中学生になる君へ
3月は年度末。教員にとっては毎年やってくる、慌ただしい時期だ。
6年生の子が、最近ソワソワしている。障害のある子を受け持っているのだけれど、落ち着きがない。簡単なことで泣く。家でも不安な様子が増しているという。
もともと、中学生になるのを楽しみにしている子だった。
中学に行ったら、かっこいい制服を着る。新しい勉強をする。担任の先生はこんな人がいい。校外学習にも行きたい。そんな話をよく聞いていた。
その現実が目の前に迫ってきたことで、一時的にナーバスになっているのかもしれないね。同僚と、そんな話をした。
大人からすれば、小学生が中学生になるなんて何てことはない。みんなそのイベントを越えてきていて、「大丈夫だった」ことを知っている。
けれど、だからといってその子に「そんな不安にならなくても大丈夫だよ」と簡単に言うことはできない。
自分の小学生の経験を思い出してみると、小学生にとって中学生はとても大きく見えた。たった13かそこらの子どもだ。けれど制服を着ているだけで大人のように感じた。部活は朝7時から始まる。起きられるのかなと心配していた。
結局、経験したことのないことは不安だ。自分も不安だった。けれど、私は人生経験があるからとさも上から分かったかのように言ってくる大人や先生も大嫌いな、ひねくれた子どもだった。
さて、どうするか。
私はその子をただ見守ることにした。その子の不安も期待もその子だけのもので、とやかく介入できるものではないと思ったから。それが合っているのかは分からない。コツやテクニックはたくさんあるけれど、結局正しい正解なんてないと感じるのが、教員の世界だ。
春から新しいステージに進む人がいると思う。新しいことに挑戦する人も多いだろう。それで期待半分、不安になることもあるかもしれない。その不安は正常な反応だ。
その不安に対して自分みたいにただ見守ってほしい人もいるだろうし、話を聞いてほしい人もいる。大丈夫だった経験談を、たくさん話してほしい人もいるだろう。どうしてほしいかは、人それぞれだけど。
環境を変えること、挑戦することってすごくエネルギーが要ることだ。もしその渦中にいて不安に耐えられなさそうなときは、周りの人に話してほしいと思う。それを受け止める余裕が、周りの人にはきっとある。
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休み時間にみんなで遊んでいたある日。
その子はずっと「一緒に遊ぶのももうすぐ終わりだ」と言っていた。最近、その子は活動や授業に関してとにかく終わりの日を知りたがる。
一緒に遊んだ日にその子を探すと、ちょっと離れた小高い丘の上に座っていた。そこからは、遊んでいるみんながよく見える。
何を思っていたのだろう。それは分からないけれど、その穏やかな顔に成長を感じた。不安もあるけれど、確実に前に進んでいる。
春は、もうすぐだ。
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