長男2回目 8
中3最後の授業
通常の授業が始まると、やはり長男は教室に入れない日々が続いた。
週1~2回、2~3時間、保健室か学習室に登校していた。
時はコロナ禍。
私もリモートで仕事をする機会が増えていた。
朝長男を連れていき、長男が疲れてくるまでの間、ショッピングモールの立体駐車場の中で仕事をする・・・なんてことを、何回やっただろう。
まるで張り込み中の警官みたい(笑)
夏場は絶対日陰に車を停め、冬場は屋上に停めた。
(おしゃれなカフェにでも行けばよかったのだが、今思えば心身ともに疲れていたのだろう、車から動くのもしんどかった)
中1、2の担任だったU先生と、卒業間際に話す機会があった。私はなんせU先生の顔を見るだけで泣くという状態になっていた。先生からするとご迷惑だっただろうな・・・💦
長男はU先生の理科の授業が大好きだった。
「U先生の授業、長男もほんとは最後に受けたかったと思います」
と私が話すと、U先生も一瞬泣きそうな表情をされた後、にっこり笑って
「学習室に授業行きます!卒業までに1回は必ず!」
とおっしゃった。
その2日後、長男が学校から出てきて車で拾うと、
「さっきさ、U先生が化学教えにきてくれたよ」と微笑んでいた。
「よかったね!やっぱりわかりやすかった?」と聞くと
「やっぱすげーわ。ちょっとわかった」と嬉しそう。
自宅に向かう車の中、長男は寝ていた。
私は運転しながら、嬉しくて、ありがたくて泣いていた。
卒業式
長男に「とりあえず先生にお礼言いに行こ」と言って、学校に出向いた。
私の勝手な思いに長男は付き合ってくれていたのだろう。今思えばちょっと強引だった。
中3担任のT先生は
「式だけでも出たら?」
「高校も無事進学できることになったんだから、気にすることない」
と、何度も口説いてくださったが、長男は頑として拒否した。
「僕なんて本当なら卒業なんてできないのに、式なんて出られない」
T先生には私からも謝罪をし、式は辞退した。式の後、T先生が学習室に来てくださり、卒業証書を授与してくださった。
真顔の長男に笑顔はなかった。
でもこれも私の勝手な思いだったが、1枚だけでも写真を撮りたくて、一番お世話になった保健室の先生と一緒に写真を撮らせていただいた。
ふたりで車に乗り込み自宅に戻る。
長男はやはり疲れてしまったようで、すぐに眠ってしまった。
辛い思い出の多かった小学校から、楽しい日常を送るはずだった中学校に入学したのに、結局2/3以上を経験できなかった中学校生活。
友達もいないコースに変更してでも、卒業を目指すと言った長男。
神様、もしいらっしゃるならば、お願いですから私の長男が
高校の卒業式は、何のためらいもなく式場に入れますように。
高校の卒業式は、堂々と卒業証書をもらえますように。
そしてなにより、高校の卒業式は、友達と笑顔で参加できますように。
カーステレオの音を少し大きくしながら、私は声を出して泣いていた。
翌日
翌日、私も休みだったので、長男とふたりで中学校の持ち物を片付けた。
見たことのないものもたくさん出てきて「これなんだっけ?」「使ったことある??」「いやぁないね」など言いながら箱に移していく。
一度も開いたことのない教科書、1年の3学期で止まってしまったノート、
吹いたことのない縦笛、使ったことのない解剖道具・・・
でも、卒業式当日に感じていたような切なさはなかった。
長男がボソッと私に言った。
「高校・・・頑張るわ」
その顔は、昨日の真顔ではなく、晴れやかな柔らかい表情だった。
久々に教室に入る覚悟、2年2ヶ月分抜けている自分の学力。
どう考えても大変な闘いになる。
でもウチの長男は、親もビックリするほどのド根性で27kgダイエットを完遂したのだ。
大丈夫、きっとできる。私はそのためなら何でもする。
そう決心した。
―長男 2回目 完―
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