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00. 『茶のない茶会』取扱説明書

▶テキストによる実験妄想「オンライン茶会」はじめます

もう2年前くらいになるだろうか。新型コロナウイルス対策による一回目の非常事態宣言が明けた頃だったと思う。「オンライン茶会」なるものが現れた。

非常事態宣言発令により、店が閉まり、イベントが延期や中止となるなかで、茶道のお稽古や茶会も、一斉になくなった。お茶は、締め切った小さな部屋のなかで、人々が肩を寄せ合い、器を回し飲みする。“三密必須”であることから、コロナによる“絶滅危惧種”などとも囁かれていた。

そんななか、対策として様々な物事がオンライン化していくなかで、お茶も、オンライン化の試みがあちこちで図られていった。

よくあった「オンライン茶会」では、ネットを介して亭主が茶を点てる映像が配信される。客は、パソコン画面を見ながら菓子を食べ、タイミングを見計らって自身で茶を点て、一服する。Zoomなどのweb会議サービスを使い、世界中どこからでも繋がることができ、初心者でも周囲を気にせず参加できるからよい、という声もあったようだ。

だけど。
なんだか、ものすごく……

「ものたりない」

なんて、思ってしまった。

何か、とても「大切なもの」が、抜け落ちてしまっているように見えた。

では、一体何がものたりないのだろう。
私は、茶会に何を求めていたのだろうか。

もちろん、茶や菓子を食すことは、大好きだ。
茶会の楽しみの一つでもある。

だけど私が好きだったのは、茶会の「空気」なのではないか。
静かさや、心地よい緊張感、そこで行われている場をあじわうこと。

オンラインでは、その「空気」が、ものすごく伝わりにくい。

オンライン茶会は、「できないなら、どうしたらよいか」を模索した結果だ。色んな人が色々なことを模索していた。
そこに、本当のお茶らしさがあるように私は感じた。

「なくなる」ことで、初めて気がつくことはきっと沢山ある。
お茶の世界にあたりまえにあると思っていた○○を失くしてみる。
その結果、お茶が何を大切にしてきたかのか、見えてくるのではないか。

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そんな実践的な試みとして、テキストによる「〇〇のない茶会」を行います。

もちろん、これは「茶会ではない」と思う方も沢山いらっしゃるでしょう。
でも、その「ちがう」を突き詰めれば、そこから逆に、茶に何を求めていたのかが見えてくる。これは私の茶の師匠の教えでもあります。

「〇〇のない茶会」は、私なりの「オンライン茶会」の一つの模索の結果です。すでに巷には「オフライン・リアル茶会」が復活していて、オンライン茶会は影を潜めたように感じます。みな、やっぱり物足りなかったのかもしれません。でも「やっぱり良くなかった」ではなく、オンラインの良さだって沢山あったはず。天邪鬼な私は、そのどちらでもあり、どちらでもないものができるのではないか、と妄想を膨らませました。そんな「試作茶会」です。お楽しみいただければ幸いです。

それでは。
まずはじめに「茶」のない茶会を“開催”いたします――。

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