政党の綱領をAIで可視化してみた⑧各党比較「外交・安保編」
政党は有事にどう対応しようとしているのか
綱領は「政党の憲法」です。そこには、政党の歴史観、現状認識、解決すべき課題、自党の役割、基本政策などが盛り込まれます。綱領を通じ、思想信条と政策を共有する集団が政党なのです。
前回は、各党の自己認識を紹介しました。
今回は、各党の外交・安保へのスタンスを比較します。以下に比較表を置きます。筆者の責任で抜粋・分類しています。(ワードクラウドは出てきません)
策定された時期には幅があります。一番古いのが公明党で1998年10月24日に一部改正しています。次が社民党の2006年2月11-12日です。
自民党が2010年1月24日、日本共産党が2020年1月18日改定、立憲民主党と国民民主党が2020年9月15日、日本維新の会が2022年3月29日改正です。れいわは綱領に制定日の記述がないのですが、結党日が2019年4月1日なので、これよりは後ということになります。
「自衛隊」「日米同盟」「国連中心主義」
各党の外交・安保政策は、自衛隊、日米同盟、国連中心主義の3つの軸でわけられます。自衛隊から見ていきましょう。
自衛隊の「解消」を目指す共産と社民
日本共産党と社民党は、自衛隊は憲法違反の組織なので、「解消」するとしています。社民党は日本の「非武装」化を綱領に掲げています。
それ以外の党は、「自衛隊」という単語が綱領に出てきません。ただ、与党は当然としても、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党は「防衛(または専守防衛)」という言葉を使っているので、防衛力の保持は否定しておらず、自衛隊を前提とした綱領であることは明らかです。
れいわは、外交・安保への言及が一言もありません。そもそも綱領が400文字しかなく、どんな国家像を描いているのかが、まったく有権者に伝わりません。連載④「「街頭連呼型」の社民とれいわ」でも触れましたが、本気で政権を目指すなら、もっと考え方を説明してほしいです。
れいわは、選挙公約レベルでも、(2022年の参院選選挙公約にも、2021年の衆院選選挙公約にも)「自衛隊」というワードは出てきません。ただし、2021年の衆院選選挙公約に「専守防衛」という文言はあるので、自衛隊の存在を前提としていると想定されます。
日米同盟、基本か修正か破棄か
日米同盟(または日米安全保障条約)については、自民党が
と、日米安保を「基本」に自助努力も加えた防衛力整備を志向しています。
立憲民主党の綱領は注意深く読む必要があります。
「健全な日米同盟を軸に」という表現には、今が不健全であるという含意があります。立憲民主党の基本政策には
とあり、沖縄をはじめとした日本側負担の軽減のために、地位協定等を見直す姿勢を鮮明にしています。日米同盟の「修正派」といっていいでしょう。
日本共産党と社民党は、日米安保条約を破棄または転換し、日米友好条約(社民党は平和友好条約)を結ぶべきとの考えです。両党ともに、在日米軍の撤退を求めています。
これ以外の政党は日米同盟に関する直接の言及はありませんが、公明党は2022年参院選の公約では「日米同盟の抑止力・対処力の一層の向上を図ります」と明記する一方、沖縄の基地負担軽減や地位協定の改定も盛り込んでおり、修正派といっていいでしょう。
日本維新の会は綱領とは別に政策提言の中で、「日米同盟を基軸」としつつも、日米地位協定の抜本的な見直しや沖縄の基地負担軽減を訴えており、公明党に近いスタンスといえます。国民民主党も同様に2022年参院選公約の中で、日米同盟を基軸としつつ、地位協定の見直しと沖縄基地問題の解決を目指すとしています。
大まかにまとめると、自民党が基本派、公明党・立憲民主党・日本維新の会・国民民主党が修正派、日本共産党と社民党が破棄派です。
国連にどこまで触れるか
国連については、公明党、立憲民主党、日本共産党が綱領で取り上げています。
公明党は
と、日本主導での国連改革を訴えています。国際主義を全面に出す公明党の大きな特徴です。
立憲民主党も同様に、
と、国連での日本の役割を広げていきたい方針です。
日本共産党は
としています。
ただ、公約レベルを見ても、国連主導の秩序構築に反対している政党はありません。外交・安保では、自衛隊と日米安保をめぐる議論が焦点であることが、綱領からも確認されました。
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