水瀬神奈
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人生陽転リスタート方法の記録。
偉人の言葉たちを自分のフィルターを通して紹介して解釈しています。生き方が少しは楽になるといい、そんな願いと愛を込めて。
日常で感じたことから世界観へ深堀りした記述もろもろです。
同じ夢を繰り返し見る。古びた洋館の中に俺はいた。声だけが部屋に響く。いない。いない。いない。そう呟くのは人ではなく椅子だった。 椅子が四本足で歩きながら廃墟で帰らぬ主人を待ち続けていた。 1.プロローグ 廃墟が大好きだ。 あの退廃的な魅力が僕を捉えて離さない。 若者たちの間で流行している廃墟巡りツアーに参加したり。視聴率を上げる狙いでホラーテイストにした動画投稿。娯楽的な要素多めのそれらとは僕の廃墟好きの度合いは嗜好もジャンルも全く違う。 僕の趣味は芸術的な産物としての廃
僕の友人だった岸間裕也君という青年がいた。 彼は生前に日記を書いていて、僕にだけ見せてくれていた。 その一部を抜粋する。 以下日記より。
「お電話ありがとうございます。かぐら亭でございます。」 「すいません。二週間先の月初一日(げっしょいっぴ)に4名で予約を取りたいんですけど。」 「申し訳ございません。その日は予約でいっぱいでして。」 はぁ…しかたがない。顧客の第一希望はこれで消えたな。第二希望に電話をかけてみるか。 俺の名は匠純也(たくみじゅんや)。営業先のお客さんを接待するための飲食店に予約の電話を仕事の合間にかけているところだ。といってもこれも仕事のうちなんだがな。 営業成績はめちゃくちゃいいので、会社の
長年連れ添った相棒を亡くした。7年も一緒にいたのに。
1.乾いた音の正体 真夜中に電話が鳴った。友達がいない自分の電話の向こう側はだいたい把握している。我空だ。面倒だが出た。 「俺だよ。今何してんの。」 「何してんのじゃねーよ。何時だと思ってんだよ。」 半分眠りかけていたのもあってオレは少し語調を荒げた。その時何か引き摺る音に気がついた。 カラカラカラカラ 「我空?」 カラカラカラ…カラ… 「ああ、今1人やっつけてきたんだよ。」 金属バットを引き摺る音だと気がついた。 「相手生きてんだろうな?」 「さあ、どうかな。そんなの知
静寂に飢えた俺は街に飛び出した。自宅に篭りっきりで洗面台の水滴の音と冷蔵庫のモーターの音を聴きながら長編の小説なんかを書いていると発狂していつか虎になりそうな気がする。 腹の音が激しく生きている証明を訴えるので、丸一日何も食べていなかった俺はラーメン屋の暖簾(のれん)を押して中に入りテーブルについた。 そこで異様な光景を目にした。 男がひとり号泣しながら丼ぶりに喰らい付いている。 額(ひたい)には大粒の汗をかき、猛スピードですすっているのだ。涙なのか汗なのかどちらかわからない
「絶望缶」 ホットコーヒーを買おうと100円で買える自販機を探す。最近はコンビニの缶コーヒーも高いからな。そう思いながら男は寒空のもとを歩いて100円自販機を探していた。こんな時に限って見つからない。ふと見ると目の前に自販機が現れた。100円の表示の代わりに「絶望」の文字がならんでいる。いたずらなのか。支払いが「絶望」とはどういう意味だろうか。とりあえずいつもの習慣で硬貨を入れる投入口に100円玉を入れる。 チャリン チャリン 入れた硬貨が返却口から返却された。 チッ!
俺。名前は宇宙人(そらと) 年齢はわからない。 多分男である。 今はっきり認識できていることは、神殿の敷地内にいるってことと、多分この世ではなくて、あっちの世界にいるのだということだ。 どこもかしこも白く光り輝いていて、音もなく寒くもなく暑くもない。 安らかで最高に気分が良い。 上の方にある雲の階段へと、まっすぐに伸びている長蛇の列に自分が並んでいる、という事以外には何も不安はない。 どこから湧いてきたのかはわからないが、俺の前と後ろには延々と人が並んでいる。 目を凝らすと遠
玲於奈の毎朝は痛みで始まる。眠る時以外は全身、特に頭の中心部が切られるように痛む。1日に一回は号泣して、それが1時間に一回になり、今はもう10分ごとになって床には池が出来てしまった。
※中島義道先生の表現方法を模倣しております。
最近よく耳にする言葉があります。(安全基地)という言葉。