マガジンのカバー画像

臨床診断学まとめ

35
診察、検査、鑑別など実臨床で用いる診療の医学
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

臨床診断学 呼吸器系診断

咳気道の異物や分泌物を喀出し気道を保護する反応 湿性咳嗽:痰を伴う咳 感性咳嗽:痰を伴わない咳 原因:感染性・・・急性ではこれが多い    薬剤性・・・ACE阻害薬    アレルギー    胃食道逆流    中枢気道病変・・・腫瘍、結核、異物    慢性外的刺激・・・タバコ、有機溶剤など 痰下気道粘膜の分泌物(ムチン)に細菌や埃、炎症やうっ血による滲出物などの異物を含むもの 通常は気管支粘膜の繊毛運動により大半が食道へ飲み込まれている 血痰:肺や気道内の

臨床診断学 腹痛

緊急に対処しないと危険なものもあるので鑑別は重要 腹痛の種類体性痛:腹膜炎、腹腔内出血 内臓痛:胃腸、胆嚢、胆管、尿管の攣縮 関連痛:放散痛 急性腹症 痛みの種類徐々に痛む:胃腸炎、急性虫垂炎 急に痛む:腸重積、尿管結石など 心窩部痛:胃炎、消化性潰瘍、胆石症 右上腹部痛:総胆管嚢腫、胆石症 右下腹部痛:急性虫垂炎 持続的痛み:内臓出血、腹膜刺激 間欠的痛み:腸管、尿管、胆管部 年齢別好発疾患乳幼児:腸重積、腸回転異常、腹膜炎 学童:急性虫垂炎、尿路

臨床診断学 全身倦怠感

全身倦怠感だるい、つかれやすい、やる気が出ない、食欲がない など、日常診療で非常に多い訴え 感染症、腫瘍、代謝疾患、アレルギーなど考えられる疾患が多彩なので鑑別が重要 問診 歩行不可 呼吸苦 意識、精神状態異常 だと神経疾患、代謝疾患、電解質異常が考えられ重篤化しやすい バイタルサイン:発熱・・・感染症、悪性腫瘍など         肥満・・・糖尿病         高血圧・・・心不全、脳血管障害、褐色細胞腫         低血圧・・・ショック、本態性低

臨床診断学 腰痛・関節痛

腰痛・関節痛は症状名であり、疾患名ではないことに注意 問診ポイント①急性、慢性 急性→骨折、ヘルニア 慢性→退行変性疾患 ②安静時痛 あり→感染症、骨転移 朝方疼痛→脊髄腫瘍 なし→椎体骨折、ヘルニア ③症状経過 進行性増悪→骨転移、感染症 ④膀胱直腸障害 あり→早期治療要する ⑤間欠性跛行 鑑別診断①運動器疾患 ②腹部内臓疾患:消化器、泌尿器、婦人科 ③神経内科疾患:神経変性、脱髄など ④血管性疾患:大動脈瘤など ⑤皮膚科疾患:帯状疱疹

臨床診断学 産婦人科診察

問診票主訴、既往歴などの通常内容に加え、 月経歴:最終月経など 性交渉の有無 妊娠分娩歴:妊娠回数、分娩回数、方法など 診察プライバシーの保護に留意する 1対1での診察は避ける 視診・触診:各部の状態、発達度を観察 バルトリン腺やスキーン腺の腫大の確認 外陰部の炎症、潰瘍、白斑など ①双手診:片手を腹壁に、もう片手を清潔な手袋を着けて示指挿入 まず膣壁の状態を調べる 次に子宮や付属器を調べていく 参考)正常子宮・・・前傾前屈、鶏卵大、弾性硬、表面平滑、

臨床診断学 一次救命処置

傷病者発生→安全確保 反応の有無確認 反応あれば応急手当 →反応なければ一次救命処置開始 119番通報とAED手配を周囲の人に頼む 呼吸の確認 あれば気道確保、救急隊を待つ →なければCPR→AED装着 CPR胸骨圧迫:人工呼吸=30:2で繰り返す 胸骨圧迫は深さ約5cmで垂直に100~120回/分 人工呼吸はフェイスシールドやポケットマスクを用いて1秒1~2回で行う バックバルブマスク バッグから空気を送ることで人工呼吸を行うことができるマスク ①上下

