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何かが「出来る」ようになるまでの道のり

TL;DR

・長男の勉強に付き合ってたら「出来る」ようになる過程が面白くて、仕事にも使えそうだと思った

・「出来る」までの道のりとして整理してみた

・「出来る」までの道のり
└ 1. ざっくり概観を掴む
└ 2. 動詞分解能を上げていく
└ 3. パターンを発見→適用→例外を発見→パターンを更新する
└ 4. 「出来ない」を「出来る」に出来るようになる

育児はインサイトの宝庫

子供の成長を見ていると、普段の仕事や物事への向き合い方についての学びがたくさんあります。

最近は、長男の「ひらがな」の読み書きの勉強を通じて、
何か新しいことが「出来る」ようになるって、勉強でもスポーツでも仕事でも同じ道のりを歩むんだなーと思い、
140文字にはどうしても収まらなかったので、思考の整理とメモがてらnoteでつらつら書き残しておこうと思います。

ダニング=クルーガー効果

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まず、何かが「出来る」ようになるまでの道のりを、「ダニング=クルーガー効果」をベースに、次の4つの段階に分けて考えてみます。

1. 完璧にマスター期
2. 何も出来ん期
3. 出来るようになってきたカモ期
4. チョットデキル期

1. 完璧にマスター期

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何か新しいことに直面したとき、まずは、大きなフレームワークでザックリと概観を捉えます。

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文字の習得で言うと、今学習しようとしている「ひらがな」の位置付けを確認して「出来る」までの見通しを立てます。

これだけ見ると「なるほどね、この五十音表ってやつを覚えればいいのね」と割と簡単そうに見えます。

仕事の文脈で考えると、ソフトウェア開発でいうと「要件定義・設計・開発・テスト・リリース」とか、コンサルティングでいうと「問題解決フレームワーク」や「ロジカルシンキング」のような入門書に必ず書いてあるような基本的なフレームワークと各ステップの概要みたいなものに対応します。

言われてることの意味は分かるし、分かりやすい例示もあると「ふむふむ」となるので、「出来る」気分になりやすく、「実際に出来ること」よりも「出来る気がすること」の方が過大になり、自信過剰になりがちな時期です。

この自信過剰期は、これはこれで「出来る」ようになるために必要なステップだと思います。

この時期を経ないと、
分からない → つまらない → 挫折
の道を辿り、「出来る」ようになる前に脱落してしまいます。

学習初期に「出来る」を擬似的にでも体験することは、次のステップに進むためには重要なんだと思います。

2. 何も出来ん期

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実際にやり始めると、どんどん「出来ない」ことに直面していきます。「具体的に出来ないこと」が山の様に積み上がっていって、ドンドン自信を喪失していきます。

この時期にやるべきことは、「動詞分解能を上げていく」ことだと考えます。もう少し具体的に表現すると、「大きな動詞」を「小さな動詞」に分解していくというプロセスです。

例えば、「文字を書く」を次のように分解してみます。

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文字の概念を理解するためには、普段話している「ことば」の「音」と、「文字」という「図形(形)」が対応していることを理解する必要があります。

長男の場合、当初、実はこのステップの理解が弱く、ひらがなの形と音の紐付きは覚えられていても、文字で構成された「ことば」になると「読めない」という時期がありました。

例えば、「うま」という文字を、「う・ま」と発音出来るけど、どういう意味かを尋ねると「???」となるというような現象です。

ひらがな一つ一つの形と音を対応させる前に、「うま」=🐴という、
言葉と文字の結びつきを理解する必要があったのだというのは大きな学びでした。

さて、「書く」も、もっと細かく分解することが出来ます。

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例えば、「書く」を上図のように分解して考えます。

長男のケースでは、「視る力」や「鉛筆を持つ力」といった微細運動に必要な筋肉の発達が不十分で、上手に書くことが出来ないという段階があり、一度「書く」ことから離れ、視点を留めるとか指先を使うトレーニングを遊びの中に取り入れたりしていました。

