御伽怪談第三集・第三話「肝試しの代償」
一
寛永の頃(1624)のことである。京に住む町人たちが頭を寄せ合い、知恵を絞り、つまらぬ与太話を繰り広げていた。
奇しくも秋の満月の、しかも未の夜だった。遠寺の鐘が陰々と鳴り響く中、虫の音も何やら怖れるかのように聞こえていた。そよそよと揺れる芒の穂が、亡霊のおいでおいでのように見える夜であった。
九月の未には碌なことがない。化け物の出る確率も上がるのだが、そんなことは露も知らない彼らであった。もちろん暦は読まなかった。何も知らずにこの日を選んだのであろう。弱り目