見出し画像

大導寺信輔の反省【文フリ振り返り】

 こんにちは。
 就活という人生最大のクソイベントに戦々恐々としている橘です。

 ものすごく今更な話ですが、今回の記事は去年の文フリ東京35の振り返りです。


 昨年、2022年11月20日は文学フリマ東京35の開催日でした。わたくし橘はサークル「清香舎」として初出展を果たし、てんやわんやの日々を過ごしました。
 (清香舎や自費出版については下記の記事もご参照ください。)


また、現在BOOTHにて出展作の販売をしております。
合わせてご覧いただけると幸いです。


 当日の5時間はとにかくあっという間の出来事で、その後も大学院の発表やらレポートやらで忙しく、なかなか実のある振り返りが自分の中でできていませんでした。そこで学期が終わったしばらく経った今、まとめの記事をあげようと思いました(下書きを放置したまま今に至ってしまったわけではありませんよ、ええ、違います)。

 個人的な振り返りがメインの記事ですが、そこから押し広げて普遍的に活かせる点もあるかと思います。今後文学フリマに参加される方の参考に少しでもなれば幸いです。

 ただ、書き始めたら1万字を超えるやたらと長ったらしい文章になってしまったので、太字の部分をかいつまんで読んでいただければ十分かと思われます。

 さて、文学フリマを一言で表すとすれば、【アマチュアが本を売るイベント】といったところでしょうか。そこで振り返るポイントもこの観点に則ってみようと思います。

1、自分のことはだれも知らない

 文学フリマの参加者の多くは素人、つまりアマチュアの方が大半です。
 アマチュアとプロで異なる点は何か。
 もちろん文章の巧拙はあるでしょうが、1番は「知名度」と「信頼度」だと思います。本を購入する際に「あの人が書いたから読む」「あの人の作品に外れはない」といった知名度や信頼度が購買理由になることは往々にしてあると思います。なので、文学フリマにおいて自身の作品を買ってもらうには知名度信頼度を上げる必要があります。

 では、知名度、つまり認知度をあげるにはどうすればいいか。
 まず第一に挙げられるのが、SNSなどのインターネット上の繋がりです。
 アマチュアとは言え、誰にも認知されていないという方は少ないと思います。Twitterやnoteで活動していれば少なからぬフォロワーに認知されているはずです。そういった方々が「あの人が今度イベントに出るらしいから行ってみよう」と感じてくれれば購買に繋がります。文フリ公式が推奨しているように、Twitterなどでの告知はかなり重要なアクションなのでしょう。

 要はTwitter・noteなどでの固定ファンの確保が我々アマチュアには必要不可欠です。逆に言えばそういったSNS上のつながりがなければ、自分は「誰にも知られぬ一素人」に過ぎないわけです。

 自分はどうだったかというと、そもそもTwitterもnoteもそこまでフォロワーが多くなかったので、イベント間近に告知することはもちろんのこと、普段からもっと精力的に活動して、フォロワーを増やしておけば良かったなぁと反省しました。

 余談ですが、開始直後にもかかわらずブースに列ができている出展者がいて、後で調べてみたところプロの作家さんのようでした。やはり知名度があると集客力に圧倒的な差があると感じました。


 SNS上の繋がりがない(あるいは少ない)人にとって、文学フリマ公式のWebカタログは力強いツールの一つです。

弊サークルのWebカタログ

 これは、キーワードやカテゴリなどでソートできる公式のWebカタログです。各団体のページごとに「気になる」と「訪問済」のボタンがあり、お客さんの動向の統計を取るにはもってこいの機能です。
 当日の朝に確認したところ、自分のカタログに押されていた「気になる」数は4つでした。この4という数字は買おうか悩んでいる、もしくはブースに足を運んでみようかなと思っている人の数です。当然このボタンを押した人全員が買ってくれるわけではありませんから、あくまで「買ってくれるかもしれない」可能性の数でしかありません。

