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其は”仮面”と”旅”と”真摯”の詰まったフィルム -映画『シン・仮面ライダー』-

まずは終映時に綴った記事で既に幾つかこの映画への想いを文章化出来ておりまして
お先にそちらの記事も是非..!
未観の方へ向けた紹介記事でもあります▽

noteの年末年始お題企画の機会。
改めて、あの静かで優しい旅路の記憶を。

※以下、映画全編の物語内容に深く触れます



其は”仮面ライダー”に向き合う”真摯なる邦画”

私がこの映画に興味を持った予告編の空気感。
この”映画”を観たい、そう感じた想いは裏切られませんでした。
予告編は先述の記事でリンクしましたので、よりその空気感が強い”特報”時のものを今回は▽

最速上映で目にした実際の本編。
冒頭の力強いカーチェイスから始まる構成に、個人的な好みの鷲掴まれと同時にこれは何より本気で”映画”を撮っていると感じたのを深く覚えています。

と申しますのも、このタイトルで最初に出た映像が、何も素材が無い状態でとりあえず何かと言われ庵野監督が撮った、旧作『仮面ライダー』のOPの完コピだったのを思い出し。
本編もそういうものであるなら私はきっと興味を持たなかったはずでした。
あの完コピOPから映画が始まる案もあったらしく、しかしそれを監督自身が却下したと聞きます。
その判断は、庵野秀明という人はシンシリーズの中でも取り分け自身が随一思い入れている仮面ライダーを原作として映画を撮る際に、そうしたパロディ的なものではなく真摯に”仮面ライダーをこの令和に観る映画として撮る”ことに向き合ったのだと、彼は所謂”オタク”でもあると同時にきちんとした表現者でもあったのだと、
私はそこにそうした深い感慨を持ったものでした。

タイトルイン後に続く本郷の独白。
改造後の彼の状態を「体の中から風の音が聴こえる」なんて表現するの、秀逸な小説の一節のようで物凄く好きで。。
あれ以降只々惹き込まれていく一方だったのでした。

小屋での緑川博士とルリ子さんの会話。
本郷にその"証"を巻きながらの端的なやりとりの中に、ルリ子さん的にはオシャレの一環でもある事が判り、そして赤いマフラーをシリアスな劇中に持ち込むギミックとして「こうした"ヒーロー"の感覚は父の影響なのだろうな」とも感じる会話を短く置く。
そうした端々の上手さも様々に散りばめられた映画でした。

本郷が自らを"仮面ライダー"と名乗る流れも見事でした。
彼は突如訪れた身体と状況の変貌に戸惑いながらも、進み続ける選択の理由付として彼自身の立ち位置を決め名を付けました。
それは、例えば世界の平和とか大事な人を護るとか、そうした大層な御題目をあの環境で決意するような事ではありません。
彼は只
”そう思うことにした”のです。

”正しい事”をしたはずなのに、”力”無きゆえに命を落とした彼の父。
経緯はどうあれ、今の彼には”力”がありました。
父の成せなかった、”力持ちて自身の正義を行える”道。
彼はその旅路を歩み始めました。

その力に 自らの成せてしまう暴力に
震えながら
それでも
歩み続けました。

彼は最後まで、メタ的な意味での”仮面ライダー”の代名詞である「変身」を口にする事はありませんでした。
そうした作風という訳ではなく、一文字やハチオーグは己が力を発現する儀式のように、誇るように、変身にそうした掛け声を伴いました。
それでも
本郷だけは。

同様に外せないはずの”変身ポーズ”も、あの映画の空気の中で、というよりも本郷の想いを考えるのならという処において、決して”そういうものだから”と安易にとらせてしまうような事はありませんでした。
それでもきっと皆が観たいもの/やはり監督としても魅せたいものでありましたでしょうから、変身後にバッタオーグの戦闘本能としての”構え”にそれを持ってきたという落とし所もまた見事なものでした。

この映画は
原典である”仮面ライダー”というものに真っ直ぐ向き合いながら
同時に『シン・仮面ライダー』という一個の映画として”本郷猛”と”一文字隼人”と”緑川ルリ子”の旅路を描き切った
強く哀しく そして とてもとても優しい
静かな邦画ロードムービーの傑作でありました。


昭和の原典の諸々を、令和の一個の映画に昇華するということ

公開後に一部で駆け巡った無責任な言説がありました。
”昭和の『仮面ライダー』を知らなければ楽しめない初心者お断り映画”。
そんな事は一切無く、沢山の新規客にも響き、原典を知りつつ再構築の手腕に唸る人達にも刺さる映画となっていました。

