてどうする?」

会議室はもちろん、ジムやパーティルーム、迎賓館や遊園地まで、ありとあらゆる空間の貸し借りができるプラットフォーム「スペースマーケット」。登録されているスペースの件数は2万件を越え、巨大な産業を生みだした企業として注目を集め続けています。そんなスペースマーケットもはじめは小さなスタートアップでした。IVSへの参加で飛躍的な成長を遂げたスペースマーケット代表取締役社長の重松大輔さんにお話しをうかがいました。 はじめてのIVS LAUNCHPAD登壇で準優勝。資金調達だけでなく、

上場準備における内部管理体制の整備とプラットフォームの健全性審査についてー各論ー

0 はじめに法律事務所で弁護士をしており、note社には1人目の法務として、業務委託で関わり始めましたが、その後、上場準備にも関わるようになりました。 現在は、法務コンプライアンス室長、CEO室長、一般社団法人クリエイターエコノミー協会の事務局長などをしています。 全体感については、以前書きましたが、今回は特に時間をかけた、内部管理体制の整備とプラットフォームの健全性に関する各論について触れていきたいと思います。 1 内部管理体制の整備上場にあたっては、健全かつ効率的に事

【2023年春】スタートアップ資金調達環境お天気図

お疲れさまです! 千葉道場ファンドの石井(Twitter: @takaki_ishii) です! 元起業家で現在千葉道場ファンドというVCで投資家をしております。主にシード・アーリー/プレAまたはレイターステージを主な対象として投資をしております! 最近はAppleのVision Proにワクワクしっぱなしです。確実に買います。もうVisionPro買うために年内US行くまであります。 さて、半年前に公開した【スタートアップ資金調達環境のお天気図】が思ったより多くの方にご

【資金調達】初めてのエクイティファイナンスのためにしたこと

少し前に、当社初のエクイティファイナンスを実施しました。 お時間をいただいた投資家さん、そして投資家さんをご紹介いただいた方に御礼を申し上げます。 リリースを配信したPR TIMESでも旬速トレンド3位に掲載され、多くの方に認知いただくこともできました! 私自身、CVCとしての出資経験はあるのですが、出資いただく側としては初体験で体当たりなことも多く、「あぁしておけばなぁ」ということもありました。この経験が少しでも皆様の役に立てばと思い、 ・どういうスケジュール感で、

ストックオプションへの影響の考察~国税庁と経済産業省の発表を受けて~

⑴ はじめに5月29日に「スタートアップの経営者や支援者のためのストックオプション税制説明会」が開催され、主に信託型SOの税務上の取り扱いとSO価格算定に関しての公式な発表がされています。 今回の発表内容は、ポジティブな面とネガティブな面の両方の側面があります。信託型SOの面だけを取り上げると、紙面にあるようなセンセーショナルな内容になってしまいますが、SO価格算定という面においては、長期的にスタートアップ業界にとってはポジティブな内容であったかと思います。 既に多くの方

note IPO連載第2回 上場に向けた経理体制の整備 noteの実例は?

お久しぶりのnoteになります。noteで管理ユニットマネージャーをしている平山と申します。 弊社のCFOである鹿島さんがこの度IPOプロジェクトの連載を開始したことに伴いまして、私もIPOプロジェクトの一員として第2回目を担当させていただきます。 鹿島さんの連載開始の記事にもあった通り、前職では公認会計士として監査法人で勤務しており、初めての転職、初めての事業会社でnoteにジョインしました。前職は堅い職業だったので短髪スーツで約10年やってきましたが、note社入社後

世界標準のストック・オプション実務

皆さんご存じのとおり、5月29日に国税庁から信託型ストック・オプションが給与所得に該当するとの解釈がでました。これと同時に国税庁は、税制適格ストック・オプションの権利行使価額を決めるために必要な付与契約時の株価算定ルールについて、新たな通達を設けてパブリックコメントにかけました。この通達は、ストック・オプションが税制適格となるために必要な「権利行使価格がストック・オプション付与時の普通株式の株価以上であること」という要件について、権利行使価格を配当還元方式の算定や、純資産価額

数字でドライブする経営(前編)

皆様、こんにちは! テックタッチ株式会社のCFOの中出 昌哉(なかで・まさや)です。(@masaya_nakade) 最近、色々な経営者の方と数字を経営にどう活かしているかという意見交換をしたり、テックタッチ社内での経営の舵取りの際も、数字を使った経営判断をすることが多くなってきているので、「数字でドライブする経営」についてのナレッジシェアを目的に、今回noteを書くことにしました。 日本だと、資金調達の人となりがちなCFOですが、海外では、経営を数値で可視化・経営戦略を