 文学フリマは今回出展者・来場者ともに歴代最多を更新した、規模の大きいイベントです。来場者の方も何の準備もなしに来られる人の方が少ないと思います。事前にwebカタログに目を通しておいて、いくつかの当たりをつけておかなければお目当ての商品にはいきつけません(もちろん当日の偶然で運命的な本との出会いを楽しみにしている方もたくさんいらっしゃると思います)。
 知名度に左右されること、イベントの規模が大きいこと、などを考えるとwebカタログを前日までに見てもらわないと中々購買層の確保には繋がらないと感じました

 自分の場合、後述するように入稿がギリギリになってしまったので、カタログ掲載もかなり直前のタイミングだったと思います。それでも「気になる」が4つもついていたことは大変ありがたいことです。


 次に「信頼度」の築き方ですが、これはもうとにかく作品の品質を上げていくしかないと思います。noteなどの文章を書く機会、そして見てもらう機会を増やして、自分の文章のスタイルを周知する活動を地道に続けていくことが、なによりの鍛錬でしょう(と言いつつ自分自身はそれらの活動が全然出来ていませんが……)。

 出展者同士のコネクションも大事かなと思っています。Twitter上でのつながりがあればリツイートなどの拡散をしてもらえるかもしれません(最近Twitterの先行きがやや不安なので、Twitter以外でのつながりも必要かも?)。なにより忌憚のない感想や指摘がもらえる同志の存在は、とかく独りよがりになりがちな創作活動においては非常に重要でしょう

2、「モノ」としての本

 次に、販売する商品が「本」であることに注目してみましょう。

 皆さんは本を買う時に試し読みはしますか?
 書店が買おうが、ネットで買おうが、まず試し読みをしてみてから買うかどうか決める方は多いと思います。以前の文フリには各出展者の見本誌が置けるコーナーがあったのですが、コロナの影響でここ最近の文フリではそのコーナーが設置されていません。ですので、試し読みが気軽にできる環境は各出展者側で用意しなければなりません

 自分の場合、まずnoteに試し読み用の本文を一部抜粋して事前に掲載しました。また、ブースにも見本誌を置いて当日その場で立ち読みできるようにしました。ただこれでも十分ではなかったと反省しています。
 まず、見本誌を試し読みする場合、大抵は頭から読んでいくと思います。なので、冒頭もしくは前半部分にフックとなるような箇所がないと試し読みで注意を惹くことができません

  今回販売した作品のうち、詩歌集の『瑠璃の花』は作詠した時系列順に配列し、前半には古語調の短歌が配置されていました。頭からパラパラめくっていくと、そういった読み慣れない古語で書かれた短歌だけを目にすることになってしまい、結果的に嫌厭されてしまったのかなと思います。

今回出展した作品の見本誌
詩歌集『瑠璃の花』の冒頭近く

(あまり大きな反省点ではありませんが。今回メインの作品のジャンルが「短編集」だったので、もう一個の作品を「短歌集」と表記すると読み分けしづらいかなと思い、詩が1篇も収録されていないのに「詩歌集」と表記したのですが、これも失敗だったなと少し思います。牛乳しか入っていないのに「コーヒー飲料」と表記しているようなものです)。

 また、当日はQRコードから先述のnoteの抜粋を試し読みできるようにしたのですが、なんだかんだでQRコードって手間のかかる方法なのかなと思います。スマホを取り出さなきゃいけないし、他のブースでもらったビラなどで両手が埋まっていたらできませんし、出展者の目の前でQRコードを読み込むのに気まずく感じる人もいるかもしれません。

 ただブースにQRコードを掲示するのではなく、ビラのような無料配布物に記載すればまた違ったのかもしれません。とにかく試し読みの方法はなんぼあってもいいですから、来場者のニーズに合わせて複数の方法で用意しておくのがいいのかもしれません
 例えば、ビラに簡単なあらすじを掲載した上で、QRコードも添付しておくなど。他のブースでは、試し読み用に抜き刷りした冊子を用意しているところもありました。