どうしても原典ファンの中には、「自分がこの元ネタを知っている」事だけで止まってしまい、それが別の映画で創作劇としてどう描かれているかに思慮が及ばない人も居るもので。
であるにも関わらず「知らない人には意味不明だと言ってやろう」とする悪ノリとそこに便乗する下世話な言動が生まれ、そうしたモノほど拡散され易い悪しき構造が、当時私もまだ居たTwitterという大衆SNSにはありました。

例えば政府の男と情報機関の男が本名を明かすシーンの意味も、一文字くんの反応であの映画単体として成り立ってるのが普通に伝わるはずでした。

「一人がいい」/「また一人か..」 の一文字くんがきっと心を通じ合えたと思えたはずの本郷とルリ子さんはもう居なくて
その状況下で二人とも”仮面”にプラーナとして遺っていた事を知って
また共に戦える事を促されて。
でもまだ政府の男達の事は、"だってお前ら名前すら言わないじゃん"て。

それが
教えてくれたんですもん。。

私も正直初回観賞時は立花と滝って名前にびっくりして、あんたらそうだったの..!(※立花/滝は旧作での協力者的立場の人達の名前)と驚かし感覚が最初に来ていて。
でも思い返すとその意味合いが視えて来て
2回目を観たドルビーシネマの臨場感で尚更
彼らが名前を教えてくれる事を一文字くんが順番にあの頷きで受けてる様子が物凄く印象的に映りまして。。
あれは、今作においてそういうシーンなのですよね。。。。

”02+01”が旧作でいう新1号/新2号的な見た目なのも、再現ネタというよりあの御話の流れで
「以前のようなギラギラした感じはもうしない」明るい色合いの仮面であることを、シン仮という映画の中でああした場面に持ってきた、という使い方の上手さに感じて。。
それは本当に、あの映画だけ観ていてもあんな風に心スッキリが視覚的にも印象付けられる新スーツだったと思うのです。

そこからのあの台詞とあの爽やかな楽曲の中で空撮される橋を軽快な排気音と共に駆けゆくシンサイクロン号。
ドルビーシネマだとあそこ本当に綺麗な、透き通るようなエンジン音と申しますか。。
02+01の仮面を被る一文字くんのシーンから一気に泣き始めてしまっていたのですが、エンドロール直前のあの辺りではその音響効果もありもう号泣になってしまい。。。。

仮面に宿る本郷の意志など終盤の展開は後から思えば成程、石森章太郎先生の萬画版の要素をより色濃く拾っていると気付くのですが
映画を観ていた時は只々この御話の終着点として、あれ程の旅路を経た一文字くんが、今度は希望と未来に満ちた世界へ”二人と共に”駆け抜けてゆく
それをあの美しい映像と爽やかな楽曲に乗せて締め括られて、万感の想いでスクリーンを見詰める以外の何が出来ようかという
ひたすらにそうした映画鑑賞体験の結実でありました。

この映画にはTVドラマ版と萬画版双方の『仮面ライダー』という”原作”が在ります。
原作モノであればむしろどれ程原作を大切に映画化出来るかは評価されるポイントのはずでありながら、
思慮浅き人程他人を名指しで嘲笑や”指摘”出来ると考え発言し拡散される
そうした汚泥のような構造はああしたSNSにどうしても存在しているものでした。

一本の映画として成立した上で、気付く人には”元ネタ”が沢山アレンジ投入されている事もまた楽しめる
というよりも原案である旧作をどう抽出し新構築するか、という結果でもあり、それは『シン・ウルトラマン』もそうだったのですが
シンウも元ネタが分からないと楽しめない!と一部の人の同様の物言いが転がる中
あちらも同様に大勢の一般の人も普通に観て好きになって下さっていたのを思い出します。

映画評そのものとこうした事は別の話のはずなのですが、なかなか難しいものです。
私は正直ウルトラマンと違い旧作仮面ライダーには然程思い入れがある訳でなく、ですが先述のように『シン・仮面ライダー』の予告で「”この映画”、私好きそう。。」で観に行った訳です。

結果本当に心スッキリで
大好きな映画のひとつになったのでした。


ドルビーシネマのすゝめ

前記事でも触れておりましたドルビーシネマというものを本作で初体験したのですが、
”劇場で映画を観る”という事の個人経験上最上級、本当に衝撃的だったんです。。
色んな好き映画をあの環境で体験したい。。

その機会を得られた事でも、『シン・仮面ライダー』は印象的な映画となりました。

私が行った丸の内ピカデリーさんは本作合わせでこのようにして下さっており🧣
(※創作のウチの子の記念撮影画像兼

丸ピカにはルリ子さん居るらしく、こうして あちこち赤いマフラー巻かれていたのでした(かわいい
EV前でウチの子も変身❢

”これが本当の黒です”を謳う尋常でない深みのある映像環境。
360度音響。
豪華座席。
映画館自体が映画観賞をひたすら突き詰めたとんでもないもので、が故にあちこちにある訳ではないのですが
訪問可能な方は是非一度この環境で。

