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【岩手県岩泉町】名水の故郷の鍾乳洞「龍泉洞」

 岩手県岩泉いわいずみ町は、岩手県の中部にある太平洋に面した町だ。
 北東北に住んでいる人なら、岩泉ヨーグルトでその名前を知っていると思う。大谷翔平が絶賛した影響もあってか最近はコストコでも売られているという話も聞くが、残念ながらコストコは北東北に店舗がないので確認できなかった。

道の駅いわいずみにて販売されているジェラート。
ピスタチオ味と岩泉ヨーグルト味のダブルを頼んだが
特に岩泉ヨーグルト味が
濃厚かつすっきりとした味わいで非常に美味しい。
道の駅いわいずみを訪れた際はぜひ食べてほしい

 さて、この町には日本三大鍾乳洞の1つに数えられる龍泉洞りゅうせんどうが存在する。
 数多くの地底湖を有するこの洞窟は名水でも知られ、岩手県内の各地では龍泉洞の水や龍泉洞の水を使用したコーヒーなどが売られているので、実際に訪れたことはなくても名前は知っているという方も多いだろう。

 龍泉洞があるのは岩泉町の郊外の山の中。盛岡市から来る場合は車で2時間ほどかかる。
 龍泉洞周辺には売店などが整備されているほか、近くには龍泉洞温泉ホテルもありそれなりに開けている印象だ。近くにコンビニなどはないが売店で蕎麦などを食べることもできる。

龍泉洞の前を流れる渓流。
この日は雨が降った後ということもあり水量は多いようだった
綺麗な水に恵まれた岩泉はヨーグルトだけでなく
葉わさびも特産品だ。
この時期はまだ春先であり生えてる姿は見かけなかったが
売店や道の駅などでは葉わさびの加工品が
土産物として多数売られていた
龍泉洞の駐車場から真向かいにある龍泉洞わっか。
岩泉やその周辺の海産物や農作物を使った加工品や
地元の地酒などのお土産のほか、龍泉洞の水を使った
ビールを製造しているブルワリーでもある。
5月中頃以降は店内で食事もできるようだ
龍泉洞の前にある売店。
おにぎりや蕎麦などの食事が取れるほか
岩泉名物のわさびを使った土産物なども販売している
入場チケットは売店の真横にある
龍泉洞周辺の観光案内
1本の木から削り出したという巨大な龍のオブジェ。
龍泉洞はその名前や「龍が通ってできた」という伝承から
至る所に龍をモチーフにしたオブジェがある

 龍泉洞に入る際は入り口の向かいにある券売所でチケットを購入するのだが、このチケットは龍泉洞の向かいにある龍泉新洞科学館と共通になっている。
 龍泉新洞は後からその名の通り発見された鍾乳洞で、龍泉新洞科学館は科学館と名前がついているが建物ではなく鍾乳洞に直接説明の看板などが建てられておりそれを見る仕組みになっている。

 なお最初の方に断っておくが、龍泉洞は整備こそされているものの自然にできた鍾乳洞だ。
 奥には階段も多く、足腰が不自由な方にはお勧めしない。また、そこに住む生き物はもちろん洞窟そのものも保護対象だ。急な階段などが多いことを含め、小学校低学年程度以下の小さな子供連れもあまりお勧めできない
 龍泉新洞科学館の方も坂と階段は多いが比較的緩やかなため、こちらなら比較的子供でも見やすいと思う。それでもかなり暗く、好奇心などで解放区間の外に立ち入ってしまう可能性もあるため子供だけの立ち入りは厳禁だ。

龍泉洞駐車場の近くにあった日本鍾乳洞九選の看板。
日本全国に様々な鍾乳洞があるのがわかる
もちろん龍泉洞にくれば龍泉洞の水も飲み放題。
ここに限らず龍泉洞付近の集落の上水は
この水を利用しているとのことで羨ましい限りだ
龍泉洞はその洞窟そのもののみならず
生息しているコウモリも天然記念物に指定されている
こちらが龍泉洞入り口。
入り口の係員にチケットを見せて入場だ。
中にはトイレがないので入る前に済ませておこう

