天国からのラブレター
翼ちゃん大丈夫よ。
ごめんなさいね。
辛い想いをさせて…
独りで心細いのにそばにいて力になってあげられていないことを悔しく辛く思っています。
でも貴方を愛しているわ。
貴方は『低能児』なんかじゃない。
もちろんヤクザの娘でもないわ。
大切な翼ちゃん
守っているからね。
小さい時から身も心も激しい激しい否定にさらされてきたね。
辛かったね今も辛いね。
美しくて聡明な翼ちゃん。
あっちゃんが今日言っていたじゃない。
『翼ちゃんは美しいから歩いているだけで街の春よ』って。
翼ちゃん嬉しかったね。
誉められたことが極端に少ない貴女の人生で数少ない嬉しかった言葉のひとつよね。
貴女は美しく愛らしい。
賢く優しい。
これ以上頑張り切れないほど努力している。
不適切なことを言ったりしたりする人達を私は許している訳ではないのよ。
その人達は時が来ればそれなりの報いは必ず受ける時が来るでしょう。
そしてそれを受ける時貴女にした不適切と思いやりの無さを思い知りその為なのだと解る時が来ればまだその人達は少しは救われても無自覚で無意識のままであるのならお母さんもずっとそれを見逃したままではいませんよ。
今でもそれを許して放置しているわけではないの。
貴女は守ってあげたい大切な子供です。
そして苦しみながらも貴女がかけがえがないと思って愛してやまない猫のまぁちゃんを私も貴女以上に慈しみ心配し愛していますよ。
だって翼ちゃんにとっては子供なんですもの。
それなら私にとっては孫になるわよね。
孫は子供以上とよく言うじゃない?
だから心配しないで。
まぁちゃんを守ってあげますよ!
まぁちゃんが心身共に健やかに幸せに暮らせるようその幸せで平和な楽しい余生を貴女が守れるようそれは貴女の希望ですもの。
私の希望でもあるわ。
だから大丈夫。
貴女のこともまぁちゃんのことも愛しているから大丈夫。
貴女は生まれてきてよかったの。
生まれてこなけりゃよかったなんてことはないのよ。
脳ミソが腐ってなどいなければ白痴でもない。
猿のように醜いだなんて苦しかったね!
どこもかしこも否定されて息も出来ない思いで大人になって寂しい少女のまま年齢だけ重ねて…寂しかったね。
あつこさんにあんな風に言われて本当は嬉しかったのにかえって誉められ慣れていない貴女は咄嗟に上手く笑顔が作れなかったわね。
身近な人から激し過ぎる否定と暴力しか小さい頃から与えられなかったから転々として安らげなかったね。
お陰で居場所も希薄だったね。
私も寂しかった、
私もさ迷っていた。
私の愛した人はあのおじさんが言ったような私に『子供が出来たからゴミのように棄てたヤクザの男』などではなく……本当の本当の恋だったの。
真実の恋よ。
誰にも解らないと思うわ。
心から愛した人との間に貴女を身ごもったのよ。
だから私は貴女を決して堕ろさなかった。
家に帰った時、貴女がお腹にいると解ってみんなに責められたわ。
私はとうとう父親が誰なのか言わなかった。
だからいろんな憶測がいまだにされている。
でもね翼ちゃんには信じて欲しいの。
貴女は愛した人との間に出来た大切な命。
私は貴女を産むことを選んだの。
私は堕胎しなかった。
そう出来たけどそうしなかった。
命を落としても貴女を産んだことを私は誇りに思っているわ。
翼ちゃんにとっては私は助けてくれない顔も解らない悪い噂しか残っていない産んだだけの母親かもしれない。
でも翼ちゃんを愛しているだけで私はそこに咲く花のようにいつも貴女の傍にいます。
空のように、月のように、貴女を潤す水のように、貴女の渇きに、貴女の苦しみに、貴女の喜びに、貴女の愛に、貴女の罪にすらも…私はいつも共にいます。
傍にいます。
愛しているし大切だけど苦し過ぎます。
貴女をなかなか助けてあげられなくて…。
でもどうか安心して欲しい。
難しいけれどどうか解って欲しい。
貴女と貴女の愛するまぁちゃんを私は心から愛して守ってあげたい大切な子供達と思っています。
まぁちゃんも貴女と同じこの世で無二の大切な命。
私は母親としてまぁちゃんもまた心配しています。
だけど大丈夫。
貴女が大切でならないまぁちゃんだもの。
時に独りで生きるのすら精一杯でまぁちゃんのことを背負って生きるのが苦しくてならない時があるわね。
でもそれ以上に貴女はやっぱりまぁちゃんを心配しまぁちゃんの幸せを祈り…
愛してやまないの。
貴女は愛することを止めることが出来ない女性だから…。
まぁちゃんは貴女の中の輝き富む愛そのもの…
翼ちゃん
私は薔薇です。
貴女のそばに咲いているはず。
貴女は知らずに選ぶはず。
貴女は知らずにすれ違うはず。
貴女は知らずにまた出逢うはず。
貴女を愛しているこの私に。
貴女のことも貴女が愛するまぁちゃんのこともきっときっと守ってあげるわ。
だからどうか安心して瞼を閉じて優しい夢を見て欲しい。
きっと素晴らしい朝が待っていてまぁちゃんと共にそれを喜んで迎えられるでしょう。
私も貴女と同じ孤独な少女で孤独な女性だった。
自分が何者かも解らなくて日本中影のように彷徨(さまよ)っていた。
でも今は影じゃない。
貴女の中で光として生きている。
愛して守り慈しみそれを努める女神のように貴女の中を照らし続けるわ。
まぁちゃんと貴女を守り続けるわ。
私の中のサンクチュアリは貴女の中のサンクチュアリときっと同じ孤独を味わってはきたけれど…
同じ国、同じ方角、同じ名前、同じ場所にきっとある。
たとえ解らなくても私は貴女達を守っているわ。
そして貴女はいつか本当に安心に満ちて微笑みの意味を知ることが出来る。
不安は起こらない。
起こさせない。
翼ちゃんにとっては私は何かしら?
私は薔薇です。
貴女の傍にずっと咲いています。
(2016年作・私の誕生と共に亡くなった見知らぬ母を想って…)
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