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福岡について①

銀行員時代、転勤の都度、首都圏と近畿圏を行き来するような生活を送っていた。首都圏・近畿圏以外のエリアでは、福岡だけは、唯一、家族を伴って赴任して、2年間ほどではあるが住んだことがある。

僕らが住んでいたのは、福岡市内の市営地下鉄(空港線)の沿線の某駅から歩いて30秒ほどのところ。周辺は有名な商店街もある福岡市内屈指の文教地区であった。ドーム球場や福岡タワー、シーサイドももち海浜公園、市立博物館・図書館、大濠公園等が徒歩圏内にあり、勤務場所の天神までドアツードアで30分ほどという恵まれた住環境であった。

そういうこともあり、家族そろって福岡がとても気に入ったものだから、「このままずっと福岡で定年まで過ごしたい」と人事部に掛け合った記憶がある。もちろん、そんなワガママは銀行では通るはずもなく、2年ほどで東京の本部に転勤となってしまった。

福岡の何がそんなに良いのか。僕なりに考えてみた。とはいえ、僕の場合、「福岡愛」が強すぎるので、あまり客観的な話はできないかもしれない。

  • それなりに大都会であり、生活するのに便利である。

  • 少し足を延ばせば、山あり、海あり、温泉ありで、適当に田舎でもある。

  • 安くて美味しいものがたくさんある。

  • 住民の気質が開放的でフレンドリーである。

  • 空港へのアクセスが便利で、東京への日帰り出張圏内である。

それなりに大都会であり、生活するのに便利であるというのは、地方都市にとっては重要なポイントである。同じ九州の政令指定都市、北九州や熊本と比べても、商業施設が充実しており、若者を惹きつける要素は十分に揃っている。同じ福岡県内の北九州市内の若者が、休日などに博多や天神までわざわざ買い物に出かけるのはごく普通のことである。九州は高速バスが発達しているし、九州新幹線も開通したので、北九州や熊本はもちろん、鹿児島や長崎も日帰り圏内である。

僕のように大阪とか東京、横浜に住んでいた人間でも、福岡で不便だと感じたことは特になかった。強いて言えば、雑誌の発売日が東京や大阪よりも1日遅れになることくらいか。

都心部がコンパクトで狭いエリアに集中しているので、仕事をする場所、遊ぶ場所、住む場所がごく至近距離にある。大阪や東京のように通勤に1時間以上も要することはない。中州や天神で飲んでも、タクシーで帰宅できる。

次に、少し足を延ばせば、山あり、海あり、温泉ありで、適当に田舎でもあるというのも福岡の魅力を高めている。道路が整備されており、1時間もクルマで走るとかなり遠くまで行ける。朝、福岡を出発して、大分県の由布岳の山頂まで登り、湯布院温泉に浸かった後、その日の夕方に福岡に戻ったこともあった。佐賀県の唐津・呼子も福岡市内からクルマで1時間ほどである。この辺りまで行くと、海の色の鮮やかさに驚かされる。ゴルフ場も近場にいくらでもあるので、ゴルフ好きな人ならば、夏であれば、夕方からハーフくらいは余裕で回ることができる。福岡は東京よりも西側に位置するので、日昇時刻・日没時刻ともに東京よりも40分程度は遅いのである。

安くて美味しいものがたくさんあるということに関しては、もはや説明不要であろう。何を食べても美味しい。しかも値段は東京・大阪の7割くらいである。地元の人に教えてもらった店には一切ハズレがなかった。

豚骨ラーメンが有名であるが、福岡ではうどんも人気がある。水炊き、フグ、焼き鳥、餃子、何でも美味しいが、やはり何と言っても海産物である。回転寿司でさえも信じられないほどにクォリティが高い。福岡に来るまで、生のサバは食中毒が怖くて食べたことがなかったが、福岡で胡麻鯖を食べてその美味しさに魅了された。鯵の南蛮漬け、干物なんかも絶品である。

住民の気質が開放的でフレンドリーであるというのは、転勤族が多くて人の出入りが激しい土地柄も影響しているのであろう。僕のような「よそ者」もすぐに溶け込むことができる。子ども達も転校初日で友だちができていた。大陸からの玄関口という立地のせいか、昔から「来るものは拒まず」という土地柄、住民気質が根付いているのであろう。

空港へのアクセスが便利さに関しては、国内トップクラスであろう。地下鉄1本で博多駅、天神駅から空港にアクセスできる。福岡に勤務していた頃は、午前中は福岡で通常どおりに仕事をやった後、昼の飛行機で上京して、午後から東京で打ち合わせや会議をこなして、夕方の飛行機で再び福岡に戻るといったスケジュールが当たり前であった。羽田・伊丹のアクセスの不便さに比べたら雲泥の差である。

今はリモート勤務なども一般的になってきているので、東京や大阪に本社がある会社に勤務している人でも、福岡に住居を構えて、ふだんは在宅勤務をして、何か用事がある時だけ、飛行機または新幹線で本社に出社するというような働き方も、今ならば十分に可能であろう。住居費も東京や大阪に比べれば割安感がある。最初から定住しなくても、ワーケーションで短期滞在から始めてみて、気に入ったら定住を検討しても良いと思う。

そんなわけで、とてもとても大好きな福岡であるが、数少ない難点をあげるとするならば、大陸に近いせいか、黄砂が非常に多いのである。僕は花粉症持ちでもあり、埃やハウスダスト、犬猫の毛もNGなので、黄砂はもちろんダメである。福岡に住んでいた頃、年中、鼻づまりに悩まされていたし、季節の変わり目など、頭がどよーんと重くなり体調が思わしくないことがたまにあった。いま思えば、黄砂の影響だったのかもしれない。

あと、都心がコンパクトで狭いエリアに集中していて便利なのはたいへん良いのだが、どこに行っても知り合いに遭遇するのには閉口した。中州で飲んでいると、たいてい誰か顔見知りと会ってしまうのだ。不倫相手との密会デートなんか、福岡でやろうものならば、すぐにバレてしまうであろう。

やったことないから、知らんけど。


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