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2022年5月の記事一覧

【詩】混沌

【詩】混沌

プレミアムカオス

最上級の混沌をあなたに

輪廻が飛び回り

耳元に饒舌な

不協和音を残し去る

さざなみは凪

闇夜の砂浜に打ち上げられる

二つの太陽

白く まあるく たおやかに

崇め立てられた針山の上に

危うげに鎮座する

今宵もミトンの出番はなかった

使い古された厚い手のひらがあったから

ざらつく大きな手のひらにつつまれ

やすらかに眠りなさい good die

さあ皆さん

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【詩】花袋

【詩】花袋

匂いの在処を知りたくて

花袋を引き裂いた

惨めったらしい茶色の破片が

一斉に飛び上がり

射るように左目を刺す

片目を押さえて見る景色は

ほろ苦いセピア色

世紀末に舞い降りる地獄の使者

吐き気がする程濃く華やかなバラの香りが

鬱陶しく目が滲みて

そっと右目も閉じてみた

しんと静まる雪景色

瞼越しに見える世界が

一番心地良かった

【詩】日常

【詩】日常

君の名の発作で眠れない夜

陸で溺れる惨めなshow time

こと足りた生活は

もの足りぬ情熱の足かせ

鬱憤の溜まった

カミカゼが火を噴いた

明日をつなぐ遺書

守るべきものはもういない

砂嵐で涙目をこすりながら

開けごま

地下へと伸びる地獄の階段

掃き溜めから荒ぶ

さみだれる枯れ葉だけが

私を温めてくれる毛布なの

【詩】please

【詩】please

死者に願いを

漆黒に魂を

青春に光を

夢半ばに現を

不純に性交を

目下に欲望を

未知なるものには愛を

下さい

【詩】青の残像

【詩】青の残像

闇へ溶けるような甘い戦法に敗戦した

飲み忘れた漢方を思い出したときみたいに

喉がひりつき空気が苦い

諦めと快感でふやけた身体が波打って

まるで水中花

どこにもいけない魂が悲鳴をあげる

軒下に咲く勿忘草のような

冷たいブルーの涙をこぼし

ネオンテトラは泳ぎ去った

それ以来私の身体からは

何も生まれない

青い残像だけが

今も網膜に張り付いている

【詩】がらんどう

【詩】がらんどう

がらんどうに意思はなく

がらんどうはただ見ている

遠いあの日の生傷や

近いあの日の言葉の暴力

痛みは深みに吸い込まれ

暗いコールタールの池となる

ごく稀に

無差別殺人犯のお日様が

ナイフ片手に飛び込んでくる日にだけ

暗い内臓が煌めいて

頬がひととき虹色に染まる

この刹那のためだけに

人は毎日命を繋ぐ

【詩】空っぽ

【詩】空っぽ

空箱の角が痛む

現実に触れ合っている端のところから

酸化してふやけていく

思い出は変形して見る影もなく

カスタマイズと言えば

聞こえが良いけれど

魔改造と言ったら

気をてらっていて

リユースのように

優しくはない

自由自在に変幻する

砂粒で作られた祭壇には

空っぽな私が似つかわしい

【詩】転生

【詩】転生

ことばの海に揺蕩って

夜空を貫く旅に出ていた

地団駄踏んだ子供の影や

真っ青なカップケーキを頬張る彼

幻の星雲群を光より速く駆け抜けていく

一瞬瞬いたあの人の顔は

無理やり押し込まれた布団のように

ブラックホールに消えていく

月夜を忍足で駆けていくお月見泥棒が

残した朱色の血糊の傷跡は

その嘘が悲しくて

腹の底から息苦しい

パンクしたタイヤみたいに

少しずつ崩れゆく私の体

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【詩】春の宴

【詩】春の宴

等間隔でポーズを決めるマツカサどもが

モデルポーズで流し目寄越す

ポピーはおもたげな瞼に長いまつ毛が色っぽく

細首を傾け物欲しげなポーズ

陰日向に咲くタンポポは

健気な笑顔とふしくれだった手の甲で

悲哀滲むバックボーンを演出

男心を容易に欺く

これからが季節のツツジにはすでに先客

お蜜目当ての

フタツボシテントウが2匹

祝杯をあげている

全部まとめて頂いてくよ

石塀の影か

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