マガジンのカバー画像

掌編集

9
五分で読めるショートショート ※使用の際はSpoonにてお伝えください。またはXのフォローと使用目的をXのDMにてお伝えください。 著作権は作者本人にのみ帰属します。
運営しているクリエイター

#短編小説

逢魔刻の女

逢魔刻の女

鏡を覗く。そこに毛のない猿がいた。

ギョッとして身体が反射的に硬直する。心臓に痛みが走った。凍りつくとはこういう時をいうのだろう。猿は背中を丸めて真っ白な冷たい皮膚を晒していた。
そして窪んだ眼窩(がんか)から虚ろで大きな眼球がじっとこちらを捉えたまま、様子を伺っている。
それが自分だと気づくまでに時間はそれほど、かからなかった。和室に置かれた古い三面鏡に、映し出された自分を確認する。一瞬にして

もっとみる