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最後は消費者金融|短編小説

 最近、友達がいなくなった。といっても、惜しい友達じゃない。いわゆる引き立て役? 暇潰しに遊んだことはあったけれど、泥棒の罪を擦り付けるのも、パシって何秒で帰って来るのか計る遊びにも飽きていたところだ。それに最近どんどん反応が薄くなってつまらなくなっていたから丁度良かった。また遊びたくなっても、次の「友達」を探せばいいし。
 そんなことよりも、聞いてほしい。好きな人が出来たのだ。本当にイケメンで、お金持ち。最近ブレイクした俳優さんとも友達なんだって。知り合いが誘ってくれたホームパーティーでたまたま出会って、それからずっと胸がドキドキしている。きっとあの人が、私の運命の人なのね。
 どうにか目に止められたくて、ちょっと無理をしてお金を作った。服や化粧品を買うためだ。私の好きな人は素敵な衣服を身に着けている。隣に立ったとき見劣りしないようにしないといけない。しかも好きな人はホームパーティーが好きみたいで、私もよく御呼ばれするのだ。同じように御呼ばれするのは芸能人だったり、何かしらの著名な人らしい。その中に混ざれるなんて素敵。でもそういう人は、毎回違うドレスやバックを身に着けている。負けないようにしないと。キラキラした世界に浸かるために、好きな人の隣に立つために。
 親に怒られた。財布からお金を抜いていたのがバレたのだ。たかが二十万ぐらい大目に見てほしい。家を出て行けと言われて流石に焦り、泣いて謝ったら許してもらえた。でも、これでお金が用立てられなくなった。どうしようと思っていたら、丁度いいチラシを見つけた。お金を簡単に貸してくれるんだって。やっぱり私は持っている人間なのだ。
 お金が足らない。でも好きな人と一緒にいたい。お金が、お金が、

 どうしてあの女が彼の隣に居るの?

 ある日のことだった。あの人のホームパーティーに呼ばれて、何とか工面したお金で新しいドレスを買って訪れて。
 そうして、彼の隣に立っていたのはいなくなったはずの「友達」だった。
 私よりも高いドレスを着て、大粒のジュエリーを身に着けて、恥ずかしそうにはにかみながら彼にエスコートされていた。
 ああ、あんなに見栄を張っちゃって。みっともないったら。
 帰って、そう、お金をまた借りて服を買ってそうしたらきっと彼は私を見てくれるきっとそうよあんな女に微笑みかけることもないしきっときっときっと、

 気が付いたら、また消費者金融の前に立っていた。
 そう、また、お金を借りなくちゃ。

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即興小説リメイク作品(お題:ラストは消費者金融 制限時間:15分)
リメイク前初出 2020/05/16
この作品は(pixiv/小説家になろう/アルファポリス/カクヨム)にも掲載しています。

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