 この日は雨による増水の影響で、上から水が常時滴り落ちていたり地底湖の流れがいつもに増して激しかったりと普段とは違う表情を見せていた。

龍泉洞に入ってすぐの場所。
この辺りはまだ明るい
入ってすぐの場所にある地底湖、長命の淵。
見た目といい名前といい、ディズニーシーのアトラクションの
インディジョーンズアドベンチャーに登場する
「若さの泉」を思わせる。
因みに青いのは青い照明で照らされている為だ
この日の洞内温度は7.2℃。
この辺りは入り口近くなので外気温の影響が大きいが
龍泉洞の奥の気温は常に10℃前後に保たれている。
この時期は問題ないが夏場に来る場合は
羽織るものを持ってこよう
龍泉洞のあらましのパネル
そして龍泉洞のアイドル、コウモリたちのパネル。
早朝や夕方に来ると彼らが飛んでいる姿を
見かけることもあるらしい
奥に進むにつれてどんどん暗く、道も狭くなっていく。
この辺りから写真のピントを合わせるのが難しくなってきた
上を見上げると、自然の造形に思わず息を呑む
前述の通り龍泉洞の水は生活用水にもなっており
販売もされている立派な財産だ。
コインを含め異物を投げ入れることは絶対にやめよう
さらに奥に進む。
背が高い人は頭をぶつけないように注意だ
龍泉新洞の紹介パネル。
写真では補正しているとはいえ
パネルの明るさに合わせた周囲の暗さで
龍泉洞奥の暗さがよくわかると思う
この日は増水で濁っていたが
普段は深くまで見通せるほど透明な水をたたえている
龍宮の門。
様々な場所に名前がつけられているのも龍泉洞の特徴だ
さらに進んでいくと少し開けた場所に出る
洞穴ビーナスと名付けられれた場所。
残念ながらどの辺りがビーナスなのかは
全く検討がつかなかった
こちらは地蔵岩。
服を着せられていることもあってかこちらはわかりやすい
この辺りはまさに「ザ・鍾乳洞」といった
趣の場所が続いている。
小さい頃に読んだデルトラクエストに登場した
「人間を生きたまま飲み込む鍾乳洞」をなんとなく思い出して
壁から距離をとってしまう
青く照らされた月宮殿。
龍泉洞を代表する光景の1つだ
上にも洞穴のカーテンなるものが。
どこを切り取っても絵になるとはまさにこのこと
ここからは階段を下っていく
当然ながら、下に行くほど水は増えていく。
この辺りは地底湖の上にかかった橋の上を
歩いているような状態だ
どんどん暗くなっていく中を進んでいく
ハートマークが嵌め込まれた場所。
下は地底湖だ
最初に現れる第一地底湖。
水深35メートルというとだいたい10階建てのビルが
丸々沈んでいるような深さである
この日の地底湖は濁っていたが
そのために乱反射した輝きは独特の趣があった
まさしく異界としか言いようのない景色がひたすらに広がる
続けて第2地底湖。
深さは第一地底湖とほぼ同じ38メートル
勿論こちらも水中から青く照らされている
そして第3地底湖。
観光ルートはここまで。
深さはグッと深くなり98メートル。
2024年現在、岩手県で一番高い建物は盛岡駅に併設している
マリオスだが、この建物の高さは92メートルだ。
この地底湖の深さの方が遥かに上だ
第3地底湖横には浮き輪も。
使う機会はない…と信じたい

 さて、この先は折り返すルートと階段を登って三原峠に向かうルートとがある。
 この階段はかなり急かつ狭く天井が低い場所もあるので、子供を抱いて行くことはほぼ不可能に近い。万が一小さな子供が登りたがっても、途中で怖がったり疲れてしまったりで動けなくなった場合は詰む可能性がある。
 また、踏み面部分に生木が貼られており、湿度が高く床が濡れている時もこれが滑り止めになってくれているとはいえ、特に下りは歩いていてそれなりに恐怖を感じた。体力に自信があっても、ハイヒールなど歩きにくい靴で来ていた場合も避けた方がいいだろう。

展望台コース・折り返しコースの案内看板
展望台コースを登っている途中にある看板。
正直登りはそこまででもなかったが
下りがキツかったので参考までに
登っている途中、ワインの貯蔵庫があった。
気温が一定な鍾乳洞を利用したワイン貯蔵施設は多いが
龍泉洞もその例に漏れず、複数箇所のワイン貯蔵施設がある

 かつては看板にもある通り、龍泉洞のある山から名前を取った宇霊羅うれいらという名称で龍泉洞で熟成させた山ぶどうワインを製造・販売していた。
 しかし2018年に日本産ワインの基準厳格化に伴い、岩泉町内のうち宇霊羅山以外からとれた山ぶどうを使用していることを理由に名称をいわいずみ山ぶどうワインに変更した。現在もこちらの名称で様々な場所で販売されており、通販もあるので気になる方はこちらも是非飲んでみてほしい。

