松雪泰子さんについて考える(35)『境遇』

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*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

松雪さん出演シーンの充実度:8点(/10点)
作品の面白さ:5点(/10点)
制作年:2011年(ABC朝日放送、テレビ朝日系列)
視聴方法:TSUTAYAディスカス
 
※以下、多少のネタバレを含みますが、決定的なオチや結末には触れないようしております。
 
ABC(大阪の朝日放送)創立60周年記念単発ドラマ。湊かなえさんの同名小説が原作。養護施設育ちの2人の女性の境遇をめぐる物語。
 
序盤の絵本の朗読シーン。女性アナウンサーの柔らかい声が聴き心地良い。…と思いながら聴いていたら、着物姿で朗読する松雪さんの姿が映り、耳を疑った。声だけ聴いていると、松雪さんとは思えない。
 
このブログでは松雪さんの声色の豊富さについて度々書いてきた。高い声から低い声まで、柔らかい声から硬い声までレンジが広く、別人の声かとすら思うようなときもある。それは承知していたが、この声には驚いた。どれだけ声色のバリエーションを持っているんだろう…。
 
映画『それいけ!アンパンマン すくえ!!ココリンと奇跡の星』(2011年)のココリン、映画『リメンバー・ミー』(2017年)のママ・イメルダの声もかなり別人感があるが、それに匹敵する。絵本の朗読というシチュエーションを十二分に踏まえた声づくり。
 
終盤にも絵本朗読シーンは出てくる。これらの朗読シーンの声を聴けるだけでも、松雪さんの出演シーン的には観る価値十分。
 
ただし、本編の内容はあまりよくない。
 
まず、序盤のあたりで既に展開が読めてしまう。タイトルが「境遇」であることも踏まえて考えれば当然そうなるよなという感じで、意外性が希薄。
 
展開が読めてしまうとしても、それをカバーできるだけの決め手となるような名シーンでもあればいいのだが、そういうクライマックス的な場面もなく…。
 
誘拐事件を主軸にしたサスペンスにしたかったのか、2人(松雪泰子・りょう)の感動ストーリーにしたかったのか、いまいち狙いが定まっていない気がした。全編観終わってから察するに、おそらく後者なのだろうが、それも中途半端。
 
総じて、これくらいの内容なら往年の火曜サスペンス劇場や土曜ワイド劇場、最近では『相棒』の2時間スペシャルくらいで十分描ける内容。「ABC放送60周年記念」「湊かなえ原作」という触れ込みでハードルがあがり、豪華な役者陣が出揃うことで更にハードルが上がってしまっているが、それが肩透かしになってしまっている。
 
唯一このドラマならではの良いところと言えるのが、撮影のメイン舞台となった長野県松本市のロケーションだ。スタジオセットや都内の撮影だけでは出せないリアリティと視覚的美しさ・新鮮さが味わえる。
 
出演陣は本当に豪華。

準主演のりょうさんとはこれが初めての共演。最近、2022年『祈りのカルテ』で久しぶりに共演を果たした。

沢村一樹さんとの共演は1997年『理想の上司』以来か。

岸部一徳さんとの共演は1998年『なにさまっ!』、2006年『フラガール』と意外に多い。

東幹久さんとは1998年『きらきらひかる』(第一話)、2009年『子宮の記憶』等。

田畑智子さんとは2001年『救命病棟24時』、2004年『夜叉ケ池』(舞台)。

いしだあゆみさん、野際陽子さんとは初めてだろうか。

ちなみに、2023年、AmazonのAudibleというサービスで、このドラマの原作小説の朗読を松雪さんが行った音声がリリースされた。(2024.1.14現在、私はまだ聴いていません)


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