Taikai

旅する新米建築家/地形、気候、地質、水脈、建築、植生、農業、料理、民謡、…。あらゆる角…

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旅する新米建築家/地形、気候、地質、水脈、建築、植生、農業、料理、民謡、…。あらゆる角度から土地の記憶を呼び覚まし大地に根付いた豊かな暮らしを発掘していきます

マガジン

  • 住み続けられるまちをめざして

    「自然」と「人」の持続可能性を考える。資源の循環や自給自足、誰でも住み続けられる福祉のまち。自然とともに、老若男女問わず、共存できる社会を追い求めて、旅先で発見したアイデアを記録する

  • 地形散歩 気候風土を読みとく

    地形、地層、岩石、気候、植生、集落、食、、、。今に残る地球上の痕跡を辿り、風土を読み解く!

  • 1300の建築をめぐる旅

    1300の名建築をめぐる旅。この建築はぜひ見にいきたい!そのような建築リストをまとめ心地よい空間を体感しにいく! 魅力的な建築を記録していきます!

  • 近代遺産 保存か解体か

    次々に解体が進む近代建築。近代の遺産を未来へ継承すべきなのか。解体すべきなのか。現存する近代建築の今を特集しまとめていきます。

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変わらないものと変わるものを見つける旅

自己紹介ご覧いただきありがとうございます。 最初のブログということで簡単に自己紹介。 旅する建築家 静岡県出身の24歳。大学、大学院と建築学を専攻し、まちづくりにも参画。修了後、全国各地を旅をしながら、気候風土、地域文化を記録しながら建築家のもとで修行中。 現代の建築は、戦後復興の大量生産の社会では住宅も商品化され、土地の気候や文化から切り離された計画がなされてきた。しかし、従来の集落を観察すると自然に逆らうことなく自然体で大地から生えてきたような佇まいをみせる。近年の

    • なぜ若者は隠岐諸島に移住するのか 人々を惹き寄せる海士3本の矢

      本土からフェリーで3時間半。島根半島の北方50kmに位置する隠岐諸島。今、この島々に多くの若者が移住している。そこには何があり、なぜ若者が隠岐に移住するのか。島民、そして移住民との対話の中から紐解いていく。 隠岐郡海士町人口減少が深刻化していたこの町が、2010年を境に横ばいになった。人口減少社会において、減少するパイを取り合うことは好ましいこととはいえないが、大移住時代ののちに生き残る地域と廃村を迎える地域とが出てくることは確かだろう。その時代に必要とされる地域は保護され

      • 日本海の火山諸島 隠岐特有の地形地質と伝統農法

        地球生まれ、地球育ち。眼下に広がる紺碧の地球がそう思い出させてくれた。海抜257mの自然の展望台。全身の細胞が喜び震えた。 650万年前、日本海の海底から噴煙が上がった。隠岐諸島は火山活動により形成された諸島である。大地は動き、呼吸している。激しい鼓動は痕跡を残す。その痕跡を辿り自然と人との歩みを観察する。 隣り合ったふたつの火山隠岐諸島は大きく島前と島後、ふたつの火山でできている。似た環境、似た条件で、似たサイズの横並びの火山。されどふたつはまったく異なるカタチをし、そ

        • "月"と"舟" モノに地霊が宿るとき

          瀬戸内に浮かぶ一艘の小舟 その美しいカタチの背景には月の存在があった── 祖谷に別れを告げ、大歩危の駅を出発した。川幅は徐々に広がり険しい山を抜ける列車。車窓の風景を眺める。ふと、学生時代の記憶が蘇る。 まちづくりへの違和感私は、建築系の研究室でまちづくりに携わっていた。衰退する地方、増え続ける空き家。ソフトだけでなく、ハード面からの立て直しが求められていた。しかし、ある日ふと思った。まちづくりはまちを「つくる」こと。創造すること。畏敬の念が感じられないまったく烏滸がまし

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        • 住み続けられるまちをめざして
          3本
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          10本
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          2本

        記事

          地球の襞 大地に滴る雫のゆくえ

          鳥になった日の話幼い頃、車の助手席に乗るのが好きだった。目の前に映るカーナビは、自分が乗っている車を空から眺めていた。見えている風景とナビを重ね、脳内でもう1人の私は鳥になって空を飛んでいた。もう1人の私はあの森の向こうに見える景色も教えてくれた─── 地球の襞と手触り感建築家を夢みて、大学で建築学を学んだ。地域に根付く建築をつくるため気候風土に目を向けるようになった。谷間にできた日本の集落を山上から見下ろすと屋根はひとつの地形のようにでこぼこしていた。山の水は川を流れ、屋

