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怖い話のウラ話・第3話「元気を吸う幽霊」

 人は元気を失うと、やがて病気になります。元気が健康の元なのです。幽霊はその元気を奪うことを主な生業なりわいとしています。
 昔から、
「病は気から」
 と言う言葉があります。
 この言葉は、
「元気がなくなると、気持ちがなえて、病気になるンや」
 と言うことを意味しています。
 さて、幽霊は元気を吸い取りますが、具体的に、
「どう吸い取るンや?」
 と、申しますと、元気が含まれた息そのものを吸うのです。
 昔は、
「幽霊に出会ったら、息を吸われないように、すぐに止めるンや」
 と、よく言われたものです。
 生きていると言うことは、
「それ、すなわち、息をする」
 と言う意味です。
 息をしていないものは、生きていません。
 死人しびとと生きている者の区別は、まったくこの息の有無にあるのです。
 人を含め、あらゆる存在は、息、つまり、呼吸することによって魂を得て生きる力を得ています。
 驚いて息が止まることを、
「あァ、たまげた」
 と良い言いますが、この〈たまげる〉と言う言葉は魂が消えると書くのです。
 幽霊に出会ってたまげると、魂の一部が吸われて消えます。ここで失った魂は、たとえば、温泉へ行って湯につかってホッとするとかなどによって回復します。失ったままで、回復させないと、やがて元気がなくなって、どこかで病になる訳です。この時、場合によっては、軽い怪我をしたり、妙な不幸が続くこともあります。
 息が浅い人は、元気の元である魂が少ないので、寿命が短くなります。泣いている人や怒っている人も、息か浅くなるので、元気がなくなります。
 深く息をして、十分に魂を取り込んで元気を溜め込まないと、どこかで不幸な出来事に出会うのです。
 同じ条件なら、孤独で息の浅い人から先に不幸になります。
 これは良く言われるようにな、
「なんか悪いことをしているから、その報いで不幸になるンや」
 と言うことではありません。
 実は、
「ひとりぼっちで、息が浅いから、不幸になるンや」
 と言う訳なのです。ところで人の魂を吸うのは何も幽霊ばかりとは限りませんが、この続きはまた次回。お楽しみに。

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