臨床診断学 胸部診察

腹部診察と異なり、視診→触診→打診→聴診 の順で行う 視診胸郭の形、呼吸運動、左右対称性観察 形状:樽状胸、漏斗胸、鳩胸など 呼吸数:正常なら12~18回/分 1回換気量500ml 呼吸リズム:チェーンストークス呼吸・・・心不全、尿毒症など       クスマウル呼吸・・・呼吸中枢の圧迫       バイオット呼吸・・・糖尿病性ケトアシドーシスなど 触診動き、痛みの確認 皮下気腫、心尖拍動 声色振盪:発声時の振動が肺を通って体表まで伝わる 亢進→肺炎、胸膜

臨床診断学 EBM

EBM化学的根拠に基づく医療のこと 種々の研究成果を反映する 研究の種類エビデンスの強い順(信頼性の高い順) ランダム化比較試験・・・無作為に分けた2グループの片方にのみ介入し、もう片方を対照群とする 非ランダム化比較試験 コホート研究・・・1集団を長期にわたり追跡観察することで疾病の発症、死亡に関する因子を明らかにする 症例対照研究・・・罹患群と非罹患群を比較 横断研究・・・ある一時点での研究 症例報告 動物実験 臨床試験臨床試験はⅠ相~Ⅳ相からなる

臨床診断学 医療面接

病歴聴取現病歴:主訴の同定・・・原則一つ 簡潔に書く     主訴に関する情報収集・・・発症日時と様式、を主とする 時系列を明確に、発症から現在までの変遷を聞き取る     鑑別のための情報収集 現病歴以外の病歴:アレルギー歴          既往歴          服薬歴          生活社会歴・・・飲酒歴、喫煙歴、性生活、違法薬物、職業歴、家族歴、など システムレビュー:医療機関ごとに作成されたリストに則って、症状の有無を確認していく 正確な診断

臨床診断学 採血

採血手順準採血法ガイドラインGP4-A3より引用 医師は採血の内容・必要性・起こりうる問題点等について可能な範囲で患者に説明し、少なくとも口頭で同意を得ることが望ましい。   医師は採血の指示を書面またはコンピューターを用いて行う。 採血者は採血管を準備し、ラベルが適切に貼付されていること、およびラベルの記載事項を確認する。(以下は全て採血者が行う。) 必要器具を準備する。 姓名を患者に名のってもらい確認をする。 事前に確認すべき事項について患者に

臨床診断学 心電図

侵襲はないが、電極のセッティングを間違えると誤診につながるので注意が必要 四肢に4ヶ所、胸部に4ヶ所の計10ヶ所にとりつけた電極から電位を読み取る 電極装着毛深い部分や外傷部分は避ける 四肢 胸部誘導 V1:第四肋間胸骨右縁 V2:第四肋間胸骨左縁 V3:2と4の中間 V4:第五肋間と左鎖骨中線の交点 V5:4と同じ高さの水平線と左前腋窩線の交点 V6:4と同じ高さの水平線と左中腋窩線の交点 肋間は胸骨角から同定するとよい(第二肋骨) 心電図の標準設定

臨床診断学 腹部診察

腹部診察の基本視診→聴診→打診→触診 の順 仰臥位で行う 患者から了承を得て行う 視診は膝を伸ばして行う 視診腹部の外形、膨隆 皮膚の性状:色、発疹、腫瘤など 表在静脈の拡張 蠕動運動 聴診打診、触診すると腸管が刺激されるので、その前に行うこと 膜型聴診器を用いる 音の種類 ①腸の蠕動音:通常1~2箇所で1~3分聴取する(OSCEでは最低10秒) ②振水音:心窩部から聴取する、腹部全体を揺らした際の水のはねる音      幽門狭窄や腸閉塞を示唆する

臨床診断学 精神症状

診断の基本患者の表出(表情、態度など)から患者の訴え(体験と苦悩)を聞き精神症状を捉える その後、その症状の発端を分析し診断に至る 異常の種類①意識の異常  意識障害:意識混濁、意識狭縮、意識変容  意識混濁:明識困難、傾眠、嗜眠、昏睡 の順に重症化  複雑な意識変容:もうろう状態・・・てんかんなどでみられる意識狭縮+意識混濁          せん妄・・・肝性脳症などでみられる意識混濁+幻覚、錯覚など ②自我の異常  自我とは、心の各要素(知覚、思考、感情な