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【小説】 猫と飴  第14話

第14話

ポカポカと日差しが差し込むこの場所は幸せで、僕まで眠気に誘われる。


柔らかく風が吹いて、気持ち良さそうに寝転ぶ彼女からふわりとあの香りがした。

「また、昔つけてた香りのもの付けてる?」

「そう! ジャスミンの香りのオードトワレよ。よく分かったね」

「すごく久しぶりで、何だか落ち着く」

「色々な香りを試してみたくて使っていたけれど、結局この香りに最近戻したの」

「僕は、この香りが一番好きだよ」

「私も」

彼女は少女の様に笑った。


彼女は、いつもすごく良い香りがする。


今日の香りは特別で懐かしい、幸せの香りだ。


彼女は僕の膝でウトウトとして気持ちがよさそうだった。


けれど突然、ぱちっと目を開け、急に思い付いた様に僕に質問した。

「海外旅行するなら、どこに行きたい?」

「どうしたの? 突然」

「私、もっとあなたのやりたい事とか思っている事とか、行きたい場所とか知りたい!」

「ははっ。何それ。そうだね、行きたい場所かぁ。う〜ん……スペインかな」

「よし! じゃあ、今度は一緒にスペインに行こう!」

「一緒に?」

「うん! はい、約束」

彼女は寝転がったまま小指を立てて僕の前に出した。

僕は、笑ってしまいながら、同じ様に小指を出して彼女の指に絡ませた。


——ああ、大丈夫だ。僕はちゃんと彼女の視界に入っていた。
彼女はちゃんと僕の事も見てくれている。気にかけてくれている。

僕と彼女は見えない何かで、ちゃんと繋がっていたんだ。


end


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