          地球の襞 大地に滴る雫のゆくえ

          四国カルスト 天空の道をゆく

          天狗高原高知県と愛媛県の県境に位置する「四国カルスト」。山口県の「秋吉台」、福岡県の「平尾台」と並ぶ日本三大カルストの一つである。中でも最も標高が高く、山頂に広がる高原からの景色はまさに絶景。 細い山道を走る車。山村集落を抜け生い茂る木々の中を進む。まもなく頂上を迎えると徐々に木々は減り、道の幅員は広がる。高原に出た。緩やかな起伏のある山頂に金色に輝くススキが手を振って出迎えてくれる。 天空の道貫かれた一本の道は日本百名道のひとつ。爽快なドライブが楽しめるこの道は「天空の

          四国カルスト 天空の道をゆく

          日本百名山 雲かかる高峰と天使のハシゴ

          西日本第二の高峰 剣山を登る。 剣山の山頂はミヤマクマザサの群生地。過酷な環境で生き抜く植物が見せる美しい風景を紹介します。後半には周囲に山々と合わせ、祖谷の多様な植生を紹介します。 剣山奥祖谷の苔 奥祖谷にむけ、徐々に狭くなる道幅。路肩はびっしりと苔が生えている。深く暗い影の山道に、時より差し込む木漏れ日は、静かな緑色の苔を金色に輝かせる。 倒木を苔が纏う。その姿は、倒木の輪郭を残しながら、新しい地形へ。木が分解され土に還る神秘的の瞬間である。露出する岩もコンクリー

          日本百名山 雲かかる高峰と天使のハシゴ

          世界農業遺産 傾斜地の農耕と暮らし

          祖谷での2週間の滞在で、一番の衝撃はこの景色だった。一枚の写真で、人が生きるのに必要な資源の量が一瞬で把握できるからだ─── 人類の争いごとは、すべて「資源」にある自給自足する家族 広島県三原市に自給自足の暮らしで農場を営むがご家族がいるという。その方は、世の中における争いごとの原因は、ほぼすべて「資源」にあるという。食糧か、材料か、燃料か、自国で得られない希少な資源を巡り戦争をしている。このご家族が自給自足の暮らしをするのは資材争いから独立する狙いがあった。 必要な資

          世界農業遺産 傾斜地の農耕と暮らし

          香川うどん県の起源 動く大地と幻の大河

          香川県で本場の讃岐うどんを食べたことある人も少なくないだろう。 ツルッともっちりしたおうどんに、瀬戸内海産のいりこだし。香川の方々は、うどんに限らずいりこだしで出汁をとるらしい。香川では、セルフうどんのお店をよく見かける。ご自分でお好みに。セルフは、香川の県民性のなのか、あのガソリンスタンドのセルフも香川が発祥だという。 祖谷に向かう道中、数日香川県に滞在した。特に考えもせず、美味しいうどんのお店を巡った。祖谷で動く大地が見せる絶景を調べている中で、香川に流れていた幻の大

          香川うどん県の起源 動く大地と幻の大河

          2億年の神秘 大歩危峡はなぜ美しいのか

          「大歩危峡を流れる川はなぜエメラルドグリーンなのか」「大歩危峡の森はなぜ美しい紅葉が残るのか」。今回は、動く大地が生み出した神秘に迫ります! 大歩危・小歩危って知ってる?四国に流れる吉野川の中流に8kmほどの峡谷、大歩危峡・小歩危峡がある。千と千尋の神隠しに登場するハクの龍の姿のように、美しく深い谷間を流れている。ゴツゴツした岩肌は、「大股で歩いたら危ないよ」「小股で歩いても危ないよ」。そのような可愛らしい語源で大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)と呼ばれるようになったとい

