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松雪泰子さんについて考える(32)『てぃだかんかん〜海とサンゴと小さな奇跡〜』

松雪さん出演シーンの充実度:7点(/10点)
作品の面白さ:5点(/10点)
公開年:2009年
視聴方法:TSUTAYAディスカス
 
※以下、多少のネタバレを含みますが、決定的なオチや結末には触れないようしております。
 
沖縄でサンゴの養殖に挑んだ実在する人物の自伝を基にした、ナインティナイン・岡村隆史さん主演の映画。松雪さんは、岡村さん演じる主人公の妻役であり、2人のこどもを育てる母親役。ちなみに、監督は映画『デトロイト・メタル・シティ』(2008年)と同じ李闘士男氏。
 
自伝を基にしているからか、映画(ドラマ)というよりドキュメンタリー再現VTRのような仕上がりに感じた。時系列を追う説明くささがつきまとっているような。
 
岡村さんは本職が芸人なので仕方ないが、どうしてもセリフが棒読みだったり、所作がぎこちなかったりする。その上、どのように脳内補正してみても、松雪さんとの夫婦役が不釣り合いに感じてしまい、最後までその違和感が拭いきれなかった。出演者に罪はないが、キャスティングミスではないだろうか。このブログは松雪さんのファンの目線から書いているが、岡村さんが悪いと言いたいのではなく、客観的に考えて、岡村さんを主演にするなら逆に松雪さんを妻にする必要はなかったと思う。
 
そんな違和感を覚えながらも、松雪さんのファンにはこの映画を観て欲しい理由がある。他の出演作と比べて非常に珍しい特徴があるからだ。
 
それは、松雪さんの声の高さ。ほとんどの作品で使われている中低音の声と違って、この作品では声が高い。優しく家庭的な妻・母役ということで、いつものクールな声の出し方とは打って変わって、丸みのある柔らかい声色。
 
このような高くて柔らかい声で演じているのは、非常に珍しい。今作のように裏表も影もない明るくてノーマルな女性を演じるのは、ほぼ初めてだったはず(本作より前なら、映画『子ぎつねヘレン』くらいか)。そんな役柄に合わせた屈託のない声質は、他作品ではあまり聞けない。
 
時系列が逆になるが、自分は2018年制作のNHK朝ドラ『半分、青い。』を先に観た。このときの母親役で、いつもの松雪さんと全く違う声を聞いて驚いたが、遡ればこの『てぃだかんかん』に先例があったのだと納得した。どちらも純真な女性役・母親役という共通点があり、そうであるからこそ同じような声色が使われている。
 
ちなみに、2024年現在、これまでで一番低い声だったのは『5人のジュンコ』(2015年、WOWOW)や『邪神の天秤』(2022年、WOWOW)だと思う。よく使われる中低音の声と比べてもかなり低く、作品の緊張感に調和していたが、このときの声と『てぃだかんかん』『半分、青い。』のときとを比べると、同一人物の声だとは思えなくて面白い。
 
声の話が長くなったが、その他のシーンでは、岡村さんとのケンカのシーンが見所だった。
 
映画全体としては、最初に書いたように、すごくいいとは思えなかったが、海辺のシーンや海中の映像はキレイで壮大だった。あとは、他の役者さんも、脇役にしては豪華だった。渡部篤郎さん、國村隼さん等。
 
ということで、松雪さんのファンにとっては、いつもと違う声での演技を楽しめる貴重な一本。そういう意味ではおすすめしたい。

*このシリーズの記事一覧はこちら*

*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

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