 さて、このように試し読みの方法をいくつか用意したとして、結局のところ文学フリマで販売される本のほとんどは紙媒体の本です。
 だからこそ、その「紙の本」、質量を持った「モノ」としての本にこだわりをもっと感じていたいと自分は思っています。

 本を手にしたときの重さ、紙の感触、ページを捲るときの音、年代物の本の日焼けの匂いと色……、「紙の本」の魅力は数多くの読者家によって飽きるほど語られてきましたが、そうした魅力を生かした活動をしていきたいのです。

 現在BOOTHで出展作のネット販売を行なっていますが、PDFなどでの電子媒体の販売は全く考えていません。時代錯誤かもしれませんが、やはり自分の中では紙の本へのこだわりを貫き通したいという気持ちが大きいです。

 以前自費出版に向けてnoteの記事でやってみたいことをいくつか挙げましたが、今回実現できたのは一部に過ぎません。今後は手製本などのアマチュア字書きだからこそできることにも挑戦していきたいと思います。

3、Amazonみたいな売り方

 「素人が本を売る」行為の逆は、「プロが本を売る」行為、すなわち本屋です。ここでは、文フリとは対照的な存在である本屋を引き合いに、どう本を売っていくのが良いかを考えていきたいと思います。

 自分がよく行く書店が紀伊国屋書店の新宿本店なので、そこをイメージして考えてみました。文フリ以上にありとあらゆる本が並ぶその規模感は、一市町村の図書館よりも多いのではと思わせるほどです。しかしながらその中からお客さんは目当ての本を見つけています。作家側から考えれば、数多くのライバルに勝って自分の作品を読者に見つけてもらえているわけです。

 もちろんその要因として、検索システムやジャンルごとのスペース分けなど、店舗の構造上の要素が大部分を締めていることは言わずもがなです。

 しかしながら、もっとミクロの視点で見てみると、本の置き方や帯やポップなど、本の周りにある「空間」が大きなはたらきをしているように思えます。平積みしてあるのか、本棚に並べられているのか、或いはブックスタンドで斜めに飾ってあるのか。帯の有無、そのデザイン。ポップの存在とその視認性。あらゆる付帯物が「購書空間」を構成しているわけです

 この後の「イベント」の項目でも触れますが、各団体に割り当てられたブースを最大限に生かすためには、こういった工夫が必要不可欠になることでしょう。ただ本を置くだけでは、売上に限度があります。90cm×45cmの限られたスペースをどう魅力的な「購書空間」に仕立て上げるのか、そこが成功の分水嶺だと感じました。

 自分の場合、事前にブースの寸法は認識していましたが、実際に設営してみると存外狭く感じ、思ったとおりにレイアウトを組むことが出来ませんでした。初めての出展だったので、同じく初出展だった方のブログ記事なども参考に設営計画をしていたのですが、その場に行かないとわからないことも多く、いい経験になりました。(参照したサイトのURLを貼ろうと思ったのですが、今確認したらサイトごと見れなくなっていました……orz)

当日の弊ブースの様子

 挨拶回りの際に、他のブースもちらりちらりと拝見したのですが、どこも工夫を凝らしたブース構成になっており、もう少し熟考すれば良かったと反省しています。出展者として参加する前に一般参加者として、色々とブースを見て回って「売り方」や「購書空間」の構成について偵察・下調べしておけば良かったと思います


 また、出版社や書店のキャンペーンで本を買うと無料の付録がついたり、栞がもらえたりすることがあります。そういったお得感も購買意欲を高める効果的な方法だと思います

 自分の場合、まず作品の内容をイメージしたポストカードを付録として販売しました。また、今回は2冊新刊があったので、2冊セットで購入した方には100円引きにするなど、できる限りお得感を出す試みをしました。が、今振り返るとそれでもやや割高な料金設定になってしまっていたのかなぁとも思います(BOOTHでの販売では値下げしました)。