更に「直線を書く」も「縦線」「横線」「斜線」、「縦線」も「上から下」「下から上」ともっと小さな動詞に分解していくことが出来ます。

実際、同じ縦線でも「上から下」と「下から上」では手首や指先の使い方が異なるため、別物として捉えた方が正確に現状把握することが出来ました。

このように「小さな動詞」に分解していくことで、何が出来ないのか・何故出来ないのか・どう出来ないのかといった「出来ない」の解像度が上がり、具体的な対処の方法が見えてきます。

仕事の文脈で考えると、「設計する」とか「管理する」とか「調整する」とか「デザインする」とか「コーディングする」とか「検討する」とか、そういった「大きな動詞」に躓いて「出来ない」から抜け出せないというケースをよく見かけます。

3. 出来るようになってきたカモ期

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小さな動詞に細分化していって、「出来ない」の実体を掴み、修練を重ねていくと、徐々に「出来る」ようになっていきます。この段階で重要なことは、抽象化してパターンを発見することだと考えます。

そして、そのパターンを未知の事象に適用し、例外を発見し、パターンを更新し続けること。

例えば、ひらがなの例だと、

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[゛]が付くと、音が濁るというパターンを発見すると、「し」と「じ」を別々に覚えなくても、「し」に[゛]を付ければいいと学ぶことが出来ます。

そうすると、さ行だけでも覚えないといけない文字種が、
「さしすせそざじずぜぞ」の10文字 から 「さしすせそ」の5文字+[゛] と、半分近くに圧縮されます。

同時に、他のひらがなにもこのパターンを適用していくと、「や」や「ま」には付かないという例外も発見する事が出来ます。

同様に、五十音表の中にも次のようなパターンを発見することが出来ます。

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そして、この2つのパターンを組み合わせると、

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先ほどの、[゛]は全てのひらがなに付くわけではないという発見も、
[゛]が付くのは、五十音表を縦に見て、「か・さ・た・は」の列だけであるという、新たなパターンに昇華することが出来るようになります。

このように抽象化してパターンを掴むことで、覚えないといけないことが大幅に減り、未見の物事への予測や見立てが出来るようになり、少しずつ「出来る」という実感が掴めるようになっていきます。

仕事の文脈で考えると、例えばソフトウェア開発であれば、

・「Input→Process→Output」で構成されたコンポーネントと、
・そのコンポーネント間のインターフェース

という観点でパターン化すると、設計や実装の見通しがとてもクリアになってきます。

4. チョットデキル期

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こうして、1つのことが「ちゃんと出来る」ようになると、別のドメイン(領域)に挑戦し、新しい「出来ない」に直面するようになります。

文字を書くの例で言えば、次はカタカナへの挑戦です。すると、「あ」が「ア」という風に、せっかく覚えた「図形」では全く歯が立ちません。

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ところが、ひらがなで習得した「パターン」をうまく適用することで、急に視界がひらけ、見通しを立てることが出来るようになります。

このように、ドメインを越えて同じパターンを発見し適用出来るようになることで、新しい「出来ないこと」に対しても向き合いやすくなります。

例えば、仕事の文脈でも、

・「Input → Process → Output」で構成されたコンポーネントと、
・そのコンポーネント間のインターフェース

というパターンは、業務設計や組織設計にも適用することができ、例えば「コンポーネントの責務(組織設計で言えば部署のRoles & Responsibilities)を明確にすること」という原則はとても有益な指針になります。

まとめ

「出来ない」を「出来る」にするためのプロセスをまとめると、

1. ざっくり概観を捉える
2. 小さな動詞に分解していく
3. パターンを発見し適用し修正していく
4. パターンの引き出しを増やして「出来ない」を「出来る」にしていく

という風に整理することが出来るのではないかと、長男の成長を見ていて思いました。

こうして、「出来ない」を「出来る」に変えていく力を高めていくことで、未知へのチャレンジ意欲が高められ、「成長」していくのだと思います。

そして、長男は、「漢字」の大海原に旅立ち、また打ちのめさせられることでしょう。




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