ひたすら登る。
途中天井が低くなっている場所には
クッションが取り付けられている
そして観光コースの最高地点、三原峠に到達。
湿度はなんと99%。
前述の通り下りは登りよりも急でなかなか怖い。
慎重に進もう
普段なら確かこの辺りから下を見下ろすことで
有名な写真の構図が撮れるのだが
今回は水が濁っていたこともあり上手く撮れず断念
そして元のコースに合流。
物を落としてしまわないかとかなり肝が冷えた
行きの時には気づかなかった守り獅子なる場所。
言われてみれば看板のかけられている場所が
中世ヨーロッパの紋章の獅子のように見えなくもないが
その見方で正しいかは不明
行きの時には通らなかったもう1つの分岐ルート
蝙蝠穴近くを通るルートを進んでいく
階段を降りた先の歩道がやけに狭い
降りてよくみると、どうやら本来の歩道が水没しており
その上に別の臨時で追加の板を置き
それを歩道にしている状態のようだ。
相当水量が多い時に来ていたらしい

 そして遂に蝙蝠穴に到着。
 冬場には多数のコウモリがここで冬眠しているらしいが、そろそろ冬眠から目覚めている頃だろう。
 コウモリの保護のためだろうが、写真は補正しているとはいえこの辺りは特に暗い。

蝙蝠穴。
茶色っぽく見えるのはコウモリの排泄物の跡らしい
蝙蝠穴の解説パネル

 写真にはできるだけ他の観光客が写らないようにしているが、この日は観光客も多い。
 奥を覗けば見られるかもしれないが相手は野生動物。下手なことをして起こすのも悪いしなと思った次の瞬間、顔のすぐ近くに何やら黒いビロードのようなものが。こ、これは……

 コウモリ!?

あまり近くで撮って起こしてしまうのも可哀想だと思い
遠くから撮った結果ブレブレになってしまった写真

 なんと通路近くどころか通路の真上、というかうっかり顔がぶつかりかけるような位置にコウモリがいた。しつこいようだがこの日は観光客も多い。よくこんな場所で眠っていたものだ。
 それにしてもこのコウモリ…ものすごく可愛い
「コウモリなんてどこが可愛いんだ?」と思われるかもしれないが、これは実物を見てほしいとしか言えない。コウモリを間近で見た経験など標本くらいで、あとは遠くで飛んでいるのを見かけた程度だったのだがこうして間近にみると想像していたよりもずっとフワッフワの生き物だ。ポケモンの例えになるが、ズバットよりもコロモリの方が遥かに実物のコウモリの印象に近い。
 それに小さくて柔らかな生き物が目の前で無防備に眠っている姿は、なんというか人間の心の脆弱性を突いてくる。理性というよりも、本能の部分に訴えかけてくるタイプの愛らしさだ。
 天然記念物として国をあげて保護してほしいレベルの可愛さだが、実際とっくの昔 (1938年)に指定されていた。納得である。

 思わず「かわいいねぇ〜」と奇声を発しそうになったのをギリギリで耐える。そんなことをしたらこんな真っ昼間に起こしてしまう。可哀想だ。
 とはいえ前述の通り、この日は観光客も多かった。そんな中でこんなにも無防備にコウモリが眠れている理由の1つは、観光客たちが適切な距離をとっているからだろう。いくら可愛いからと騒いだり触ったり、ましてや掴んだりしてしまうようならコウモリだってこんな場所では眠れない。
 観光地でのルールやマナーを1人1人が守ることは、こんな形でもご褒美として返って来るのだなと思った。


 そして続けて、龍泉洞の向かいにある龍泉新洞科学館に向かう。

龍泉新洞は駐車場の向かい。
緑色とクリーム色のカバーが連なった通路が目印だ
工藤市助というかつての岩泉町町長の銅像が。
かつて民営だった龍泉洞を町営にし
観光地としての開発を行った人物らしい
北流記という歌の歌碑もある。
作詞のアベ・イチローは岩泉町出身で
この歌詞も岩泉町をイメージして作った歌詞だという
入場場所に係員はおらず、まさかのセルフサービス方式だった
とはいえ監視カメラがついている。
勝手に入るのはやめよう
カバーの下の通路を通り、坂を下って行く
奥にあるのが龍泉新洞科学館。
ちなみに出口はさらに下の方にある
こちらは写真撮影NGとのことで中の写真はなし。
とはいえなかなか面白かったので
龍泉洞観光の際はこちらもぜひお忘れなく

 また、龍泉洞から更に車で20分ほどいくと同じく天然記念物に指定されている鍾乳洞安家洞あっかどうにいくことができる。
 安家洞の営業期間は4月中頃から11月いっぱいまででこの時はまだ入れなかったが、鍾乳洞好きにはこれからの時期こちらもおすすめだ。

龍泉洞
住所: 岩手県下閉伊郡岩泉町岩泉神成1-1
料金: 高校生以上 1100円
   小中学生 550円
開館時間: 10月~4月 8:30~17:00
     5月~9月 8:30~18:00
休館日:年中無休 (大雨による増水時など臨時休館あり)
アクセス:盛岡駅から自家用車で約2時間、1日4本程度バスもあり。宮古市からは自家用車で約1時間。

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