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「ひと手間」のぬくもり


ひさしぶりに書いた、手書きのメッセージカード

9月いっぱいで習い事のホットヨガを解約した。
お世話になったスタジオ、インストラクターの先生方、みんな大好きだった。
ヨガを通して自分の心身と向き合う時間の大切さに気づいて、取り入れたことで、生活のクォリティが改善された実感がある。
でも今の私には次のステップに進むために、何かを手放す必要があった。
解約手続きをした時の心苦しさと寂しさ。
手続きの担当は、私が入会時からお世話になったインストラクターの先生。
「よりによって…!話を切り出しづらいじゃんか。」と心の中で嘆いた。
まさに泣く泣く…の決断。
「最後までレッスンたくさん受けてくださいね!」と声をかけてくれた先生に申し訳なさを感じた。

先生方には何かしらの形できちんとお礼がしたかった。
それはヨガのおかげでしんどかった時期を乗り越え、今では笑顔で過ごすことができるようになったから。
たくさんの気づきを得たから。
自分なりにできることを考えてみた。
いろいろと考え、私は名刺サイズのメッセージカードに手書きでメッセージを書くことに決めた。

「ひと手間」かけても伝えたい価値

私は字が格段上手なわけではないし、カードのデコレーション技術はもはや皆無だ。
時短で作成するなら、PCやスマホでサッと書いてプリントすれば良い。
普段めんどくさがりなわたしが、なぜ手書きのメッセージカードを選んだのか。

それは、ひと手間かけることで生まれるひとの温かみが好きだから。

私はコーヒーチェーン店で働いていた時に、よくお客様のカップにペンでイラストやメッセージを書いていた。
メッセージに気づいたお客様が喜ぶ姿を見ると、忙しい中でさえ私も嬉しくなる。
それは働く仲間同士に対しても同じだった。
「〇〇さんの〜〜に助けられたよ。ありがとう!」「〜〜頑張ってたね!ナイス!」などと手書きでメッセージカードを送る文化があった。
カードは休憩中やシフトの退勤後に書く。
あえて自分の手で書くことで、字体にその人の性格が滲み出たり、独特な表現にクスッとすることもある。(自分を棚に上げてはいけないけど…。笑)
みんなが思い思いに感謝や賞賛の言葉を綴る姿を見ると、「手書きは面倒だ」とか「時間がないから…」という考えは自然と消える。
伝えた先につながる誰かの笑顔や自信。
世の中は効率の良さや工数削減を優先され、喜ばれる時代。
でも私は、実はその中に、本当はひと手間かけてでも伝えるに値する価値がたくさん埋もれているのではないかと思う。
例として、今回の出来事みたいに。

ヨガとの出会い

思えば、ホットヨガとの出会いは今から約1年半前に遡る。
当時のわたしは仕事を休職し、心身共に良いコンディションではなかった。
冬の寒い気候もあいまって、家に引きこもる。
末端冷え性で体は冷えやすく、休職して将来が見えない焦燥感に駆られていた。

メンタルクリニックの先生から「できれば体を動かした方がいいですよ」と勧められてジムや宅トレをリサーチ。
でも…ピンとくるものがない。
筋肉痛になった途端にやる気を失くすし、自分の体に合うトレーニングメニューではないとどこか納得がいかない。
「言い訳」という名のややこしい性格が邪魔をする。
思い切ってシェアハウスメンバーに相談すると「ヨガやってみたら?もともとバレエやってたなら合ってると思うよ〜」とアドバイスをもらった。
たしかに高校卒業までクラシックバレエを習っていたこともあり、音楽にあわせて体を動かすことに抵抗はない。
数日かけて黙々とリサーチした悩みは、ほんの数十分で解決した。

