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臨床診断学まとめ

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診察、検査、鑑別など実臨床で用いる診療の医学
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記事一覧

臨床診断学 診察 神経編

脳神経診察視野→片目を手で覆った状態で一点を見てもらい、その状態で視界の端の指がみえるかを確認する 眼球運動、眼振→眼前50cm程度に示指を立てて眼で追ってもらう 眼裂観察→眼瞼下垂、左右差など 遠くを見てもらいながら行う 瞳孔観察→縮瞳、散瞳、瞳孔不同の有無 瞳孔・対光反射→ペンライトで瞳孔に光をあてる 眼底→眼底鏡を用いる 右目は右目、左目は左目で観察する 顔面感覚→三枝領域を区別して領域ごとに左右差と領域差を確認する 顔面筋→額にしわ寄せしてもらい観察する 両目を強く

臨床診断学 診察 救急編

周囲の安全確認 感染対策に手袋装着(今だとマスクも必要か) 反応の確認→揺さぶったりはしない 周囲に協力者を呼び、医師、AEDなどの手配を依頼する 気道確保、呼吸・脈拍確認→10秒以内 下顎骨挙上する時軟部組織を圧迫しない 胸骨圧迫、人工呼吸→30:2 2人以上いれば分担可 AEDがきたら交代してもらう→胸骨圧迫が途絶えないように AED操作 ①電源入れる ②パッドを装着 ③解析、放電時は離れる ④すぐに圧迫再開 医師到着時は簡潔に状況を伝える 死線期呼吸 終末期・心

臨床診断学 診察 腹部編

ベルトなどは緩めてもらい、タオルをかけて準備する 視診仰臥位、膝を伸ばして行う 形状、腫瘤の有無 皮疹、着色斑、瘢痕、静脈怒張、皮膚線条の確認→痛みの部位は事前に聞いておく 聴診腸蠕動音の確認→聴診器は軽く温めておく 腹部血管確認→腹部大動脈、腎動脈、総腸骨動脈の順に確認 (振水音確認→イレウス時は聴取される) 打診中指の中節骨部をもう一方の手の中指でスナップを効かせて叩く 全体確認→手は温めておく  9領域に分けて打診する  痛みのある場所は最後にまわす 肝臓打

臨床診断学 嘔吐、胸焼け、吐血

嘔気、嘔吐嘔気:胃の内容物を吐き出したいという切迫した不快感 嘔吐:腹圧上昇により胃内容物を食道、口腔通して排出すること ※必ずしも嘔気先行するとは限らない 主な原因疾患 絞扼性イレウス、急性虫垂炎、急性胆管炎 急性冠症候群、大動脈解離 髄膜炎、クモ膜下出血、脳出血、小脳梗塞 糖尿病ケトアシドーシス、急性副腎不全 妊娠、腎盂腎炎 ジギタリス、急性緑内障 病態 主に四つの経路で嘔吐中枢が刺激されることで生じる 嘔吐中枢:延髄背側、第四脳室底付近の神経核ネットワーク ①

臨床診断学 診察 頭頚部編

頭皮観察→髪をかき分け全体を見る 頭蓋触診→痛みの有無を確認 眼瞼結膜・眼球結膜観察→上下を向いてもらう 眼球突出の観察→患者の左右から確認する 後方からでも可能 外耳道・鼓膜観察→耳介を後上方に引っ張り、耳鏡が揺れないように固定して行う(小指、人差し指などで) 上顎洞・前頭洞圧痛、叩打痛確認→眼球直下周辺・眉毛の付け根周辺を確認 口唇の観察→ライトをしっかりあてる 歯・歯肉・頬粘膜の観察→舌圧子用いる 舌の確認→舌を動かしてもらう 口腔底、舌下面の確認 硬口蓋の観察

臨床診断学 診察 全身状態・バイタルサイン編

診断手順体温測定→腋窩最深部を測定 使用後は消毒 呼吸確認→型、リズム、速さ、深さ、喘鳴の確認 呼吸数は30秒×2で算出 橈骨動脈触診→示指、中指、環指で行う 左右差、不整、緊張度の確認 脈拍数は15秒×4で算出 上肢血圧測定→上腕を心臓の高さにし、肘は曲げない マンシェットは上腕動脈の位置を確認して指1,2本分余裕をもってとりつける 触診で測定する場合 橈骨動脈に触れる→カフ圧70mmHg→10mmHgずつ上げる→脈触れなくなったらさらに20~30mmHg上げる→2mmH

臨床診断学 診察 胸部編

診察項目おおよそこの順番に行っていく 外頚静脈の診察→息をこらえると怒張 頚動脈聴診→下顎角直下2cm 頚動脈触診→示指、中指用いる 一側ずつ行う 聴診で雑音あれば行わない 胸骨角、剣状突起特定 皮膚所見確認 胸郭確認 鎖骨上窩、肋間の吸気時陥凹 胸壁運動左右差確認 心尖拍動診察→示指、中指、環指で行う 胸壁拍動診察→手掌近位部で行う 振戦確認→手掌遠位部で行う 肺動脈弁領域、大動脈弁領域、三尖弁領域、心尖部聴診→膜型で行う(心尖部のみベル型でも)

