【特別連載 第1回】小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)・感染対策・ワクチン篇
監 修:笠井正志(兵庫県立こども病院 感染症内科 部長)
著 者:伊藤健太(あいち小児保健医療総合センター 総合診療科 医長)
・本記事は書籍『小児感染症のトリセツREMAKE』(監修:笠井正志,著:伊藤健太)の補訂版として公開します。小児感染症全般についてさらに深く理解したい諸氏は,本編とあわせてご参照ください
・本補訂版は感染症のなかでもとりわけ流動性の高い内容を扱っています。今後の状況の変化やエビデンスの蓄積によって内容に変更が生じる可能性があり,それに伴い修正・加筆が行われる場合があります。
・本記事は「小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」の後篇です。前篇「診断・治療篇」はコチラです
・参考文献は文中にハイパーリンク(下線部分)にて示します
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【第1回 コロナはカゼか?~臨床的観点】
小児のCOVID-19の感染対策を考えるうえで,『カゼ』を一つの軸に考えたい。
毎年皆カゼに罹る。去年も罹った。一昨年も罹った。人によってはCOVID-19流行時にも罹った。そして今後も罹るだろう。そんなありふれた『カゼ』の感染対策はCOVID-19のそれと何が同じで,違うのか?
“コロナはカゼ”……この言葉一つで医療現場のみならず社会の分断が起きそうな昨今だが…私はCOVID-19のカゼっぽいところとカゼっぽくないところに目を向け,3つの観点に分けてみようと思う。
コロナはカゼか? 3つの観点
①臨床的観点
②感染対策的観点
③社会的観点
具体的にそれぞれのカゼっぽいところとカゼっぽくないところを見てみよう。
① 臨床的観点
カゼっぽいところ
小児では症状がある場合熱や咳などがメインで,基本的に自然治癒しているという経過から,他のカゼの原因であるライノウイルスや,RSウイルス,インフルエンザウイルスによる感染症と非常に似ている。
前篇でも示した通り,症状や経過からCOVID-19かどうかを見分けるのは非常に困難である。(インフルエンザがカゼか? という点はまた難しいのだが,鼻汁・鼻閉・咳嗽などの上気道症状を主とし,ウイルス感染症で,基本的に自然治癒するという点でカゼの一種と言える。そういえば,「カゼのトリセツ」とかいう本を執筆しているとか,していないとかいう噂を聞いたことがあるような,ないような……。いや,ないか……。えっあるの? マジ!?)
カゼっぽくないところ
小児の重症者は少ないという話は,前篇を読んでいただきたい。それでも,他の感染症と比べたときに,たとえば米国で,1年強の間に子どもが500人以上死ぬ感染症はない(インフルエンザ年間死亡者数37-188人,2009年のpdm2009株流行時で358人,COVID-19死亡者数561人)。
成人に比べると非常に少ないが,他の感染症と比べると死亡者は多いのである。またMIS-Cが何かよくわかっていないものの,このような病態は今までは記録されておらず,臨床的な特徴といってよい。ただのカゼとは言いにくいと思う。
ただし,日本において小児のCOVID-19は2022年1月時点では重症例や死亡例,またMIS-Cの報告は多いとは言えないため,日本の小児の目線で見たら,「カゼじゃん…」という意見もあるかもしれない……。
しかし,小児の感染者が増加している米国では2022年1月4日時点で18歳未満723人おり,おそらく日本でもめちゃくちゃ流行すれば,子どもの重症者は増える。
増えると大変。そうしないためには感染対策が重要。
では,成人に比べ軽症者が多い子どもたちの生活にどれくらい負担をかけられるか?(実際にどんだけ負担がかかってしまっているか?)という観点で落としどころを探る必要がある。
これ,本当に難しいと思うが,次回はとりあえず感染対策のカゼっぽいところとそうじゃないところを見てみたい。
次回は1月21日(金)に更新予定です
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著者紹介
監 修 笠井正志(かさい・まさし)
兵庫県立こども病院 感染症内科 部長
著 者 伊藤健太(いとう・けんた)
あいち小児保健医療総合センター 総合診療科 医長
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【 書誌情報 】
・監 修:笠井 正志 著 者:伊藤 健太
・定 価 :5,940円(5,400円+税)
・B6変判・552頁
・ISBN 978-4-307-17073-4
・発行日:2019年4年24日
・発行所:金原出版
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