松雪泰子さんについて考える(14)『グッドパートナー 無敵の弁護士』

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*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

松雪さん出演シーンの充実度:8点(/10点)
作品の面白さ:7点(/10点)
制作年:2016年(テレビ朝日)
視聴方法:TELASA、FOD、U-NEXT
 
※以下、多少のネタバレを含みますが、決定的なオチや展開には触れないようしております。
 
竹野内豊さんと松雪泰子さんが主演の弁護士ドラマ。2人は同じ弁護士事務所で働く元夫婦役。互いに罵り合いながらも、クライアントを助けるために協力していくうち、徐々に亀裂が修復されて…。という内容。

基本的には一話完結。弁護士事務所内の同僚たちの成長を描く群像劇的要素もある。
 
作品のテイストとしては、弁護士のカッコよさを描きながらも、合間にコメディタッチのやりとりも挟んで、小気味よい雰囲気に仕上がっている。観ていて普通に楽しめる感じ。暗いテーマやじめじめしたシーンが無いので、肩の力を抜いて観られる。

しかも、役者が豪華。主演の2人の時点で十分すごいが、他にも、弁護士事務所の所長は國村隼さん(ボスと呼ばれているのが仰々しい気がするが)。同僚弁護士役として、杉本哲太さん、賀来賢人さん、山崎育三郎さん。パラリーガル(助手)役の大倉孝二さん等々。
 
出演者、テーマ、明るいテイスト。これだけ申し分ない材料が揃っている割には、第9話で最終回となっている。Wikipediaによると、各話10%前後なので、2016年ということも考慮すると、打ち切るほど低い数字ではないと思うが・・・。最初から全9話の予定だったのだろうか。
 
いずれにしても、作品自体がそれなりに面白いので、観て損はない。
 
では、松雪さんの役柄や見所はどうか。
 
優秀な弁護士役ではあるものの、元夫(竹野内)とケンカしたり嫌味を言ったり、娘のことを心配したりと、人間味のある役柄。そのため、「仕事ができるキリっとした女性」を演じるときのような中低音の声ではなく、地声とアナウンサー調の中間くらいの声色が使われている。

また、役柄上、喜怒哀楽も表情も多彩なので、松雪さんの色んな演技を観ることができる。逆に、激情に駆られて絶叫したり号泣したりするようなシーンは無いが。
 
また、弁護士としてだけでなく、娘をもつ母、クライアントの男に言い寄られる女性としての顔も持つので、それに合わせた衣装やメイクも様々。
 
おまけに日本舞踊を習うシーンが3~4回出てくるが、着物姿も踊りも眼福だ。着物姿が出てくるのは、本作以外では映画『余命』(2009年)、ドラマ『境遇』(2011年)、ドラマ『負けて、勝つ ~戦後を創った男・吉田茂~』(2012年)、映画『古都』(2016年)、スペシャルドラマ『エアガール』(2021年)等だが、あまり多くない。(ドラマ『半分、青い。』(2018年)にも出てくるが、ほんの一瞬だけ。)

 もう一点触れておきたいのが、第7話で登場する伊豆の温泉旅館。Mother』について書いた回でも記したとおり、同作の非常に大事なシーンのロケ地として使われたのと同じ旅館。旅館をバックに、坂下からのアングルで松雪さんが映ると、同じような画角で撮影された『Mother』のシーンが必然的にフラッシュバックする。狙ったわけではなく偶然この場所が選ばれただけだと思うが、伊豆の温泉旅館といえばよく使われるロケ地なのだろうか。

ところで、他の役者さんについて。
 
竹野内豊さんは、いつもどおりハンサムで声もいい。松雪さんとのコンビで、本作の前年に映画『at Home』でも共演。
 
國村隼さんも、いつもどおり低くて渋くて、適度に乾いた味のある声。日本の男性俳優の中で一番良い声だと個人的に思っている。その次が竹野内豊さんなので(あくまで個人的)、この二人の会話は耳心地がよすぎる。

ちなみに、國村さんと松雪さんの共演は、ドラマ『アフリカの夜』(1999年)以来のはずで、感慨深い。※映画『てぃだかんかん』(2010年)でも共演していました。失礼いたしました(2024.1.13追記)
 
賀来賢人さん、山崎育三郎さんも良かった。2人とも、クスっと笑える演技が、やりすぎている感じがせずいい塩梅で上手。ちなみに、この作品で山崎育三郎さんと共演した縁があったので、2022年「おしゃれクリップ」にゲスト出演する決め手になったと、松雪さん本人が番組中にコメントしていた。
 
杉本哲太さんと松雪さんの共演は、本作が初めてではないだろうか。90年代前半までさかのぼると分からないが・・・。最近ではドラマ『ペンディングトレイン』(2023年)で再共演。
 
そして、第二話にゲスト出演したモロ師岡さん。『太陽は沈まない』(2000年)以来となる共演のはず。その認識で正しければ、15年ぶり。しかも、当時と同じく2人とも弁護士役として。『太陽―』では同じ事務所の先輩弁護士役だったが、今回は相手方の弁護士役。
 
ということで、全体的におすすめできる作品ではある。

ただ、ものすごく面白いかというと微妙で、正直、そこそこくらい。

各回のクライアントの依頼を解決する話自体はいいのだが、元夫婦(竹野内・松雪)の関係性が最終回までに進展する流れについては、あまり深堀りされることなく、描かれ方が中途半端だった感じ。意外性にも欠けた。これがもう少し丁寧に表現されていれば、文句ない完成度になっていたはず。そういう意味では9話しかないのが少し窮屈で、あと1~2話あれば良かったのにと思う。

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