          2億年の神秘 大歩危峡はなぜ美しいのか

          祖谷のかずら橋 特殊な地形が生んだ奇橋

          日本三大秘境 祖谷太平洋の湿った空気が四国山地にぶつかり、祖谷は深い霧に包まれる。2億年をかけ大地が生み出した峡谷には、エメラルドグリーンに輝く祖谷川が流れている。祖谷のかずら橋は祖谷峡を渡す蔓でできた橋で、ゆらゆらと揺れるその橋は日本三奇橋に数えられる。 秘境宿の女将の唄祖谷の秘境宿には、女将の唄声を聴きにご宿泊なされる方もいらっしゃる。女将おもてなしの唄声が、夜の囲炉裏の間に美しく響く。石臼でそばの実などをひく女性の労働唄『徳島県民謡 祖谷の粉ひき唄』でも、祖谷のかずら

          祖谷のかずら橋 特殊な地形が生んだ奇橋

          おてつたび 郷土料理から学ぶ祖谷の風土

          徳島県三好市祖谷おてつたび noteにおてつたびの記事をあげたことはまだないが、出逢いに感動し、ここは体験記を残したいと思った。とはいえ、noteは想定もしていないので、どこにも許可をとってない。おてつたび先や同じおてつびととの写真は控え、簡単ですがご紹介。 おてつたびって何?という方はこちらからどうぞ! 新祖谷温泉ホテルかずら橋 おてつたびで滞在した新祖谷温泉ホテルかずら橋。ケーブルカーで結ばれた天空露天風呂からは祖谷の山々が一望でき、これからの季節は紅葉を楽しむこ

          おてつたび 郷土料理から学ぶ祖谷の風土

          おてつたび×ADDressで持続可能な旅にでる

          noteをはじめて1週間がたつ。 5つ目の記事を上げた時点で10000ビューを超え、多くの方に読んでいただけていることにとても感謝している。大学院で建築を専攻していた私のマニアックな旅の視点と美しく感動した情景を記録しているので、ぜひ覗いてみてほしい。 わたしの旅前回の記事で、旅は四国編に突入した。 ここまで私の旅のスタイルそのものはお見せした事がない。途中からはじめたnoteだが、旅はまもなく1ヶ月。今日はその節目に旅暮らしの仕組みを紹介します! おてつたびやADDre

          おてつたび×ADDressで持続可能な旅にでる

          瀬戸内の「動く素材」が魅せる絶景 中編

          「絶景」という体験「絶景」という言葉は、「景色」、すなわち視覚情報による言葉。しかし、本当の絶景は視覚情報にとどまらない感動の体験である。生で見た風景とその写真。同じ感動を味わえるだろうか。絶景は、全身で体感する感動。『瀬戸内の「動く素材」が魅せる絶景』は、全身で地球を感じられる体験だった。 『三分一博志 瀬戸内の建築』を片手に中国地方を一周し、再び瀬戸内に帰ってきた。今回は「瀬戸内の「動く素材」が魅せる絶景 前編」の続編である。ぜひ前編からご覧ください。 『三分一博志

          瀬戸内の「動く素材」が魅せる絶景 中編

          泊まれる産業遺産 135年の記憶伝承

          山陰から山陽へ結ぶ伯備線。乗客のいない静かな車両が深い夜の森を駆け抜ける。 この日、中国地方を一周し、岡山県倉敷市に到着した。暖色の灯りに導かれ、風情あふれる街並みを歩く。少しすると道沿いに巨大な煉瓦の外壁が現れる。看板には"KURASHIKI•IVY SQUARE"の文字。 倉敷と紡績の歴史倉敷は繊維産業で発展したまち。中でも明治21年(1888年)倉敷紡績が創設以来、この紡績工場は倉敷と共にある。工場としてのお役目を終えた今も近代化産業遺産として当時の姿かたちを残して

          泊まれる産業遺産 135年の記憶伝承

          出雲街道の集落を水脈から読みとく

          過ごしやすい場所の条件暮らしやすい場所の条件は何でしょう。 駅が近い、スーパーが近い、地価が安い、などなど。動物としてのヒトの過ごしやすさは二の次になり、エアコンをガンガンかけ、扇風機をブンブン回し、寒い暑いと苦しんでいる。 それでも「暮らしやすさ」は切り離せないから、せめて息抜きに、「過ごしやすい」場所ってどこだろうって考えてみようと思う。 地形散歩今日のテーマは「水脈」 集落は過ごしやすい条件が整った場所を選び、棲みつく。より古くから残る集落や古代人の遺跡は過ごしやす

          出雲街道の集落を水脈から読みとく