付録のポストカード

 安くする工夫も重要ですが、「無料」であることの方が人は惹かれるのではないかと思います。ですので、「割引しますよ」というより、「無料で●●がついてきますよ(もらえますよ)」と宣伝した方が効果的なのかもしれません。栞でも小冊子でもなんでもそういう無料配布物があると、購入したお客さんからすればお得に感じられるし、それだけもらったお客さんには最低限認知はしてもらえるので、余裕があれば販売する冊子以外にも力を入れるといいのかもしれません。


 リアルの書店を参考に述べてきましたが、更にそれとは対照的な存在、つまりオンライン書店についても考えてみましょう。
 1番有名な有名なオンライン書店といえば、Amazonでしょうか。今でこそ世界最大級のオンラインストアとして著名ですが、最初期の事業はオンライン書店から始まりました。

 そんなAmazonの売り方の特徴として、「あなたへのおすすめ」機能があります。これは閲覧履歴や購入履歴から類推して、商品をおすすめしてくれる機能です(このシステムの一番最初がAmazonなのかはわかりませんが、自分の中でAmazonの印象が強いので、以下その体で話を進めます)。

 さて、文フリ会場ではジャンル別にブースが配置されています。ですので、純文学が目当ての人はAのブースに、ファンタジーが読みたい人はHのブースに、といった具合にある程度は自分の好みの作品に出会いやすい構造になっています。

 しかしながら、一言に「純文学」や「ファンタジー」とくくっても、その中にはもっと細分化された数多くの作風が存在します。芥川が好きなのか、三島が好きなのか、多和田が好きなのか、同じ純文学好きでも千差万別です。

 一方で作者側の視点に立ってみると、大抵影響を受けた作家が何人かいると思います。テクスト(=text、織物)の言葉どおり、いくつもの作品や作家の影響をさまざまに織り上げたものが、自分自身の作品になるわけです(自分の場合、新海誠や宮沢賢治あたりの影響を受けていると自覚しています)。言い換えるなら、読者にも作者にも好きな作家や文体が存在しているわけで、そのベン図の重なりをこちら側から発信できれば、読者と上手くマッチングできるのではないのでしょうか

 そこで考えられるのが、先のAmazon式のおすすめです。つまり、自分の文体の特徴に似ている作家(≒影響を受けた作家)をキーワードとして、「こんな作家が好きなら、私の作品も好きかも」のような形で宣伝する方法です。

 他人の作品を褒める際に「○○に似てる」とか「●●っぽい」と言うのは失礼になるかもしれない、とどこかで見た覚えがあるのですが、今回の場合自分の作品をカテゴライズするだけなので問題はないでしょう。むしろ自分の場合、作品を読んでもらって「新海誠好きでしょ」とか「新海誠っぽいね」と言われたら普通に嬉しいと思うので。

 具体的な作品名や作家の名前を出す際には、先方に失礼のないように気をつけなければなりませんが、自身の作品の内容を端的に表すのに固有名詞を用いるのは一つの手だと思います。

(二次創作の場合であれば、このようなまどろっこしさはないのかもしれません。どの作品のどのキャラクターが好きなのかなど、読者が求めている要素がが一次創作に比べて前面に出ているからです。)

4、イベントという非日常

 この項では、実際の当日の行動を振り返りながら、前項までに収まりきらなかった細かい反省点を整理していこうと思います。

 まず、申込みの段階で椅子を2つ申請しておいて良かったなと思います。当日売り子さんを手配するかどうかは決めていなかったのですが、どちらにせよあった方が便利だろうととりあえず椅子2つを申請しました。結局、売り子さんは手配せず、全て一人でブースを切り盛りしていたのですが、作業スペースや荷物置きに余った椅子が重宝されました。もちろん、椅子2つを申請すると出店料が割高になるのですが、当日の作業のしやすさなどを考えれば、むしろお得かなと思います。

 そもそも売り子がいるかどうかという問題ですが、ブースでの仕事量から言えば基本一人で捌き切れるぐらいしかないので、そこまで必要ではありません(人気や大きなサークルを除く)。ただ「自分が席を外しているときの代理」として役割を考えると売り子の存在は大きいです。

