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【小説】 紅(アカ) 別の世界とその続き 第15話

第15話

「アンナ! 遊びに来たの!」
妖艶な笑顔で人魚のアンナは答えた。
「また来てくれたのね。彼は?」
「ジャンよ。彼のお店のお手伝いをしているの」
「ああ、あの彼ね」
アンナは、とても意味深そうに頷いている。
アンナとリリーはとても仲が良さそうだった。
「どうも。よろしく」と僕が言うと、人魚のアンナは水中でゆっくりとお辞儀をして言った。
「よろしくね」
 
その日、僕らは日が暮れるまで海で過ごした。彼女達の会話は凄い。
とめどなく次から次へと新しい話題が上った。
僕はやっぱりその場に取り残されている様な感覚で、途中で一人海を眺めながらただぼんやりと過ごした。

彼女達の話は、地上の世界の話をリリーがして、海の奥底の沢山の生き物の話をアンナがしていた。

海の中の生き物は、先ほどの人面魚もいれば、ほとんど人間の様な姿で海底で暮らす人類魚もいるとの事だった。
海底にいる人魚も魚と人間の割合はまちまちらしい。

アンナは見た感じだと体の6割ぐらいが魚で、どちらかと言うと少しだけ魚寄りだ。

色鮮やかなサンゴや光るクラゲ、夢の様な光景を語るアンナの話に、リリーは夢中な様子だった。
 
 

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