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#自由詩

【詩】steam engine

【詩】steam engine

パタン コトン カラン ピタン

折り畳まれた肉塊から

明るい汽笛が鳴り響く

立ち昇る煙

熱をおびた蒸気機関の

たぎる血潮に目がくらむ

虐げられた魂の

テラテラ サワサワ

やましい視線に怯むことなく

生きゆくことを

満喫する彼の魂に

祝福あれ

【詩】わたしのカラダ

【詩】わたしのカラダ

本日

わたしのカラダは

キャベツとにんじんで

できています

節約節制

息子の成長が第一ですから

昔はいわしとプチトマト

さくらんぼだったときもあります

その前は甘いミルク

マリームだったような気もします

おさとうとマリーム、お湯でつくった

飲み物が大好きでしたから

これからの私のカラダは

再びいわしとトマトで

つくられるようになると思います

年を取るとカルシウムが

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【詩】空色ネイル

【詩】空色ネイル

満たされたくて

注ぎ込んだ

空色のネイルは

荒野には溶け入らず

美しい湖を作っただけだった

欲張りな太陽を

足し引きして

具合を探ってみるけれど

黄ばんだ日差しが

砂漠の陰影を濃くしただけだった

試しに混ぜてみた空と太陽

出来上がりはゴッホのマーブル

そりゃそうだろうと

鼻で笑った

あなたが憎らしく

ムキになって混ぜ続け

出来上がったグリーン

得意げに頬に塗りつけ

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【詩】ミチオシエ

【詩】ミチオシエ

荒野を駆けてゆくというような

格好の良いことではなく

自惚れた大地を

目に沁みる聖夜を

可能な限り駆けていきます

犬と戦う戦士としての乙女

不可知の存在と会話する僧侶

僧侶の斜めにずれたキャップと

片足のみ泥に埋まった不恰好なお椅子はご愛嬌

犬に結えられた首紐

乙女の顔に寄る年輪も

しゃぶりつくして

噛み尽くして

飲み干して

永遠に

私は駆けていきます

青緑色の冷た

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【詩】影

自分が影の住人だったと知った時

嬉しくて泣いたのは本当で

やりきれないと吐き散らした

と言ったら嘘になります

朝日に照らされたカーブミラーや

頭の大きな標識の影が

現実以上に美しく見えるようになったのは

いつからでしょうか

道ゆく人々が影に見えて

よけるべきものとそうでないものの

区別がつかなくなってきたのは

いつからだったのでしょうか

初めの子が流れてから

最初の子が産

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【詩】ほつれ髪

【詩】ほつれ髪

いざり

いざなう

空気のない場所

正気の沙汰じゃないと

にげこむ

草いきれ

ロザリオにぎりしめ

南無阿弥陀仏

唱える

あの子のほつれ髪

そっと撫でつけ

ほおよせる

ホメオティック遺伝子が関与した

あの子の体は

切っても切っても

同じものしか出てこない

金太郎飴みたいな

あの子を

一切れ

口に入れ味わう

コロコロは

笑い声か

咀嚼音だったのか

今はもう曖

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【詩】もうしわけていどに夏

【詩】もうしわけていどに夏

もうしわけていどに夏

はかなく

このうえなく

カナブンの羽音

せわしなく

水辺で子らが

あどけなく

織姫と彦星の出会い

かけがいなく

かき氷のおもてなし

おかまいなく

冷えたみかんは

もうしぶんなく

浴衣のあの人

しのびなく

七日目のせみ

陰日向になく

【詩】SOS

【詩】SOS

蝿山の中を泳ぐ感覚なんです

揺り戻された記憶が反転し

元型もなく組み替えられてゆきます

瞬きの間だけの束の間のいのちで

対処しきれるものではありません

インザフライ

レッツゴーダイブ

裏切られたということは

信じてたという言葉の裏返しでしょうか

生涯にほんの数回だけ

的を得られることがあるというのは

本当なんでしょうか

そのうちのひとつが今

向こう側で

モールス信号を上

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【詩】花火

【詩】花火

光と音

思い出の連射で何も聞こえず

美しい閃きに網膜が痺れ

“終わって“と“終わらないで”がループする

夜空を食い尽くそうとする白煙を

かき分け溢れでる光のカケラに

心打たれて身動きできない

火傷してでも触りたくなる火の粉は

遠くからだからこそ美しい

【詩】post human

【詩】post human

涙が溢れそうな空

憂鬱な一日の始まりが

瞬く間に物語性を帯びてくる

日常を非日常に変える

一滴の容易なスパイス

ドラマティックな展開が

言葉の糸に操られ

まやかしのダンスを踊る

混沌から生まれたマリオネットは

いつの間にか生みの親を離れ

自由に羽ばたき去って行った

そのときから既に決まっていたの

AIが人の心を持つことは

【詩】モルフォ蝶

【詩】モルフォ蝶

自分だと思っていたものが

自分ではなくなっていた

大きな耳は真っ青なモルフォ蝶の羽

小さいけれど身の詰まったパイのような身体を

重たそうに運んでいく

彼の吐く漆黒の吐息に指が震え目が霞む

目の前に立つ盲しいた枯れ木は誰そ彼

身体を切り裂く大きながらんどうの

一面に小蝿がはびこり

奥底で気の早いコウモリが

鎮魂歌を唄っている

空白を埋める偽物のパテはもういらない

祈りの姿勢に

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【詩】いつも

【詩】いつも

いつも

少しだけ

血が滲むように

恋してる

永遠なんてものは

端からなく

虚栄心は平和の色した緑

野生のプライドを捨ててまで

手にした物に価値はあるのか

恋したあの人に問いかける

あの人は困ったように目を逸らす

そして

私は

いつも

同じように

間違える

【詩】白日

水曜日は駆け抜ける

何もないまま

私を追い越していく

一人きりで食べるカップラーメンは

味気ないけれど

今はそれが嬉しい

少しだけ灯りを消してくれるから

無神論者のとりとめない祈りを

受け入れてくれるのは何者か

わからないまま迎えの時間

水に浸った海綿体のような身体を引きずり

火打ち石はあるのに火消し石はなく

些細なすれ違いが決裂や悲劇を生み

正解がないから生活がある

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【詩】郷愁

【詩】郷愁

自由意志を持つフィラメントに唆され

彼と音信不通になったのはいつの日のことだろうか

喪失感よりも安心感

劣等感は消え虚栄心が幾ばくか増す

より良き変化とは言えず

煮凝りを食べた時のような

不快感が日に日に募る

あの日の約束なんてものはないけれど

あの日の決意は何かしらあったのかもしれない

もう同じかたちでは取り戻せない

蜃気楼を彷徨いフリックする

劣等感を逆手に取れるような

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