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美術展観賞記録

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展覧会に行ったときの感想文。Instagramに投稿しているものと文章はほぼ同内容ですが、写真および作品解説を追加していることがあります。
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2024年2月の記事一覧

「マリー・ローランサンー時代をうつす眼」(アーティゾン美術館)

「マリー・ローランサンー時代をうつす眼」(アーティゾン美術館)

1908年、ピカソ、ブラックらの知己を得たことでキュビスムの画家としてスタートした彼女。このキュビスム時代に表現はシンプルに、肌は白くなり、淡い色彩の幻想的な作風になっていったわけですが、詩人アポリネールとの失恋をきっかけにキュビスムから離れ、どのジャンルにも完全にコミットはしない、幻想的な作風のみが彼女の手元に残っていきました。
言葉で言えば「白い」「淡い」「幻想的」ではありますが、その画面から

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「小さな版画のやりとり 斎藤昌三コレクションの蔵書票と榛の会の年賀状」(茅ヶ崎市美術館)

「小さな版画のやりとり 斎藤昌三コレクションの蔵書票と榛の会の年賀状」(茅ヶ崎市美術館)

今回展示されていたものは蔵書票と年賀状。
蔵書票は書籍の盗難防止のため、本の見返し部分に貼られたもので、「紙の宝石」として、現在もコレクションの対象となっております。それを使った豆本なども展示されており、あまり古本でも出くわしたことが無いだけに(たぶん剥がされているんだと思います)、その存在にまず興味津々でした。
 
一方の年賀状は、1935年から約20年間活動していた年賀状交換グループ「榛(はん

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「中平卓馬 火-氾濫」(東京国立近代美術館)

「中平卓馬 火-氾濫」(東京国立近代美術館)

 ハイコントラストな白黒写真で知られる森山大道の「盟友」として知られる写真家、中平卓馬。森山との関係性は重要で、特に初期、都市の路上という舞台、モノクロ写真における「アレブレボケ」という、一見乱雑な写真を肯定する「理論」を共有していた時期もあります(今回の展覧会でも中平のポートレートなど、森山の写真も数点展示)。
 ただし、その「理論」が森山にとって座り心地が良かったのに対し、中平はそこからは離れ

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