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【読書】3月に読んだ本 11冊

3月後半から4月頭にかけて、実家に帰っていたり両親が遊びにきていたりと慌ただしく過ごしていました。
先週から日常に戻ったものの、外は桜が咲き始め、なんか浮き足立ってます。毎日お花見に忙しいよ。



め生える / 高瀬隼子

大好きな高瀬隼子さんの新刊。
今作は、根こそぎ髪が抜けてしまう感染症が流行した世界でのルッキズムのお話。
ハゲしかいない世界になったら、ハゲで悩んでいた人の悩みは解消されるが、もう2度と髪の毛がある世界に戻りませんようにと願わない日はない。ごく一部の髪が抜けなかった人は髪があることが重荷になる。ただ髪があるかないかだけなのに、どうしてこんなに人は悩まないといけないんだろうね。テレビではいろんなことがNGになってきたけど、ハゲネタだけは根強く生き残っているしね。


夫よ、死んでくれないか / 丸山正樹

夫に不満のある女が「死んでくれないかな」って願うのだけど、その不満が死を願うほどまで切迫してないんじゃないかね?と感じてしまった。
大学の同級生3人組が何かと集まっては夫の愚痴ばかり言うシーンがたくさん出てくるのだけど、めちゃくちゃ棚上げ案件で、特に麻矢はもう、あんたも大概やで、と言いたくなった。が、まあ誰しも自分を高い棚に上げるものなんだけどね……。こういうのって客観的に見たらこんな不細工なことなんだなって我が身を顧みる。
たぶん主要3人が人間的に魅力的じゃなくて好きになれなかったのが、入り込めなかった原因かな〜。


川のほとりに立つ者は / 寺地はるな

何十年も前が舞台でもないのに、これほどまでにディスレクシア(発達性読み書き障がい)って学校に浸透していないものなの?と不安に。だとしたら先生側の罪が重すぎるんだけど…!と絶望したお話だった。
あと息子のディスレクシアを「頭が悪い」とほったらかしにした母親の罪ももっと問われてほしい。
今回の主人公清瀬は、恵まれた環境で育った女性。だからこそ他人に対して無意識に傲慢な態度を取ってしまう節があるのだけど、清瀬こそ大多数の人間で、清瀬に対する「傲慢な女だな」と思う気持ちがブーメランで返ってきて今自分にぶっ刺さっている。いてて。


照子と瑠衣 / 井上荒野

夫のモラハラに嫌気がさしていた照子は、ある日老人マンションから逃げて来た瑠衣と共に第二の人生を始めようと2人で逃避行する。ともに70歳。まだまだ若い。
ふたりはときに大胆でときに繊細で、ときにいい加減。お金や体の心配はあるけれど、ふたりでいれば怖くない。お互いがお互いのために一生懸命になって、笑って泣いて、最後まで爽快で痛快な物語だった。


歌舞伎座の怪紳士 / 近藤史恵

「好きだと思うことは、誰かに否定されるようなことではない」ってなんだか励まされる。チケットを買い、ちょっとおしゃれをして劇場に足を運ぶ楽しみが生活を彩るってことをわたしも知ってる。そのために頑張って働くっていう動機だって、ちゃんとした働く理由だと思う。息苦しい生活の中で、そういう娯楽が心の洗濯をしてくれる。もっともっと、そういう娯楽が守られなければならないんだよねぇ、本当は。心の健やかさのためにも。


あの日、君が見たものは / まさきとしか

時を経て無関係に思える事件に繋がりがあることが分かっていくミステリ小説の中でも、抜群によい部類に入ると思った。息子が事故で死に、壊れていく家族が痛々しかった。何より今生きている姉の沙良が不憫で…。最後の回想で、ああ、そうなのか…ってぐっと心が重くなった。人間なんて自分が見えている一面だけがその人そのものなはずはないから、どれだけ知りたいと思っても、解き明かされない一面があって普通なんだよな。


ホテル・カイザリン / 近藤史恵

ホテルにまつわる短編集かと思いきやそうではなく、いろんな物語が合わさった1冊。不穏なお話から、爽やかなものまで色とりどり。近藤さんの書く海外を舞台にしたお話が好きなので「金色の風」「迷宮の松露」はワクワクした。


キッチン常夜灯 / 長月天音

ビストロ「キッチン常夜灯」は、裏路地で夜の9時から朝の7時までオープンしているビストロ。お店には様々な夜を過ごす人たちが訪れる。オシャレ版、深夜食堂みたいな感じ。お料理が全部美味しそうだけど、朝の味噌汁とおにぎりがいちばん食欲そそられた。レストランが舞台の物語を読むといつも、こんな行きつけのお店がほしいって思う。眠れない、帰れない、帰りたくない、誰かと話したいって人たちの止まり木のような場所、いいなー。


レッドクローバー / まさきとしか

親から愛されることなく、蔑ろにされ、何度も何度も心を殺されてきた子どもたちが歪みながら大人になっていくことを誰が責められよう。みんなかわいそうで読みながら苦しくなった。視点と時系列がコロコロ変わり、語られることはそれぞれのフィルターを通しているので偏見や思い込みも含まれていて、事実が二転三転。ちょびちょび読みしていると訳がわからなくなってしまったので、一気読みしたらよかったとちょっと後悔。


アーモンド / ソン・ウォンピョン

今年は韓国文学をいろいろ読んでみたくて、まず手始めに選んだのは、2020年の本屋大賞翻訳部門で1位となった「アーモンド」。
物語は失感情症であるユンジュの一人称で進み、事実が淡々とつづられていくのでとても読みやすい。ただユンジェには感情がないとはいえ、思考はある。感情に左右されない思考はとても理路整然としていて、人間の見て見ぬふりをこんな風(↓)に言われるとその通り過ぎて、ちょっと今から猛省してくる。

「遠ければ遠いでできることはないと言って背を向け、近ければ近いで恐怖と不安があまりにも大きいと言って誰も立ち上がらなかった。ほとんどの人が、感じても行動せず、共感すると言いながら簡単に忘れた。
感じる、共感すると言うけれど、僕が思うにらそれは本物ではなかった。」


名古屋駅西 喫茶ユトリロ 龍くんは食べながら謎を解く / 太田忠司

シリーズ3巻目。移動のおともに選んだ。龍が主人公というより、各話女の子が語り手となりユトリロに謎を持ち込み、龍が謎を解く…という構成。基本的に悪い人が出てこなくて安心して読めるのがいい。そろそろ龍のモヤモヤが晴れるか?といったところで終了。


書影の記録を残したくて本のインスタ始めました▼


最後まで読んでいただきありがとうございます。よければまた、遊びに来てください。