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ひろさんは頑張らない

職場の先輩、「ひろさん」の話。

ひろさんは、あまりやる気がない。
なんと言うか、のほほーんとしていて、
焦っているのを見たことがない。

あるとき、ひろさんが担当している報告書類が
期限前日なのに手付かずになっていた。
いや、絶対2日じゃ終わらないよねコレ?

僕はひろさんに伝え、
なんでも手伝いますよ!と言った。
でも、ひろさんは慌てない。
「んー、まぁ、大丈夫だ」と言う。
何が大丈夫なんだ?( ̄▽ ̄;)

翌日。
ひろさんは、期限内に報告を終えた。
やればできる人だったのか(失礼な)
影で頑張るタイプなのかな?と感心した
…が、実際はそうではなかった。

先方から電話がかかって来た。
修正して欲しい箇所の指示だった。
しかも大量に。
あまりに的外れな数字だったらしく、
直し方のアドバイスまでされている。
どうやらひろさんは、
分からない箇所には適当な数字を埋めて、
とりあえずの状態で提出したらしい。
だめじゃん。

電話が終わり、ひろさんは悪びれずに言った。
「うん、大丈夫だった。」
なにがですかー!

もっと事前にやるべきだったと思います!
と、僕は言った。
が、ひろさんはこう言った。

「俺は、そうは思わないぞ?
 先方に言われた通り、期限までに提出した。
 書類を直すのは来週で良くなったし、
 直し方も教えてくれたからな。
 締切は守れたし、最終的に正しい報告になる。
 ひとりで焦って根詰めてやったとしても、
 先方が頑張ってくれて出来上がったとしても、
 成果は同じ。給料も同じだよ。
 仕事なんて、もっと気楽にやったらいい」

当時は、このセリフに腹が立っていた。
なんていい加減なんだ、と。

…だけど最近、このひろさんの考え方は
実は『本質』を抑えているような気がしている。

 頑張らなければいけない
 間違ってはいけない
 相手に迷惑をかけてはいけない
これは、自分が決めたルールじゃないか?
このルールには、大前提として
「人より優秀だと認められたい」
という想いがあるのだと気づいた。

 それは、『絶対』やらなければいけないの?

僕は、心の中の薫さんの問いかけに
反論ができなかった。
だって僕は、仕事を生きがいとは思っていない。
どうせやるならちゃんとやろう、とは思うが
ちゃんと、は「最低限」ではない。

しっかり、ちゃんと、は見栄であって、
余裕のある範囲で行うプラスアルファ。
僕の「最低限」は、お給料。
結局ひろさんと変わらないじゃないか。

僕は今でも、ひろさんの真似はしていない。
締切より早く書類を作っている。
事前に間違いがないか見直しもしている。
だけど、これを「当たり前」と思うのはやめた。
「俺、凄いじゃん!」と自分を褒めることにした。

そして、仕事が辛くて押し潰されそうな日が来たら
「最低限」でいいじゃん!と思うことにしよう。

そんな『御守り』を手に入れた日のお話でした。

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