松雪泰子さんについて考える(44)映画『リメンバー・ミー』

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*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

松雪さん出演シーンの充実度:7点(/10点)
作品の面白さ:9点(/10点)
公開年:2018年
視聴方法:ディズニープラス
 
※以下、多少のネタバレを含みますが、決定的なオチや結末には触れないようしております。
 
ピクサーの傑作だと思う。
 
これまでディズニーの作品はそこそこ観ているが、かなり上位にくる。余談だが、『ウィッシュ』(2023年)はまぁまぁだった。
 
死者の世界で生きる人たちは、生きている人間全員から忘れ去られたら消えてしまう。祭壇に写真が飾られていれば、忘れられていない証拠として、年に一度、生きている人間の世界に遊びに行くことができる。
 
いろんな示唆に富んだ設定だ。まず、死者の世界の住人はみんな楽しそうにしている。これだけでも、観ていてなんだか救われたような気持ちになる。そうか、あの人も今、あの世で楽しくしているのか。そんな、優しい空想に浸ることができる。なんとさり気なく温かい描写だろう。
 
主人公の男の子・ミゲルは、音楽をやりたいが、先祖の起こしたいざこざのせいで、音楽を家族から禁止されている。でも音楽への情熱は消えない。年に一度の「死者の日」に、ある事件がきっかけで、死者の世界へと足を踏み入れることになる。
 
そこで出会うのは、自分の先祖たち。骸骨姿だが、祭壇の写真で見た面影が残っていて、すぐに誰だか分かる。楽しいひとときも束の間、ミゲルは、自分が音楽を禁じられることになった原因をつくった張本人を捜す。自分の先祖でもあり有名ミュージシャンでもある男を。
 
まだ観たことのない方は、ここから先は本編をぜひ観て確かめて欲しい。伏線が回収され、謎が解け、心温まる、実に優れたストーリー展開だ。
 
ネタバレをできるだけ抑えながら一点だけ述べたい。ある人が死を迎える場面。死者の世界がなかなか楽しそうな場所として存在していることを観ているこちら側は、死にゆく悲しさの中にどこか安心感を覚える。現実世界に生きる私たちも、身近な人の死をこうやって受け入れられれば、少しは楽になれそう。そんなことを考えさせられる、とても印象的なシーンだ。
 
あとは、CG映像、特に死者の世界のそれが本当に見事。ピクサー社の本領発揮。トイ・ストーリー最新作なども凄まじいが、ひけをとらない。人物はアニメっぽく、風景・物はディテールまできっちりリアルに。二重構造の映像美が、観ていて飽きない。
 
さて、松雪さんだが、死者の世界で生きるミゲルの高祖母ママ・イメルダ役。とある事情によって音楽を捨てた女性だが、本当は音楽が好きで歌が上手い。
 
低めの声。なんと表現したらいいだろう。洋画の吹き替えで聞くような声色。松雪さんっぽくなく、当然このキャラクター用に声色を作っているのだと思うが、それ以上に何かデジタル加工でもしているのだろうか。アニメの世界のやり方に詳しくないが、そういうことをするものなのか、しないものなのか…。
 
歌のシーンもある。ここは物語上の大きな見所。もっと長く歌って欲しかったが、それはただの願望。
 
アニメへの声優出演は、2011年の映画「それいけ!アンパンマン すくえ!ココリンと奇跡の星」以来? 本編をまだちゃんと観ていないが、YouTubeで公開アフレコ映像を少し見た限り、全然違う声で驚いた。ということは、この『リメンバー・ミー』も、加工なし?

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