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今はもう消えてしまった京都の本屋のはなし・1


少し販促活動にも飽きてきたので(早い)、今日は京都の本屋さんのはなしをします。
正確に言うと、なくなってしまった本屋さんのはなし。
なお、他の記事もあわせてマガジンにしましたので良かったらこちらも。



初回は、ジュンク堂

つい最近のニュースでも話題になった、四条沿いのジュンク堂閉店。
思えばいくつもそれなりの大型書店が消えるのを見てきたのに、それでもやっぱりショックでした。
これで京都からジュンク堂が消えてしまう、というのも本当に悲しく。
大好きなんだ、ジュンク。

ここはワンフロアの面積がそれ程広くなく、その為か背の高い書棚がぎっちりと並べられ、棚と棚の間の通路が狭かった。
それが大変に落ち着く。箱にみつしり座り込む猫の気持ち。

自分の身長より高い書棚の間を縫うように歩くと、森の中を散歩するような、海の底でゆらゆら揺れる大きな海草の間を進むような、時間なんて溶けて消えていく心地がしたものです。
きちんと本の詰め込まれた棚は、まぎれもない新刊書店なのに、どこか古い図書館に来たような気持ちになれた。

全部で5フロアあって、5階は参考書とか児童書だったのでそこまで上がることは殆どなかったけれど、1階1階上がっていって棚の景色が移り変わるのを眺めるのが本の塔を登るかのようだった。

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閉店前日に撮った写真。


思えば複数フロアにまたがる本屋が好きなのだけれど、京都のジュンク堂と言えば実のところ、こちらの店より旧BALビルに入っていた、河原町店の方によく通っておりました。
こちらは2005年にプレオープン(医学書とかの専門書店が先にあった)して、2006年に全面オープン。

それがもう、当時は京都市内ほぼ最大規模だったかな、とにかく大きくて。
京都駅前の近鉄に入っていた今は亡き旭屋書店も大きかったけど、それよりも広かった。
2005年に河原町の丸善が閉店していたので、これは嬉しかったものです。
こちらの2店についてもその内書きたい。


まずこの旧BALビルという建物が素敵でした。
ワンフロアがたいそう広く、天井が高く、ゆったりとした気持ちになれる。
エスカレーターの辺りの照明が妙に薄暗く、ふうっと安らぐ。

ジュンク堂はビルの上3フロアを占めていて、ぐんぐん上がっていくと自然と胸がわくわくしました(後に地階にコミックフロアが増床)。
ジュンクの品揃えは自分の好みに合っていて、狙った本は勿論、思いもよらぬ素敵な本も山とあって、いつも目移りする。
下の階は無印良品で、つい立ち寄ってはお菓子やら食器やら買ってしまう。罠だ。

無印はカフェも併設していて、本を買った後、ここでお茶をするか、奮発して1階のマリアージュフレールで飲むか、たいそう悩ましかったものであります。ここの喫茶室の高級感はただごとではなく、茶葉は買っても、お茶をすることは少なかったけれど。

洋書や専門書の品揃えが良かった為か、本屋のお客さんも、何だか頭が良さそうな、シックでお洒落な人達ばかりで、自分は浮きまくってました。でも平気。
ビル丸ごとが、当時の自分にとって「文化」の詰まった場所でした。


2013年、旧BALビルは取り壊されて建て替わり、15年に新生BALビルオープン。
無印のカフェはあるけどマリアージュフレールのカフェルームはなくなってしまった。悲しすぎることであります。
ジュンクはなくなって、丸善が復活。それはそれで嬉しいけれど、やはり自分にジャストフィットするのはジュンクの品揃えだなと行く度思います。

もう一度、あの棚の間を歩いてみたいな。
下の方が少し斜めに広がった、安定感のある濃茶の木の棚。
棚案内の若草色の紙。


ちなみに現役ジュンクで一番好きなのは大阪の堂島店。ここはもう本当に愛してます。
次点が神戸の三宮店。駅前ではなくセンター街の方。それ程多く行った訳ではないですが、思い出の多い店です。阪神の震災の後になくならなかったのが有り難く嬉しかった。


しかしこうして大手の本屋さんさえ消えていく中、街中の小さな書店がいつの間にかぽつぽつ消えていくのもとてもさみしい。
自転車で街を走っていてふっと、「あれっ、ない」とブレーキを踏んで愕然としたことも。


この昨今、自由に本屋も楽しめない日々が続くのは、身を切られる程辛いものでした。
そんな時期に自分の新刊が出てしまったことも含めて。

どうか、できるなら一店も失われることなく、灯りがともり続けますように。
こちら、各地の本屋さん・古書店さんが集まった試みです。
ぜひご一読ください。


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