見出し画像

【後編】Karin が教育を学ぶわけ:大学へ進学して

こんにちは!

前回は Karin が教育を学ぶきっかけとなった経験について
紹介させていただきました。

今回はそれに引き続き、

実際に大学に進んで、自分の思いや考え方が
どう変化してきたか、

また今の Karin の思いなどを

紹介できたらと思っています。


それでは早速参りましょう!


大学にきて直面したアメリカの人種差別&格差と教育

入門授業でのフィールドワーク

大学に進学し、最初の学期に 
Introduction to Education という教育学の入門授業を履修しました。

この授業では、ディスカッション中心の授業に加え、
毎週大学周辺の学校に行き、フィールドワークといった形で、
授業を見学したり、
子供たちと交流したりすることが行われました。

配属される学校の種類(公立・私立、幼稚園~高校)も、
教育思想や取り入れられているカリキュラムも

本当に様々な中、

私は大学から車で15~20分ほどの 

黒人がほとんどを占める地域にある
公立中学校に配属されました。

毎週、週2回学校を訪れ、
理科の授業を見学させてもらいながら、
子供たちや先生と交流していました。

毎週訪れる中で、
だんだん子供たちの顔や名前が覚えられるようになり、

子供たちも「あ!またきたね!」といった感じで
温かく迎え入れてくれる環境が整ってきたときは

とても嬉しかったです。


衝撃的だったある日の騒動

上記のように子供たちと接しているときは、
本当にかわいくて私が癒されて帰る、
といったこともよくあったのですが、

学校に行くたびに、様々な違和感も感じていました。

だいたい、いつも到着する時間が休み時間中だったのですが、
私が思い浮かべる中学校の休み時間とは違い、

子供たちはカフェテリアと呼ばれる
お昼を食べられる大きなスペースの中でしか
休み時間を過ごすことが許されていませんでした。

休み時間なのにもかかわらず、
廊下に生徒は1人もおらず、

歩き回っている子がいると、
見回りをしている先生がすかさず 

「おい!何をしているんだ!カフェテリアへ行くんだ!」

と声をかける光景を何度か見かけました。


また、教室移動の際も、
日本の中学校のように、子供たちが友達などと一緒に
ばらばらに移動するのとは違い、

毎回先生が生徒を一直線に並ばせ、
先生を筆頭に階段を上り下りしたり、廊下を歩く
形で

教室移動がされていました。


これらを見た私は
「この子たち、中学生だよね?」
「もう、自分たちでいろいろと考えて行動できる年頃なのではないか…」

と考えていました。


そんな違和感を抱えたまま、ある日
普段通り授業を見学していたところ、

急に廊下が騒がしくなり、

授業中なのにもかかわらず、
廊下を駆け抜けていく生徒が、次から次へと見え、

何人かの生徒が自分の教室ではないのに
私がいた教室に駆け込んできました。

何が起こっているのかわからないまま、
授業が中断された教室の中で子供たちと待っていたところ、

2人の生徒が喧嘩になってるらしい!

ということを駆けこんできた生徒から聞きました。


「セキュリティを呼べ!」「警察も呼ぶか?!」
と言っている先生の声も聞こえました。

中には動揺して泣きだしそうになっている子もいれば、
いつものことよ、といった様子で平然としている子もいて、

今まで経験したことのない状況に、
私もショックを受けたのを覚えています。


先生から聞いた子供たちのすざましい状況

騒ぎが少し収まったタイミングで、

先生が私たち学生を呼んで
「もう残りの時間は授業はできないから」と

この中学校に通う多くの子供たちが置かれている状況について
話してくれました。

「このような騒ぎがあると、
この子たちは普通の子供たち以上に動揺してしまうの。」


それは、なぜか。

この中学校に通う子供たちの多くは、

  • 片親(または両親)が薬物中毒者やアルコール依存症だったり

  • 親が刑務所にいて、自分達で弟妹の世話をしなければならない立場にいたり

  • 警察との衝突が原因で、目の前で親が射殺される経験をしていたり

  • 日常的に目の前で人が傷つけられたり、衝突が起こる環境で育っている

ということを教えてくれました。


はじめに書いたように、

この学校がある地域は、
黒人がほとんどの、
貧しく、荒れた地域で、

黒人差別がまだ根強いアメリカでは、
警察に目を付けられることも多く、
多くの子供たちは様々なトラウマを抱えながら生活しているということを、教えてくれました。

だからこそ、私たちが思う些細なことでも
様々なことがトリガーとなり、
喧嘩を引き起こしてしまったり、
そのような喧嘩を目撃したりすることで、ショックを受けてしまう子も多くいる、
ということでした。



