今はもう消えてしまった京都の本屋のはなし・2
昨日の記事に引き続き、なくなってしまった京都の本屋のはなし。
消えた本屋記事、マガジンにまとめてみました。
今日は、旭屋書店です。
あさひや、と読みます。
ここはなくなってしまった事情が、入店していた京都近鉄百貨店が2007年に閉店する際に巻き込まれて、なのでいかにも気の毒でありました。普通にたくさんお客さんが入っていたので。
冒頭写真は、近鉄百貨店の最終日に撮ったものです。
最終日日。
オープンは2000年で、猛勢著しいJR京都伊勢丹に対抗すべくの全面改装の際に入店。
1000平方メートル級の、当時京都市内では最も広いお店だったように記憶します。
ここがもう、本当に楽しかった。
本屋さんに行く時は、本を買う時ですね。
あるいは特に目当てはないけど、本を見たい時。
けれどこのお店は、自分にとってある意味「散歩道」のような場所でした。
「本あさろうかなー」とさえ思っていない、ただ楽しくぶらぶらしたい、ちょっとくさくさした気持ちをぬぐいたい、そういう時に向かう場所。
特に仕事やプライベートで嫌なことがあった時、よく、何を買うでもなくただ店内を歩きまわったものでした。
フロアのちょうど真ん中辺りにエスカレーターがあって、そこからぐるりとお店を何周も何周も歩く。
この、果ての無い感覚がたまらなく好きだった。
何度まわってもまわっても、その度新しい風景が目に飛び込んできた。
百貨店の照明はどこまでもくっきりと明るく、本の表紙が目に鮮やかだった。
そうして何周もする内、いつの間にか気持ちがすっきり、晴れていることに気づくのだ。
品揃えは硬めの専門書からサブカル的コミック、たくさんの旅行本に素敵な選書のアート本と、実に幅広く、何度見ても飽きませんでした。
待ち合わせにもよく使った。ここなら相手がいくら遅刻しても全然平気です。
旭屋が入店した際、下の複数フロアが無印になったのも嬉しかった。やはりつい立ち寄ってはお菓子やら食器やら買ってしまう。罠だ。
無印や旭屋が入店した改装の後は特に、この百貨店自体が本当に好きで日参してました。
当時の自分は断然、伊勢丹よりも近鉄派だったのです。
本屋だけでなく、百貨店にも思い出がたくさんある。
同じ物産展をやっても伊勢丹とは全然お客さんの入りが違って、ある時仕事帰りに北海道物産展に行ったら客が自分しかいなかったことも。
もう、すべての店から猛烈に声をかけられて大緊張した。人生最大のモテ期だった。
晩御飯用にスモークサーモンとクリームチーズのベーグルサンドを買ったら、「ありがとう、サービスするから!」とこれでもかこれでもかと具材を入れてくれた。あれが今でも、人生で食べた一番美味しいベーグルサンドだ。
閉店した時は、悲しかったなあ。
仕事帰りに意味なく立ち寄ってその日の自分をちょっとだけリセットできる、そういう場所でした。
誇張一切なく、ちょっと泣いた。
旭屋と言えば、大阪梅田の旭屋書店本店がなくなった時もショックでした。
ここも本屋自体の問題でなく、ビルの老朽化に伴う建て替えで、「建て替わったら復活する」と聞いていたのに結局消えてしまいました。どうも家賃が高くて断念したとのこと。
ここはビルが丸ごと本屋で、ワンフロアはそれ程広くはないのだけれど、各階に専門性がみっちり詰まった感じがとても好きでした。
横にやまたけ、てお肉屋さんのビルがあってね。今はなくなってしまいましたが、昔はレストランが併設していて、ランチが格安でたいそう美味しかった。
ふしぎだな、自分はあまり記憶力が良くないと自負(←間違った使い方)しているのですが、昨日も今日も、こうしていると次から次へといろいろに思い出します。
でも本当は思い出ではなく、愛したすべての場所が消えずに残っていてほしい。
そんなことは不可能だと判ってはいるけれど。
せめて今ある場所がひとつでも生き続けますように。
昨日に引き続き、またこちらの取り組みを紹介します。
ぜひご一読ください。