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チャーシュー革命!人気ラーメン屋が出す、ピンク色のチャーシューの正体とは?

いまや国民食となっている、みんな大好き「ラーメン」。

ヴィーガンラーメン、コオロギラーメン、電気チャーシュー、疲労回復ラーメンなどなど、実は今のラーメンはここまで進化していた! 最先端のラーメンや食にまつわる、あらゆる現場を徹底取材! ラーメンから食の未来も見えてくる。

新刊のラーメン・グルメエッセイ『「至極」のラーメン科学』より、一部内容を公開します。

低温調理が起こしたチャーシュー革命

ラーメンに載っているチャーシューといえば、昔から茶色が当たり前だった。豚肉をしょう油と砂糖で甘辛く煮るか漬けるかするのだから、チャーシューの色は茶色が当然。
 
チャーシューは漢字で焼豚と書く。しかし日本のラーメンのチャーシューは焼かずに煮る。昔は中華料理のチャーシューと同じく、釜で吊るし焼きにしていたらしいが、今は煮豚をチャーシューと呼ぶ。だから日本のチャーシューは茶色だ。
 
ところがこの数年、多くの店、特にラーメンの年間ベストに選ばれるような店では、チャーシューはピンク色に変わった。このピンク色のチャーシュー、ものすごく軟らかくてハムっぽい香りがする。ふわふわで、とてもおいしい。これまでのチャーシューとは別次元だ。
 
肉が違う?
そうではなく、作り方が違うのだ。
 
ピンク色のチャーシューは、低温調理というやり方で作る。タンパク質が凝固する60度前後で長時間加熱すると、ピンク色のチャーシューができるのだ。
低温調理(真空調理ともいう)は1979年にフランスで発明された、まだ新しい技術だ。
90年代、ソースを泡にしたり液体窒素でアイスクリームを作ったり、見慣れないフランス料理が一気に登場した。分子料理という新しい料理のジャンルだ。調理をバラバラにして科学的に正しいかどうかを考え直し、料理の再構築を行う。
科学実験のような調理はマスコミや食通の受けも良く、分子料理の発信元となったスペインの『エル・ブジ』(現在、閉店)は世界一のレストランとして有名になった。
分子料理では肉は低温で調理する。たとえばステーキは鉄板やフライパンで焼くものだったが、分子料理ではステーキを煮る。
 
まず牛肉を真空パックにする。そのままお湯に入れる。煮るわけだ。真空パックにしないとお湯にうま味が流れ出すし、空気はお湯よりも熱の伝わり方が悪いので、空気を抜く=真空にしてしまう。お湯の温度は63〜68度。熱湯だが、ぐらぐら沸いてはいない。この温度がポイントだ。
タンパク質は63度から固まり始めて、68度から水分を分離、つまりうま味が肉の外に逃げ始める。
63〜68度で加熱すれば、肉は固くなりすぎずにうま味も逃さず、それでいて熱によって筋繊維はほぐれて軟らかくなり、細胞の中から出たうま味が筋繊維の間を満たしておいしくなる。肉のジューシーさが失われず、生肉のような赤みを残した肉に仕上がるのだ。
加熱が終わったら袋から出して表面を焼く。「糖とアミノ酸で焦げる=メラノイジンができる」のをメイラード反応と呼ぶ。パンの焼けた茶色やしょう油・味噌の茶色もメイラード反応だ。焦げが香気成分を生み出し、香ばしいおいしさになる。
これが究極のレアと呼ばれる、低温調理によるステーキの作り方だ。ピンク色のチャーシューは、豚肉を低温調理で処理する。


【サンプルページ】


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『「至極」のラーメンを科学する』
ページ数 200
判型 四六
定価 1,540円(税込)
ISBN:9784862556226
出版社 カンゼン
発売日 2021年12月10日

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