政党の綱領をAIで可視化してみた④「街頭連呼型」の社民とれいわ
連載4回目は社民党とれいわ新選組の比較です。社民党には綱領がないので、「社会民主党宣言」をワードクラウド化して分析します。
両党の共通点は、街頭演説を聞いているような印象を受ける点です。
昭和の市民運動
「平和」「自由」「平等」「共生」「格差」という5ワードが前面にでています。
「平等」は社民党以外の政党の綱領ワードクラウドには出てきません。
「平和」も、社民党以外には共産党(しかも活字はとても小さい)だけですから、この二つが社民党を他党とわかつ重要ワードです。
立憲民主党や国民民主党の綱領について前回の連載で言及したのと同様に、社民党もやはり言葉の抽象度が高いです。しかも、失礼ながら少し古いイメージがあります。「平等」や「平和」の連呼で思い浮かべたのは、昭和の平和運動や市民運動のプラカードです。
もちろん、「平等」や「平和」は大事ですが、誰も反対しない概念を掲げても、有権者はその党を支持できるかどうか判断できません。とくに難しいのは、「平和」です。「祈る平和」で済んだ昭和とは、時代が違うからです。
日本を取り巻く安全保障環境は急速に悪化していますし、力による侵攻がいかに非人道的なものかは、ウクライナ戦争でいやというほど見せつけられています。このシビアな現実の中でどう「平和」を維持するつもりかを、有権者は明確にしてほしいのです。
もちろん、仔細を見れば、「平和」に関しては、
とありますし、「平等」については、
と明記しています。方向性ははっきりしているのです。
せっかく具体的な中身があるのですから、「自衛隊解消と非武装化」「安保条約転換」「男女クォーター制」というようなワードを宣言に頻出させたら、抽象的な印象は解消され、基本政策への理解が深まると思います。
気合のこもった檄文
れいわ新選組の綱領は、そもそも通常の綱領のお作法からは逸脱しています。たった400字程度なので全文を引用しますと
綱領は「政党の憲法」です。政党活動に枠をはめるという役割だけでなく、政権を取った場合にどのような国家を目指すのかを明示する役割もあるのです。
ましてれいわは新しい政党なのですから、どのような国家観や現状認識、基本理念、政策体系を持っているのかをより詳細に明記するべきだと思うのです。
<私たちの使命>からは、何も意味のあることは伝わってきません。控え目に言っても、これでは近代政党と言えません。
<私たちの当面の基本政策>では、「当面」がまず引っ掛かります。綱領に「当面」の施策はありえません。それは選挙公約です。
基本政策に平気で「当面」という言葉をつけること自体が、信頼に足る党であるという印象を毀損しています。
個別政策もどのような理念に基づいているのか不明です。有権者が知りたいことに答えていません。
れいわが目指すのが資本主義なのか社会主義なのか、君主制なのか共和政なのか。少子高齢化、経済活性化、財政問題、日米同盟や自衛隊、憲法改正へのスタンスはどうなのか。まったく伝わりません。
唯一伝わるとしたら、こうした基本スタンスを含まない文書を「綱領」として公表できる政党だという事実です。
原理原則などない、勢いだけの政党だと有権者に誤解されるのは得策ではありません。
連載の第0回にも書きましたが、綱領を軽視した政党の未来は暗いと筆者は考えています。れいわ新選組が政権を担えるようなもう一段の高みを目指すためには、綱領を飛躍的に充実させる必要があると考えます。
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