ヨガを通して身についた、セルフケアの習慣

「冷え性と運動不足が解消できればいいや〜」とふんわり考えて入会。
ところがレッスンに通うにつれて、あらゆる概念が覆されていった。

人生で初めて「呼吸」を意識した。
吸う息で胸部や腹部に空気を送り、吐く息で体を緩める。
入会当初はこの呼吸ができずに苦しんだ。
吸うこと・吐くことそれぞれが5秒続かないどころか、体が力む。
知らないうちに呼吸が浅くなっていたのだ。
数ヶ月続けると少しずつ慣れ、体に空気が入りづらい箇所に気づけるようになった。
ホットヨガの室温にも助けられ、冷えてガチガチだった体は芯から温まり、大汗をかいた後は爽快感を感じるようになった。

ヨガは「ポーズをとるもの」と思っていたが、それは勝手なイメージだった。
先生や周りの人とポーズの上手下手を比べるのではなく、自分の心地の良いところでキープして心身と向き合う。
頭の中を空っぽにして、体の隅々に呼吸を届けたり、体の伸びを感じることに集中する。
バレエの世界では体のバランスやポーズの美しさを厳格に求められた。
バレエから離れて10年経ち、体の柔軟さが失われたことにがっかりした。
インストラクターの先生に本音を漏らすと「がっかりする必要ないですよ!」と返ってきた。
無意識のうちに他人と自分を比べる癖。
自分の状態に「良い・悪い」とレッテルを貼り、悪ければ原因を探り、ライバルを追えるようにさらに練習を突き詰める。
バレエを習っていた当時の私には必要で、辞めた今もずっと刷り込まれて当たり前になっていた思考。
「そうか。今の私にはこの考えはもう必要ないんだ。やめてみよう。」
自分を苦しめていたものがひとつ分かった気がした。
染みついた思考を外すべく、まずはレッスン中の1時間からどんな自分もまるごと受けいれる練習を始めた。

週3回のペースでレッスンに通い、自身の生活リズムを整えた。
インストラクターの先生方は私の顔と名前を覚えて、フロントでは必ず挨拶をしてくださった。
そんな温かい雰囲気に救われて、通い続けることができた。
その一方で、20代働き盛りの人が時間帯に関係なくレッスンに通うことに違和感を感じられていないだろうかと不安に思うこともあった。
先生に休職していることを話すと、「今は無理せず、しっかり休みましょうね」と温かい言葉をかけてもらった。
「休職」にはネガティブなイメージがつきまとう。
過剰に心配されると気が引けるからこそ、どう受け取られるか心配だったのだが、絶妙な塩梅の言葉をかけてもらえたことが本当にありがたかった。

たくさんの気づきを通して、自然と心身をセルフケアできるようになり、私は社会復帰した。

「ありがとう」の連鎖

思い出はたくさん。
いち生徒の一方的な思い出に過ぎないかもしれないけれど。笑
名刺サイズのカードに全部は書ききれない。
お世話になった先生方の顔を思い浮かべながら、一番心に残ったエピソードを添えて「ありがとう」の気持ちをしたためた。

迎えた最終日。
「今日が最後なんですね…」と先生。
レッスンが受けられることってありがたいことだったんだな…としんみり。
最後までしっかり身体と向き合ってリフレッシュ。

手紙と一緒にお渡ししようと思っていたプレゼントを準備できず、レッスン後に購入して急いでスタジオに戻ると…
なんと先生方がメッセージカードを書いてくださっていた…!
業務や他の生徒さんの対応もあって忙しいはずなのに。
私はレッスンを受けられただけで幸せなのに。
先生も「ひと手間」かけてくださっていた。

「実は私も先生方にお渡ししようと思って…」とカードを取り出すと「え〜!」と驚かれ、思わずお互いに笑顔になった。
思い出話に花が咲き、「ありがとうございました」というやりとりが無限ループする。
思っているだけでは勿体無い。
形にして思いを伝えるって大事だ。
「ありがとう」って連鎖するんだ…。
先生方の真心を感じて、私の心がほかほかと温まった瞬間。
スタジオは卒業するけれど、私はこれからもヨガを続けようと思う。

世の中はもしかしたら、誰かの「ひと手間」で成り立っているのかもしれない。
もしそのひと手間に気づいたら、そっと「ありがとう」を届けてみよう。

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