 自分の場合、開催時間の途中にあいさつ回りや食事休憩、他のブースの商品の物色で1時間ほど離席したのですが、その間にもお客さんが来ていたようでした(戻った際に隣のブースの方が教えて下さった)。ブースが無人になる時間を作りたくない人は必然的に売り子が必要になるでしょう。

 初めてのことは人間誰しも上手くいかないものですから、会場には早めに入って様々なトラブルに対応できるよう構えていったほうがいいでしょう。
 自分の場合、会場入りがギリギリになってしまったので、準備がかなり慌ただしくなってしまいました。一般参加者として流通センターに来場したことがあったので、まだ道筋や乗り換えを把握できていましたが、全くの初参加・初来場の方は要注意だと思います。

 ブースでの過ごし方について、通行人に話しかけるべきか否か。
 自分の場合、スーパーコミュニケーション苦手くんなので、話しかけることはしません(できません)でした。ただ、通行人には難しくても、ためし読みしている人ぐらいには声をかけるべきだったなと反省しています。せっかく自分の作品に興味を持ちかけている人がいるのですから、購入してもらえるよう、「こういう作品なんですよ」などの簡単な説明をして然るべきでした

 とあるブログの記事には、立ってお客さんと同じ視線にいた方がいいと書いてあったのですが、自分は必ずしもその限りでないと思います。5時間も立ちっぱなしは単純に苦痛ですから、試し読みなどでブースにお客さんが近づいてくれたら立つぐらいの気持ちでいいんじゃないでしょうか。ただ、お会計の際には自分も立っていました。


 予算の都合と締め切りの関係でビラを用意することが出来なかったのですが、先に述べたようにビラのような無料配布物は必要だろうなと思います。

 自分の場合、なんとかショップカードは用意できたのですが、それだとビラほどの情報量が詰め込めませんでした。そもそも当日ショップカード自体もそんなに捌けなかったので、もう少し他の方法を模索する必要があるのかもしれません。

ショップカード(「しこくてんれい」に印刷)

 それとこれは人によるのでしょうが、両脇のブースの人とは仲良くなっておくと安心感が生まれるかなと思いました。
 最初の項でも話しましたが、創作は一人でできるようでなかなか独りではできないものです。また、大きな会場にたった一人ぼっちでいることも相当心細い状況です。せっかく隣になった方には今後交流するかはさておき挨拶しておくことが吉でしょう。最低限、机を共有する隣の方とは簡単にでも挨拶すべきでしたね(自分はまたしてもスーパーコミュニケーション苦手くんの力を発揮して、両隣のブースの方とは全く交流できませんでした)。

 文フリは、申込みの項目で「隣接設置」の申請ができます。もし別の団体として参加しているが、知り合いだったり、執筆に関わりがあったりする団体がある場合はこの機能を利用するのも手かもしれません。

 とにもかくにも、創作物の即売会イベントという「非日常」の空気感は圧倒的なもので、ただただそれに飲み込まれないように必死にもがくばかりでした。前もって情報収集したり、家で一度ブースのレイアウトを組んでみたりと、事前準備が重要なのだと身にしみてわかりました。

締め切りを守ろう

 ポイントは4つといいながら、もう一点、作品を完成させるまでの過程を最後に振り返りたいと思います。

 まずなんと言っても、スケジュール管理がダメダメだったことが最大の反省点です。当初の予定では、11月頭には印刷まで終わらせている予定でしたが、延期に次ぐ延期を繰り返し、最終的な入稿が文フリ開催の前週水曜日になり、前日にようやく完成品が届く有様でした。さらに直前の入稿になったので、注文料金も割高になり、予算からかなり足が出てしまいました。

 連日徹夜が続き、今文章を書いているのが現実なのか夢なのかも曖昧な日々を過ごしました。加えて大学院の発表の準備もあったので、11月の半分ぐらいは体調を崩してしまいました。

