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心に響く曲

今日、キッチンで料理をしながらYouTubeで音楽を流していたら、King Gnuの「The Hole」が流れてきた。好きな曲だ。何気なく聴きながら口ずさんでいたら、不意に涙が溢れて止まらなくなった。そのときはまだ、玉ねぎは切っていなかったのに。
これまでにも何度もこの曲を聴いている。ミュージックビデオも何度も観ている。それなのに今日初めて、突然に溢れ出た涙。

私は泣きながら、10年以上前に、自ら命を絶った大好きな従姉妹を想っていた。彼女は、消えそうな声を上げていたのだろうか。彼女にぽっかりと開いてしまった穴は、なんだったのだろうか。もしもそのとき、私がそれに気づくことができていたのなら、私は彼女の傷口になれたのか。
きっと、なれなかっただろうな。そのことが悲しくて悔しくて申し訳なくてやりきれなくて涙が止まらなかった。

あなたの痛みを何も知らなくてごめんね。何も気付けなくてごめんね。何もできなくてごめんね。ずっと、そう思っていた。
でも、何も知らず、何も気付かず、何もできなかったことを悔やみ続けても、彼女の肉体はもう、失われてしまった。それは何も変わらない。しかし、彼女の魂は、今もまだ失われずに、この広い宇宙のどこかにあるはずだ。その魂に向かって語りかけ続けることは、今の私にもできることだ。彼女の肉体は救えなかったけれど、魂になら、救いの手を差し出せるのかもしれない。
そんなことを思い、最近の自分のこと、こどものこと、母のこと、暮らしのこと、いろんなことを、彼女に話した。霊感などの特殊な能力を持ち合わせていない私は、一方的に話すだけで、彼女の声は何も聞こえないのだけれど。話していたら、いつの間にか涙は渇いていた。結局、救われたのは私だった。

誰かの曲を初めて耳にしたときに、"わ!この曲好きだな!"とか、"この歌詞めっちゃ共感できる!"とか、そういう風に感じることが、"心に響く"ということだと思っていたけれど、今日のように、何度も何度も聴いている曲が、あるとき突然、抑えきれない感情を呼び起こす。そして、その感情が、新たな気付きをもたらす。そういうことが、"心に響く"ということなんだと思った。