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お母さんと福袋。

どの家庭でも一つはあるだろう、年末年始の「恒例」や「習慣」。

うちの家族は、1/2に母とわたしが、とあるデパートへ初売りに行くのが恒例だ。

(父と弟はその間、電気屋の初売りに行ったり古本屋に行ったり駅伝を見たり、男同士で自由に過ごしているらしい。)

そのデパートは、家とは異なる市にあり、車で片道50分ほどかかる場所にある。

そのため、開店に間に合うように向かうべく、新年早々朝8時には家を出発している。

そんな初売りへの挑戦は、母とわたしにとっつ新年最初のビッグイベントであり、楽しみだった。

一昨年だっただろうか。

母が「もう初売り行かなくていいかな」と言い出したことがあった。

仕事や介護などで忙しく疲れており、初売りのチラシのチェックをする元気すらなかった時だった。

わたしは思わず、こう声をかけた。

「お母さんが初売りに行けるのは、元気のバロメーターだね。だから身体が元気なうちは、初売りに行こうよ。」

その一言が、母の心に触れたらしい。

それから毎年、「初売りは行かなきゃね!」と意気込むようになった。

そして、今年も無事に初売りへ向かった。

しかし、待ち受けていたのは悲しい現実だった。

いつものデパート。

いつも母が福袋を買うアパレルブランド、

…が、閉店していた。

がっかりしてデパ地下に向かい、毎年帰りがけに買っていた惣菜コーナーのピザを見に行くと、取り扱いが終わっていた。

デパート自体、以前のような活気がなくなっていたことに、この時ハッと気づいた。

「お母さんが不健康になる前に、デパートが不健康になっちゃったね。」

そう言って、デパートを後にした。

デパートの店舗入替や商品入替は、東京にいればよくあることで、全然驚かないし、気にも留めない。

だけど、昔から通っていた地方のデパートの顧客としては、一大事だった。

なんだか少し、寂しいお正月になってしまった。

来年以降、母とわたしは、果たして初売りに向かうのだろうか?

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