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播磨陰陽師の独り言・第432話「十日恵比寿のこと」

 正月十日は〈十日恵比寿〉。これは一月十日のことですが、九州では、なぜか正月から十日恵比寿をやっています。それどころか〈十日恵比寿神社〉と言うものまであり、いつお祭りするのか分からないような感じです。
 大阪に住んでいた頃は、今宮戎神社へ詣っていました。
「商売繁盛で笹持って来い」
 と福娘が囃す声を聞きながらお詣りします。十日恵比寿では笹を配っています、基本的には無料ですが、飾りは有料です。ここに派手な飾りをつければつけるほど、縁起が良いそうです。もちろん、派手な飾りは高いです。神社的にもうまい商売ですね。さすがは商売繁盛の神社です。
 ここは夜店がすごくって、今宮恵比寿から難波あたりまで続いていました。寒い寒い夜ですが、長い長い夜店を見ながら歩いていると、心の底からほっこりしました。
 お祭りでは、なぜか大きいままのマグロが切らずに飾られています。その上にコインや千円札が貼ってありました。これは関西だけの風習のようです。関西では様々な十日恵比寿に行きましたが、どこへ行ってもマグロはありました。しかし、九州では見たことはありません。
 十日恵比寿と言えば〈福箕ふくみ〉売りです。福箕と言うのは、恵比寿さんと大黒さんの顔のついたざるみたいなやつです。夜店のあちこちで売られています。これで福をかき集めるそうです。
 今宮恵比寿の夜店は不思議なものが多く、驚くほど大きな夜店もあります。夜店と言われて想像するサイズは、たぶん二畳くらいの正方形のお店だと思います。しかし、今宮戎の大きなものは、3〜40人ほど食事が出来るサイズがあちこちにありました。食べ物ばかりではなく、骨董屋さんなどのお店もありました。
 さて、京都で十日恵比寿に行った時のことです。長い行列を歩いていると、近くの人が持っていた笹が当たりました。すでに別な恵比寿さんにお詣りして来たのでしょうか、笹には飾りがついていました。そして、頭の上からバラバラと何かが降って来たので、手に取ると小銭でした。
——はて?
 首を傾げながら見ていると、また、落ちて来ました。笹飾りに付けている五円や五十円玉が、飾りから外れて落ちて来ていたのです。その年は、福が降って来たこともあり、お金には困らなかったような気がします。

 今夜も九時からクラブハウスで音声配信と質問コーナーがあります。
 次回は一月十二日夜九時の配信になります。内容は「薮入りから亡者の宿下り」です。朗読とそれに続く質問コーナーは『陰陽師の嫁/W&M Club』で聞くことが出来ます。もちろん参加して質問することも出来ます。お楽しみに……。

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