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臨床診断学 採血

採血手順

準採血法ガイドラインGP4-A3より引用

医師は採血の内容・必要性・起こりうる問題点等について可能な範囲で患者に説明し、少なくとも口頭で同意を得ることが望ましい。  
医師は採血の指示を書面またはコンピューターを用いて行う。
採血者は採血管を準備し、ラベルが適切に貼付されていること、およびラベルの記載事項を確認する。(以下は全て採血者が行う。)
必要器具を準備する。
姓名を患者に名のってもらい確認をする。
事前に確認すべき事項について患者に尋ねる。
手指を洗浄または消毒して使い捨て手袋を着用する。
使い捨ての注射器に注射針または翼状針を取り付ける。
駆血帯装着前に、目視および指で触れて穿刺すべき血管について見当をつける。
患者に採血に適した姿勢をとってもらう。
駆血帯を装着する。
患者に手を軽く握ってもらう。
指で触れて穿刺する血管を決定する。
穿刺部位の消毒を行い、消毒液が乾燥するまで待つ。
針を血管に対して30°以下程度の角度で刺入する。
血液が針に流入したことを確認し、針を血管内に確実に挿入した後、注射器を固定する。
必要量の血液を採取する。
駆血帯を解除する。  
穿刺部位に消毒綿またはガーゼを軽くあてた状態で針を抜き、圧迫する。
採血管に血液を分注する。
抗凝固剤または凝固促進剤入りの採血管は、確実に転倒混和する。
針と注射器を一体のまま、黄色のハザードマークの付いた鋭利器材用の感染性廃棄容器に廃棄する。
止血を確認できるまで5分間程度、穿刺部位を圧迫する。
採血後の採血管の取り扱いは手袋着用のままで行う。

長いので要約すると

駆血帯つける→消毒して穿刺→血液採取→駆血帯外してから針抜く

手順の解説

①採血の説明:現在のわが国の医療環境では、個々の採血に関して同意を書面で得ることはかなり困難であると考えられるが、少なくとも口頭で同意を得ておくことは必要

②採血管の準備:姓名・ID番号などラベルの記載内容を検査依頼書と照合し確認する

③患者の確認:採血者は、採血前に患者自身に姓名を述べてもらう

④必要事項の確認:採血者は少なくとも以下の項目について採血前に患者に確認する

 過敏症・アレルギーの有無(消毒薬、ラテックスなど)

 血管迷走神経反応(VVR)の既往

 採血を希望しない部位

⑤手袋の装着:採血者は患者ごとに、手袋装着に先立って流水と石鹸による手洗いまたはアルコール擦式手指消毒薬による手指消毒を行う

採血者は両手に手袋を装着し、患者毎に交換する これは採血者の針刺し等の血液曝露による患者‐採血者間での感染の可能性、および採血者の手を介する患者‐患者間での交差感染の可能性を低減することを目的としている

       採血者のサイズに合ったものを選んで使用する

⑥注射器と針の接続:針の切れ込みと注射器の目盛りがともに上向きになるように両者をしっかりと接続する

針のキャップを緩めておく(外さない)この際、キャップを引っ張ると反動で指に針を突き刺す危険があるため、引っ張らずに少しずつ回して緩める

接続したものは机に置いて良いが、接続前のものを机に置いたら即「不潔」扱いとなるため、廃棄する

⑦穿刺血管の選択:駆血帯装着前に、目視および指で触れて穿刺すべき血管についておおよその見当をつける

       注意点)両肘窩部に同等の血管がある場合は、神経損傷などの可能性を考えて利き腕でない腕からの採血が好ましい

特に正中神経の損傷では、感覚障害に加えて運動障害を生じるなど重症となる可能性があり、注意を要する

深部にある血管を穿刺する場合は神経損傷を起こす危険性が高まると考えられるため、無理せず他の血管を選択することが望ましい

肘窩部の尺側の付近には上腕動脈が走行しているため、穿刺の際には前もって指で触れて動脈の拍動を確認するなど、動脈の誤穿刺を防ぐ注意が必要である

両側の肘窩部に採血可能な血管がない場合には、前腕または手背の静脈を用いる

ただし手首の橈側付近の静脈は、近傍を橈骨神経の浅枝が走行しているため、避ける

⑧駆血帯の装着:穿刺部位の7~10cm程度中枢側に巻く

⑨血管の怒張:患者が採血される側の手を軽く握ることにより、血管の怒張が促進される効果がある

握った手は、採血管への血液の流入に問題がなければゆっくりと開いてもよい

何度も手を握ったり開いたりを繰り返す動作(パンピング)は、カリウム値に影響を与える可能性があるため、カリウムの測定時には避ける

⑩穿刺部位の消毒: 約80%のエタノールまたは約70%のイソプロピルアルコールを含ませた綿を用いて消毒する

穿刺を行う部位の汚れが強い場合には、新しい消毒綿を用いて消毒を繰り返す

消毒液が十分な消毒効果を発揮するためには一定の作用時間が必要なため、消毒液が自然乾燥するまで待つようにする

乾燥が不十分であった場合、穿刺時の痛みが増す、検体の溶血を生じるなどの危険がある

穿刺直前に採血者の指などで穿刺部位に触れた場合は再度消毒を行う

⑪採血針の刺入:深部の血管以外は通常20°以下の角度で十分穿刺可能である

⑫血液流入の確認:針が血管に挿入されると、通常血液が注射器と針の接続部に流入するのが確認される

この時点では針の先端のみが血管内に入っている状態であるが、針の角度を皮膚とほぼ平行にして、さらに2-3mm進めると針が十分に血管内に挿入されて安定する

⑬駆血帯の解除:駆血帯の解除は、針を抜去する前に行う

駆血帯を装着したまま針を抜去すると、穿刺部からの出血や皮下血腫を生じるリスクが高まる

(実際、加圧したまま抜去するとその圧で血が噴き出るので非常に危険)

⑭針の抜去:針の抜去は、駆血帯を外した後に行う

消毒綿またはガーゼで軽く押さえながら針を抜去する

 抜去後に針のリキャップは絶対に行ってはならない

⑮血液の分注:血液の分注時には、針刺しが生じる危険が大きいため、針を外すための専用の安全器具を用いて注射器から針を外した後、血液分注用安全器材を接続し、採血管の栓に刺入して、陰圧により血液を注入する

(内筒を押して血液を注入してはならない)

⑯採血管の転倒混和:採血管の転倒混和は血液の注入後、速やかに行う

血液が抗凝固剤・凝固促進剤等と完全に混和されるよう、5回以上確実に転倒混和する

⑰止血:5分間程度、穿刺部位を圧迫する

採血の合併症

①神経損傷

②血管迷走神経反応:筆者自身にも経験があるが、採血後急に吐き気とともにふらつきが起きる感じだった

③感染症

④皮下血腫、止血困難

⑤アレルギー・過敏症

⑥その他:過換気症候群、血栓、貧血など


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