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風風子さん五行歌集『宙の月』

 こんにちは。南野薔子です。
 風風子さんの五行歌集『道の草』について以前とりあげさせていただきましたが、それに続く二冊目の私家版五行歌集『宙の月』をいただきました。今日はその感想を。
 前作同様、ごく少部数作成とのことですが、風風子さんのツイッターを辿っていただくと五行歌作品を読むことができます。
 
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 『道の草』とおなじように、今回もまた、生物も非生物もふくめた、命の流れ、めぐり、つながりというものを感じる。また、個々の五行歌はそれぞれ別々のタイミングでツイッタに発表されているが、こうやって一冊にまとめてみると、やはりまるでひとつのテーマの流れに沿った連作のような感がある。
 それに加えて、今回、この歌集全体に満ちる静けさを強く感じた。読み進めるごとに静けさがこちらの心のうちにしみ通り、読み終えた後にはその静けさに満たされて、この静けさの中でじっとしていたい、というような気持ちになった。
 それは単に、静けさがただあるというのではなく、悲しみや悩みや苦しみをくぐったから、あるいはむしろくぐっている最中だからこそ見出されるような静けさなのだと感じる。この五行歌集に出てくる空や風や雲などは、その静けさの象徴であるかのように感じられた。そしてタイトルにある「宙の月」もまた。
 数首引用する。
 
 深い深い青空の色の下で
 沈黙するラジオの奥で
 流れる歌と歌歌う
 小鳥の羽を
 描く詩人のペン先の光
 
 その人の思い通りに
 ならないからって、
 私が気に病むことはない。
 遠雷
 今日も私を生きる
 
 宙の月の鏡に映る
 涙も
 ほほ笑みも
 何もかも
 どの道 宙に解ける
 
 この悲しみは
 こころの
 青い部分が
 めちゃくちゃに
 すきとおるの
 
 こころの
 マイナスの部分が
 プラスの部分を
 支えている場合もあると
 月を見ていて思う
 
 宙へ手紙を
 したためる
 魂という命のペン
 下手な字でも
 読んでくれる宙
 
 そして前作で私が着目していた小鬼も時々ひょっこりあらわれるのが嬉しい。
 
 笑っている
 銀河の岸で
 小鬼の私
 鬼のみんなと
 星々の光と
 
 この光景を想像するとなんだかじんわりと静かな楽しさがわいてくる。
 
 この五行歌集を通じて、静かで深いこころの時間を過ごさせていただいたことに感謝したい。

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