【詩】モルフォ蝶
自分だと思っていたものが
自分ではなくなっていた
大きな耳は真っ青なモルフォ蝶の羽
小さいけれど身の詰まったパイのような身体を
重たそうに運んでいく
彼の吐く漆黒の吐息に指が震え目が霞む
目の前に立つ盲しいた枯れ木は誰そ彼
身体を切り裂く大きながらんどうの
一面に小蝿がはびこり
奥底で気の早いコウモリが
鎮魂歌を唄っている
空白を埋める偽物のパテはもういらない
祈りの姿勢に枝葉がたわみ
枯れ木は生命に別れを告げる
薄れゆく意識の中
彼は思う
あの日見たモルフォ蝶ほど
美しいものは見たことがなかったと
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