ドルビーシネマとは▽

実は私も決してこの上映館が近くはなく、と申しますかかなり遠く迷ってたのですが、思い切って遠征した甲斐あって
”劇場でお金出して映画を観る”というのはここまでの体験あったら本当に有意義だな〜と感じたものでした。
(観賞料金以外にもお金落としたいので専用グッズ/ドリンクとか出してほしい。。
(足置き付きリクライニングシートの最前列あまりに快適過ぎて、見上げる形なれどあそこで観るなら折角ならと選択して大正解だったのでした

このスクリーン見上げ上等の勇者席で私の他はお一人だけだったのですが、そのお姉さんがぬい取り出して撮影始めたので二重に流石だ..!ってなってしまい
(流石にガン見はしなかったのですが、本郷ぬいと一文字ぬいのようでした。お姉さんラストで私以上に泣いてた。。

因みにこういう時話しかけるのも野暮かなぁと特に言葉は交わさず後からTwitter検索してみたのですが、そうしたぬい写真の投稿は無く。
検索避けされてるかも知れないですが、そもそも皆がTwitterしているとは限らずなんですよねと思ったのでした(私自身もうあの場には居ませんしね

🧣🧣

さて鑑賞後、新宿も近いのでバルト9のハチオーグの仮面まだあったら視たいと思ったのですが、ドルビーシネマ上映はある程度遅れて始まったものでその頃には既に展示終了してしまっておりまして。

初観時、私は最速上映で舞台挨拶中継付きを観ていたのですが

印字数の関係か"最速挨拶"という謎の単語が爆誕していた当時のチケット🏍🦗

西野七瀬さんの辿々しいコメントに、実は彼女の演技を観るのは初めてだったので少し不安にもなっていたのですが
それを引っ繰り返すヒロミ/ハチオーグの怪演、まーびっくりしました。。
ビジュアルだけでない配役に納得。
余裕時ルリルリからの”ルリ子”呼びの圧巻たらなかったです。

△「強烈な個性を放つ登場人物たちの関係性が描かれる 特別映像第3弾。【緑川ルリ子×ハチオーグ/ヒロミ編】です。 多くのファンを魅了する濃厚な人間ドラマにも 御期待ください。」
として公式投稿された編集映像です

乃木坂時代をそんなに存じ上げず、この映画からなぁさんに注目するようになりまして。。
CMにドラマにと今売れに売れてますよねM-1の敗者復活枠のMCまでびっくりです。
先日のポケモン記事でもなぁさんに触れておりますのでどさくさリンクなど▽

ドルビーシネマ絡みでゴジワン記事なども▽



終映の日に夜勤明けから

都合がつかないかと諦めかけていた終映日、やはりどうしても観納めしておきたく上映時間が朝一であった残存上映館を品川に見付け、仕事明けから足を伸ばして見届けても来たのでした。

△公式終映予告。”最期の台詞”で構成されているのがもう 本当に............................................…

通販で品切れていたデザインワークスを売店で見付け買う事も出来、入場特典も(シン仮は週替りでなく追加形式というびっくり形式の為)山盛り頂けまして。
劇場まで足を伸ばす事での物的な収穫でもありました。

そして映画本編
それなりに日が空いての反芻観賞でしたが、何だか今迄以上に惹き込まれてしまい。。
上映終了時には館内拍手が起きまして。
私もそこに乗せて拍手で終えられて。。

改めて本当に素敵な映画だったと
噛みしめたのでした。

やはり”仮面ライダー”である事で様々な立場の人の視点があること、庵野秀明という人は古来から攻撃したがる人達に付き纏われていること、映画として私は大好きな作りなのですがシンシリーズの他の派手さに比べ人を選びやすいこと、など世間評価的に難しい空気もどこかにあります。
配信が始まった今、もっと自由に多くの人に観て頂きたいのですが、現時点ではアマゾンプライムビデオ独占なんですよね..。
アマプラ出資の映画なら独占全然解るのですが、そうでないのにそういうのよくないと思います!となってしまう次第です。🙅‍♀
シンウもソフト発売に伴って他配信サイトでの配信も始まりましたので、早くシン仮面ライダーもそうなってほしいのですよね..。
特典満載のパッケージとして手に取りたい、というのも御座います。

何だかまだまだ語りたい事はあったのですが
2023年がそろそろ終わり”今年のベスト映画”のお題からズレてしまうので、投稿しておきます。

この
静かで強い旅路の物語に
改めて想いを馳せながら。

インフォメーション!(*˘︶˘*).。.:*

記事はここまでですが、
お気に召して頂けたならのおひねりを受ける為の帽子👒を用意致しました。
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(※続きの文字は御礼文面です

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