締め切り直前期の体の構成要素

 締め切りがギリギリになってしまった原因の一つとしては、気持ちがある程度乗ってこないと書けないという遅筆気質にあると思います。映画を観た後や本を読んだ後は、妙な気持ちの高ぶりがあって「よっしゃ書いてやるぞ!」と筆が進みがちなのですがそれも長続きはせず、結局たらたらとしたスピードでしか書き進められません。

 そういった鑑賞行為や人との会話など、創作意欲が湧き上がる行為を継続しなければならないと感じています。自分の場合常に心を揺さぶる必要があるのです。

 その一方で、最終的には書き上げることができたわけですから、なんだかんだで完成に必要なのは、締め切りという「この日までに完成させないとヤバい期限」の存在なのでしょう。ただ漫然とパソコンに向き合うのではなく、最終到達点を明確にイメージすることが筆を進めるコツなのかもしれません。


 今回初めての自費出版ということもあって、入稿の段階でいくつかトラブルがありました。データの形式やサイズが違ったり印刷できないデザインになっていたりと、何回も確認のメールや電話をいただきました。お手数おかけした各印刷所には大変申し訳ないです。わからないことや不安なことは迷わず、先方に問い合わせた方がいいです。当たり前ですが

 印刷紙のサンプルや確認用の冊子を刷る時間がなかったので、実際に手元に完成品が来てようやく質感を把握するありさまでした。「紙の本」であることに重点を置こうと思っていた割には、その思いを存分に出し切ることができなかったのです。

 例えば、フォントは文章を読む際に大きく印象を左右する要素ですが、パソコン上で見るのと、実際に印刷された紙上で見るのとでは、感じ方が異なります。サークル活動で執筆していた際は一度紙に印刷してから推敲や校正をしていたのですが、今回は時間がなくすべてパソコン上で作業を終わらせてしまったのがよくありませんでした。

 また、用紙について、サンプルなしで選んだので、実際に手にとって見ると思っていたとおりの質感でない仕上がりになってしまっていました。詩歌集の表紙は「バルキーボール 23.5kg 青」を使用したのですが、触ってみると想像以上に固く、ページを捲りづらいという支障が発生してしまいました。ちゃんとした本に仕立て上げるには、まず前もって用紙のサンプルを取り寄せるなどして、自分の手で触ってみて紙の質感を見極める必要があります

詩歌集の表紙(カバーを掛けていない状態)

最後に

 文フリの振り返りをしている他の方のnoteを見てみると、初出展にして数十部完売している方がちらほらいて、自分はまだまだだなという思いでいっぱいです(上手くいっている人と比べても劣等感が湧き上がるだけで意味はないのですが)。

 こうして長々と振り返ってきましたが、思えば当たり前のことを今更にただ垂れ流しただけかもしれません。もしこの文章が今後文フリに参加しようとしている方の参考に少しでもなれば嬉しい限りです。

 とにもかくにも、4年前からずっと公言していた文フリ出展はこうして無事に達成することができました。今後は定期的に文フリに出展するとともに、文学賞の応募などの新たな目標を設定し、それに向かって邁進していきたいと思います。
 一人でも多くの方に私の作品を読んでいただけるよう、そして、少しでも読んだ甲斐があったと感じていただけるよう、努力を重ねてまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 それでは、今日はこのあたりで。さようなら。

2023年3月11日追記:
今回の記事の補遺を挙げました。合せてご参照ください。


追伸. ここ数回の記事のタイトルが小説や楽曲の題名のもじりになっているので、今後も(出来うる範囲で)このルールで更新していこうと思います。内容が分かりづらいのが欠点ですが……。


【今日のタイトル元ネタ】
『大導寺信輔の半生』(だいどうじしんすけのはんせい)は、芥川龍之介の短編小説。1925年(大正14年)1月に『中央公論』にて発表されたが、未完となった。芥川の晩年の作品で、年齢を重ねたことによって作品に厚みを与えたと菊池寛に評価された。(Wikipediaより)。
『さよなら絶望先生』112話の元ネタにもなっている。


この記事が参加している募集

#文学フリマ

11,752件