先生とお話しした中でも衝撃的だった一言が

“These students come to school everyday stepping over puddles of blood”

(この子たちは毎日、血の水たまりを踏んで学校にきているのよ)

でした。

「この子たちに
学校にきて、決まった時間椅子に座って、
集中して勉強しなさい、ということは
本当はとても無理なお願いをしていると、
私は思っているの。」

学校の外で送っている生活のことを考えると、
彼らは学校にきているだけで本当にすごいことなんだと、
先生は教えてくれました。


学校としても以前はカウンセラーを設置し、
トラウマを抱えた子供たちをサポートする制度もあったようなのですが、

数年前に予算が削られ、カウンセラーの設置さえ困難になってしまった、
と先生はおっしゃっていました。

アメリカの場合、
それぞれの学校に分配される予算は州ごとに決められ、
その州によっても教育にどれくらいの予算を割くのか、といったことが異なってくるのですが、

私の大学やこの中学校があるペンシルバニア州は、
全米の中でも教育にかけているお金が非常に低い州で
(下から数えて5つに入るくらいひどいんです…)

この学校がある地区は、
在校生の学力レベルも低く、トラブルも多く発生していたため
(あと、恐らく人種差別も絡み)
予算をどんどん削られている状況にありました。

「要するに、この子たちは州から見放されてしまったのよ。」

「カウンセリング制度が整えば、
トラブルも減り、学力も向上するのに、

州は私たちの声を聞いてくれないの。」

このような学校は先生にとっても働くのが非常に難しい環境であるため、
よい先生はどんどん離れていってしまい、

悪循環が起こっていると。

そんな子供たちのために、
私は辛くて大変でも、ここに残って働くと決めているの
と先生はおっしゃっていました。


私はこれを聞いて、
無邪気な子供たちの顔や
帰り際に「またくる?」と
聞いてくれる子供たちのことを思ったら、

本当に胸が苦しくなり、
どうしようもない気持ちに包まれました。


そんな気持ちが抑えられず、
大学に戻って教授を探していた時に、
声をかけてくれた別の教育学の教授のオフィスで

号泣してしまったのを今でも覚えています。

(当時この教授とは何の関わりもなかったのですが、今は大学の中でも最も信頼し、お世話にもなっている教授です。)


広がった視野と徐々に変化していった思い

こんな衝撃的な経験を、大学へ進学して数か月で経験し、

私はこれまで自分が抱いていた

「受験システムを変えたい!」
「押し付けられる勉強をなくしたい」

といった思いは、

自分が解決したい問題の本当にほんの一部である

ということを実感しました。


世の中には、もっと深刻な問題がたくさんあって、
自分が想像もできない環境下で、
必死に学ぼうとしている子供たちがいる

ということを知りました。


その後も大学で様々な教育の授業を受ける中で、
経済格差や文化、その国の政治(や経済)形態が
教育にもたらす影響などについても学んできて、

今は小学校の時の経験がベースとなっている

「学びを楽しいものだと思える教育を届けたい」

という思いに加え、

そのような教育がより多くの子供たちに届くようにすること

また子供たちが自尊心を身に着け、
ありのままの自分を愛し、受け入れられる、

そんな教育を届けたい、と
思っています。


格差など、
"よい"教育を届ける障害となるものをなくしていくこと

そしてただ知識を提供するのではなく、

将来、自分の可能性を信じて、
自分の夢を追い求めて生きていくことができる
1人の人間を育てる教育

実現したい、届けたい、と
今は強く思っています。


最後に

ここまでお付き合いくださった方、
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

アメリカでの学びや生活は、衝撃的なことも多いですが、
日本を飛び出したからこそ、

見えてくるものや
経験できることも多いように感じています。


これからも、教育に対する思いはどんどんアップデートされ、
目指していくものや、教育への関わり方も
変わっていくと思いますが、

今の自分の思いや考えを綴ってみました。


またこれからも様々なことを
ここに残していけたら、と思っているので、

また是非立ち寄ってみてくださいね。

それでは、また!


※ 前回同様、今回紹介したフィールドワーク先の中学校での経験や先生との会話は、当時の記憶をもとに振り返ったものですので、事実とは異なる可能性もあります。また、アメリカの学校や教育に関して、今回の内容が一概に当てはまるものでもありませんので、ご了承くださいね!


大学にまつわる他の記事も
よければ立ち寄ってみてくださいね☺


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?