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お金がなくて頭抱える時『百鬼園随筆』で借金人生の可笑しみを知る

どうやったら百閒先生のようになれるのだろうか。
お金がなくても、悲壮感がない。

借金をする。
友人はもちろん、師である夏目漱石にも借りる。
借金を悪と思っていない。
お金が、あるところから、ないところに移動するだけ、と言わんばかりだ。

本書では、初めて高利貸しの家に借金しにいく様も、懇切丁寧に描写されている。
淡々とした状況描写の文章によって、読み手に緊張感と可笑しみを付与する。

百閒先生は、当時でも有名作家で、立派な教職という仕事ももっているのに、借金は雪だるま式に増えていく。
めちゃめちゃギャンブルするとか、そんなこともない。
本人も、友人も、だから借金のたちが悪いという。必死でなんとか終わらせようとも思ってないのではないか、とさえ思える。

かなり悲惨な目にもあっているようだが、長年借り続けた金貸しの息子さんが大きくなり、百閒先生の本を読んでいたりと、絶妙な関係が築かれたりもする。

お金がないって、本当につらいよ。しかし、その状況を、借金ネタで何本も良質なユーモア随筆を生み出している百閒先生を私は心底尊敬している。

お金は天国に持っていけないが、借金で書いた名随筆は、後世の私たちに、どんな状況でも、ささやかな可笑しみをと言っていると思いたい。
生身の人間は、お金がなくてもほんとに生き抜かなきゃ。

ちなみに、この本のカバーのイラストは、芥川龍之介です。百閒先生のお友達です。ふざけた絵でこちらも◎◎。


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