臨床診断学 黄疸

ビリルビンの血管外組織沈着による皮膚・粘膜の黄染 ビリルビン 非抱合型ビリルビン→間接ビリルビン 抱合型ビリルビン→直接ビリルビン 代謝 80%が老廃赤血球のヘムから、20%が骨髄の無効造血や肝内のヘムから生じる(間接ビリルビン) 肝臓に取り込まれたビリルビンはグルクロン酸抱合を受け直接ビリルビンとなり、水溶性となる 大半は回腸~結腸で還元されウロビリノーゲンとなる ウロビリノーゲンの80%はウロビリンとして便から排出される 残りは再吸収される 一部は肝臓に戻る(腸肝

臨床診断学 脱水・浮腫

体液量異常はナトリウムバランス異常に起因する 血清Na濃度異常は水バランス異常に起因する Naの調節再吸収促進 ①RAAS ②交感神経系 ③ADH 再吸収抑制 ④ANP(心房性ナトリウム利尿ホルモン) 脱水分類 等張性:Na濃度正常→細胞外液の喪失 低張性:低Na→細胞外液の喪失大きい 塩分欠乏型 強い血圧低下 高張性:高Na→細胞内液の喪失大きい 水分欠乏型 強い口渇感 等張性 低張性:嘔吐、低アルドステロン症など 高張性:水分の喪失による 不感蒸泄、尿崩症など

臨床診断学 けいれん発作

けいれん発作 脳の一部における以上律動の発作的反射の臨床症状 偽性けいれん てんかん発作に似るが心因性によるもの 首振り運動がよくみられる また咬舌、閉口、閉眼あんどがみられ、対光反射のある てんかんけいれんが自発的に再発する状態 興奮性伝達物質であるグルタミン酸と抑制性伝達物質であるGABAのバランスが崩れて生じる 失神との違い けいれんでは外傷、咬舌、尿失禁がみられる また発作中の記憶がある場合が多く、発作後は意識鮮明 全般性強直間代発作意識消失とともに 四肢ふく

臨床診断学 肥満・るい痩

原発性肥満体脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態 日本ではBMI25以上から肥満(欧米では30以上) 肥満原因の90%以上を占める 小児肥満からの移行が多い 家族性、遺伝性などがみられる 生活習慣、過食、運動不足などが誘因 肥満症:肥満が起因・関連する健康障害を合併する可能性があり医学的に減量を必要とする病態 診断基準 BMI25以上で①か②を満たす ①肥満に起因あるいは関連する11種の健康障害が1つ以上あるか ②健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある 二次性肥満内

臨床診断学 感覚障害

感覚伝導路表在感覚 温痛覚:外側脊髄視床路を伝導、髄節で交叉 原始的触覚:前脊髄視床路を伝導、髄節、延髄で交叉 深部感覚 関節位置覚・振動覚:後索を伝導、延髄で交叉 感覚障害パターン脳型 ①半身型 ②手口型:視床、脳幹の感覚路障害 ③交代性温痛覚障害:首を境目に障害が左右変わる 脊髄型 ①脊髄横断障害:障害レベルより下で障害発生 ②脊髄半側障害(ブラウンセカール型) ③宙づり型:両腕と首に障害 末梢神経型 ①手袋靴下型 ②神経根障害 ③単神経障害 ④サドル型:馬尾の傷

臨床診断学 出血傾向

血管損傷で血液が血管外に流出する状態が出血である その異常亢進を出血傾向という 血小板の役割vWFに反応して損傷した血管壁に粘着→形態変化→顆粒内容物放出→凝集 粘着:vWFを介して血小板が粘着 凝集:血小板どうしが集まる 一次止血:血小板から血栓形成 二次止血:凝固系活性化しフィブリン形成 内因系:Ⅻ因子活性化からスタート 外因系:損傷部位から組織因子の流入からスタート 線溶系:フィブリンはプラスミンにより分解される     線溶系が働かないと血流障害をきたす

臨床診断学 リンパ節腫脹・脾腫

リンパ節腫脹の診察部位 大きさ 硬さ 形 圧痛の有無 可動性の有無 限局性、多発性 を確認する 良性リンパ節腫脹生理的腫大 大豆程度の大きさ 柔らかく、扁平で可動性に富む 圧痛なし 炎症性腫大 急性発症 発熱、圧痛伴う 軟性、円形、可動性に富む 良性リンパ節腫脹各論伝染性単核球症 EBウイルス初感染による 発熱と圧痛を伴う頚部リンパ節腫脹が特徴 肝機能障害を高頻度に認める 壊死性リンパ節炎(菊池病) 細胞壊死が特徴 頸部リンパ節腫脹が多い 白血球減少 多くは